― イタリア・サッカーのトップリーグをゼロから知る ―
はじめに
「セリエA(Serie A)」という言葉を聞いたことはあっても、「結局どんなリーグなの?」と聞かれると、うまく答えられない方は意外と多いのではないでしょうか。セリエAは、イタリアのプロサッカーにおける最上位リーグで、イングランドのプレミアリーグ、スペインのラ・リーガ、ドイツのブンデスリーガ、フランスのリーグ・アンと並ぶ「ヨーロッパ5大リーグ」の一角として、世界中のサッカーファンから注目されています。
この記事では、サッカーに詳しくない方でも「セリエAって、こういうリーグなんだ」とイメージできるよう、リーグの歴史と仕組み、有名なクラブや伝統の一戦、そして現在進行中のシーズンの見どころまで、順を追ってやさしく解説します。
第1章 セリエAの歴史 ― 100年以上の伝統
1-1. 始まりは19世紀末
イタリアのサッカー全国選手権は、1898年5月8日にトリノのヴェロドローモ・ウンベルト1世(自転車競技場)で初めて開催されました。この記念すべき第1回大会を制したのは、現在もセリエAに所属する名門ジェノアCFCです。つまり、イタリアの全国リーグは120年以上もの歴史を持つ、世界でも屈指の伝統を誇る競技大会なのです。
1-2. 1929年、現在の「セリエA」が誕生
当初のイタリア選手権は、各地方ごとに予選を行う「地域別トーナメント」形式でした。これが1929-30シーズンに、全国のクラブが総当たりで戦う「セリエA」と2部リーグの「セリエB」に再編されます。この初代セリエAを制したのは、当時「アンブロジアーナ」の名で呼ばれていたインテルナツィオナーレ(現在のインテル・ミラノ)でした。なお、1929年以前の選手権で獲得された優勝もイタリアサッカー連盟(FIGC)によって正式なスクデット(優勝)として認定されています。
1-3. 「スクデット」という言葉の意味
セリエAの優勝のことを、イタリア語で「スクデット(scudetto)」と呼びます。直訳すると「小さな盾」という意味で、1924年以降、前年の優勝クラブは翌シーズンのユニフォーム胸に、イタリア国旗の三色(緑・白・赤)をあしらった盾型のワッペンを付けて戦う伝統があります。試合会場でユニフォームに盾のマークを見つけたら、そのチームが「前シーズンの王者」だと一目でわかるわけです。
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第2章 リーグの仕組み ― ルールは意外とシンプル
2-1. 20クラブによる総当たり戦
セリエAは、20クラブで構成されています。2024年2月には、18クラブに減らす案が議論されましたが、16クラブが反対に回り、20クラブ体制が維持されることが決まりました。各クラブはホーム(自分たちのスタジアム)とアウェー(相手のスタジアム)で2回ずつ、合計1シーズンに38試合を戦います。
2-2. ポイント制度と順位の決まり方
勝てば3ポイント、引き分けは1ポイント、負ければ0ポイント。これを38試合積み重ねた合計ポイントで順位が決まります。最もシンプルで、初めての方でもすぐに理解できる仕組みです。
2-3. 昇格と降格 ― 毎年入れ替わるメンバー
シーズン終了時に下位3クラブは2部リーグの「セリエB」に降格し、入れ替わりにセリエBの上位3クラブが昇格します。つまり、毎年少なくとも3つのクラブが入れ替わるため、顔ぶれは固定ではありません。「弱いチームが勝てない」で終わらず、成績が振るわなければ下のカテゴリーに落ちてしまう厳しさが、リーグ全体の競争力を高めています。
2-4. もう一つの大会「コッパ・イタリア」
セリエAと並行して、トーナメント方式で行われる国内カップ戦が「コッパ・イタリア(Coppa Italia)」です。この大会で優勝したクラブは、翌シーズンの欧州大会「UEFAヨーロッパリーグ」への出場権を得られます(セリエAで上位5位以内に入っている場合を除く)。リーグ戦で下位のクラブにも、ビッグクラブを破って欧州の舞台に進むチャンスが残されているのが、この大会の魅力です。
第3章 知っておきたい名門クラブ
3-1. ユヴェントス ― 圧倒的な優勝回数を誇る王者
