アメリカ対オーストラリア。2-0で開催国が決勝トーナメント進出を決めた一戦の終盤、ピッチに倒れ込んだのは選手ではなく主審だった。シアトルの暑さの中、アディショナルタイムにフェリックス・ツバイヤー主審(ドイツ)が足を攣り、一時試合が止まった。第4の審判が”ピックルジュース”(けいれん対策ドリンク)を持って駆け寄る——。あまり知られていないが、「足が吊ることも許されない」とまで言われるほど、レフェリーの運動量は過酷だ。公表されているデータから、その実態をたどる。
30秒で要点
- 主審は1試合でおよそ13kmを走る。これはそのチームで最も走る選手とほぼ同じ距離
- スプリント(全力疾走)は前半だけで20〜25回、後半もほぼ同数。約2分に1回、ペナルティエリア間を走るイメージ
- レフェリーの90分は「15秒のスプリント+1分45秒の回復」の繰り返し
- 選手と違い交代もターンオーバー(休養目的の起用見送り)もない。フィジカルがタフでなければ務まらない
- ※主審の走行距離・スプリント回数は公式には試合ごとに公開されていない。本記事は審判経験者の証言や公表されている基準にもとづく
主審は1試合で「約13km」走る
選手の走行距離やスプリント回数は2015年ごろからデータとして公開されるようになったが、主審のデータは公式には試合ごとに公開されていない。それでも、審判を務める当事者の証言などから、その運動量の大きさは見えてくる。
主審に最も求められるのは、ゲームを読む力や判断力——ではなく、実は走る能力(フィジカル)だと言われる。目安は1試合あたり約13km。これは、ピッチ上で最も長い距離を走る選手とほぼ同じだ。常にボールと判定の最適な位置を取り続けるため、主審はゲーム中ずっと動き続けている。
比較のポイントを押さえる
記事で整理したポイントを踏まえて、比べやすい候補の一つを確認できます。
「15秒スプリント×1分45秒回復」の90分
元国際主審・西村雄一氏はインタビューで、レフェリーの時計(GPSセンサー)のデータをこう説明している。前半でスプリントは20〜25回、後半もほぼ同じ。45分で約22回とすると、おおよそ2分に1回、攻守の切り替わりに合わせてペナルティエリアから逆サイドのペナルティエリアまで走る計算になる。
そして、その全力疾走に必要なのが最大で約15秒。コーナーキックを守備側がクリアし、カウンターで一気に逆襲——という展開がだいたい15秒だという。つまりレフェリーの45分間は、「15秒のスプリント」と「1分45秒のリカバリー(小刻みなステップ・歩行・静止)」の組み合わせの継続。これが繰り返し求められる。判定に集中しながら、このインターバル走を90分続けるのだ。
W杯主審に課されるフィジカルテスト
W杯クラスのレフェリーに選ばれるには、選手顔負けの体力テストをパスしなければならない。公表されている内容の一例が以下だ。
| テスト項目 | 内容 |
|---|---|
| スプリント走 | 40m走を6秒以内で6本(間は90秒インターバルのみ) |
| インターバル走 | 10分休憩後、150mを30秒以内で走り→50mを35秒以内で歩く、を10本連続 |
※ロシアW杯(2018年)時に報じられた基準の一例。大会・年により細部は異なる場合があります。
150mを30秒で走り、ほとんど休まずに次の周回へ——。これを10本繰り返す持久力が、世界の舞台でホイッスルを吹く最低条件というわけだ。
なぜ主審は足を攣るのか
ここまでの数字を踏まえると、ツバイヤー主審の”けいれん”は決して不思議なことではない。交代がなく、ターンオーバーもない主審は、過密日程の中でも毎試合フルに走り切るしかない。そこに今回のような高温多湿のコンディションが重なれば、ベテランであっても脚は限界を迎える。今大会のアメリカ戦は、まさにその過酷さが可視化された一場面だった。
普段は批判の的になりがちなレフェリー。しかし「足が吊ることも許されない」と言われる仕事を、選手と同じだけ走りながらこなしている事実を知ると、ピッチの見え方は少し変わる。カウンターのとき主審がどこに立ち、どの位置までスプリントしているか——主審を”もう一人の主役”として追うと、サッカーはもっと面白くなる。
観戦中の「これ気になる」FAQ
Q1. 主審の走行距離は試合中に表示されないの?
選手のスタッツと違い、主審の走行距離やスプリント回数は公式には公開されていません。腕の時計型センサーで計測自体はされているとされますが、一般公開はされていないのが現状です。
Q2. 主審はどれくらいの年齢の人が多い?
トップレベルのプロフェッショナルレフェリーは40歳前後が中心です。これだけの運動量を40代でこなす点に、彼らのフィジカルの凄みがあります。
Q3. 足を攣ったら試合はどうなる?
主審が続行できない場合は、原則として第4の審判などが交代して試合を続けます。今回はけいれんの応急処置で一時中断のうえ、試合は再開されました。
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最終更新日: 2026年6月20日 | 編集方針
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| 日付 | 変更内容 |
|---|---|
| 2026年6月20日 | 初回公開 |
✅ ファクト再検証
最終検証日:2026年6月20日
SportsPulse 編集部が公開情報をもとに内容を確認しています。情報は確認時点のものです。最新情報は各公式サイトをご確認ください。
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