北イタリア・トリノを本拠地とするユヴェントスは、セリエA最多となる36回の優勝回数を誇るクラブです(1929年のセリエA発足前の2回を含む)。白と黒の縦縞のユニフォームから「ビアンコネーリ(白黒の意)」の愛称で呼ばれます。2011-12から2019-20シーズンまで、なんと9年連続でスクデットを獲得するという前人未到の記録を打ち立てました。
3-2. インテル・ミラノ ― ミラノの国際派
正式名称は「FCインテルナツィオナーレ・ミラノ」。通算20回のスクデット獲得は、ユヴェントスに次ぐ歴代2位の記録です。青と黒のユニフォームから「ネラッズーリ(黒と青の意)」と呼ばれ、1908年にACミランから外国人選手受け入れを巡る対立で分裂して誕生したクラブです。
3-3. ACミラン ― ミラノのもう一つの雄
1899年創設の「アッソチャツィオーネ・カルチョ・ミラン」は、通算19回のスクデット獲得で歴代3位。赤と黒の縦縞から「ロッソネリ(赤と黒の意)」と呼ばれ、日本では本田圭佑選手が2014年から2017年まで所属していたことで知られています。かつてはミラノの労働者階級の支持を集めたクラブで、対するインテルは富裕層に支えられた歴史的背景がありました。
3-4. ナポリ ― 南イタリアの誇り
イタリア半島南部の港町ナポリを本拠地とするクラブで、2024-25シーズンに通算4回目のスクデットを獲得しました。1980年代にはディエゴ・マラドーナ(故人)が在籍し2度の優勝を経験したことで世界的に有名になりました。青を基調としたユニフォームから「アッズーリ(青の意)」の愛称でも呼ばれます。
3-5. ローマとラツィオ ― 首都の2クラブ
イタリアの首都ローマには、ASローマとSSラツィオという2つの名門が拠点を置いています。リーグ戦で両者が顔を合わせる「ローマ・ダービー(デルビー・デッラ・カピターレ)」は、イタリア国内でも屈指の熱気を誇る一戦として知られています。
第4章 名物ライバル対決 ― 「ダービー」を覚えよう
4-1. デルビー・デッラ・マドンニーナ(ミラノ・ダービー)
ACミラン対インテルの一戦は「デルビー・デッラ・マドンニーナ」と呼ばれます。名前の由来は、ミラノのドゥオーモ(大聖堂)の頂上に立つ黄金の聖母マリア像(マドンニーナ)から取られました。両クラブは共にサン・シーロ(ジュゼッペ・メアッツァ)スタジアムをホームとして共有しているため、「ホームもアウェーも同じ場所」という世界的にも珍しい試合形式になります。
4-2. デルビー・ディタリア(ユヴェントス vs インテル)
直訳すれば「イタリア・ダービー」。トリノのユヴェントスとミラノのインテルという、北イタリアの2大都市を代表するクラブによる対戦です。この名称は1967年にスポーツジャーナリストのジャンニ・ブレーラによって名付けられました。両クラブはイタリアで最も優勝回数の多い2チームであり、異なる都市のクラブ同士の対戦としては最も激しい緊張感を生む一戦とされています。
第5章 2025-26シーズンの見どころ
5-1. 現在の首位争い
現在進行中の2025-26シーズン(2026年4月時点)は、スクデットを巡る大混戦が続いています。首位に立つのはインテル・ミラノで、31試合で勝ち点72を積み上げています。2位にはACミランが勝ち点63で続き、1点差の大接戦。昨季王者のナポリも勝ち点62で3位につけています。シーズン終盤に向けて、どのチームが最後に笑うのか、目が離せない展開が続きます。
5-2. ユヴェントスの復活なるか
9連覇を達成した後は停滞気味だったユヴェントスですが、今季は31試合を終えて勝ち点57で5位。上位チームとはやや差が開いたものの、来季の欧州チャンピオンズリーグ出場権がかかる4位以内を目指して奮闘しています。
5-3. 昨季のドラマ ― ナポリ、3季ぶりの王座
2024-25シーズンは、アントニオ・コンテ監督率いるナポリが優勝しました。38試合で24勝10分4敗、勝ち点82を積み上げての栄冠でした。コンテ監督は就任1年目でチームを頂点に導き、ユヴェントス、インテル、ナポリの3クラブでスクデットを獲得した史上唯一の監督となりました。特筆すべきは、エースのクヴィチャ・クワラツヘリアを冬にパリ・サンジェルマンへ移籍で失いながらも、マンチェスター・ユナイテッドから加入したスコット・マクトミネイが12ゴール4アシストの活躍で新たな英雄となったことです。戦力補強の妙と指揮官の手腕が見事に噛み合った、教科書的な優勝ストーリーでした。
まとめ ― セリエAを楽しむために
セリエAは、120年を超える歴史の重みと、毎年のように生まれるドラマが同居する、魅力的なリーグです。圧倒的な実績を誇るユヴェントス、最多優勝争いを演じるインテルとACミラン、下克上を成し遂げたナポリ、そして首都ローマの2クラブ ― それぞれのクラブに長い物語があり、対戦カードひとつひとつにも「ダービー」としての歴史が息づいています。
戦術が重視され、守備の堅さに定評があることから、かつては「退屈」と揶揄された時代もありましたが、近年は攻撃的なスタイルを取り入れるクラブも増え、得点シーンが生まれやすい華やかなリーグへと進化しています。試合は日本時間の深夜から未明にかけて行われることが多いため、DAZNなどの配信サービスを活用して、まずは気になるクラブを1つ決めて追いかけてみるのがおすすめです。
「スクデット」「ダービー・デッラ・マドンニーナ」「デルビー・ディタリア」 ― この3つの言葉を覚えておけば、友人とサッカー談義をするときにも、一歩踏み込んだ会話ができるはずです。ぜひ、あなた自身のお気に入りのクラブを見つけて、セリエAの奥深い世界を楽しんでみてください。
参考文献
1. Wikipedia「Serie A」(https://en.wikipedia.org/wiki/Serie_A)
2. Wikipedia「List of Italian football champions」(https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Italian_football_champions)
3. FIFPlay「Serie A – Competition Format and Structure」(https://www.fifplay.com/serie-a-format/)
4. Football Italia「Official: Napoli crowned Serie A Champions for 2024-25」(https://football-italia.net/official-napoli-serie-a-champions-for-2024-25/)
5. CBS Sports「Napoli down Cagliari, win 2024-25 Serie A title」(https://www.cbssports.com/soccer/news/napoli-down-cagliari-win-2024-25-serie-a-title-antonio-conte-wins-the-scudetto-in-his-first-year-at-the-club/)
6. Wikipedia「Derby della Madonnina」(https://en.wikipedia.org/wiki/Derby_della_Madonnina)
7. Wikipedia「Derby d'Italia」(https://en.wikipedia.org/wiki/Derby_d%27Italia)
8. Wikipedia「2025–26 Serie A」(https://en.wikipedia.org/wiki/2025%E2%80%9326_Serie_A)
9. NBC Sports「Serie A 2025-26 season schedule, leading scorers, table」(https://www.nbcsports.com/soccer/news/serie-a-2025-26-season-schedule-leading-scorers-table-usmnt-players)
10. ESPN「Who has won Serie A? All-time Italian soccer champions list」(https://www.espn.com/soccer/story/_/id/46022568/who-won-serie-all-italian-soccer-champions-list)
