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すぽぱる入門「F1の”リザーブドライバー”って何?なぜ1戦だけ出られるの?」―代役の仕組みをやさしく

投稿日:2026年09月04日 約28分で読める 初心者向け
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  • F1の前提知識と戦術ポイントを切り分けて理解できます。
  • 執筆 SportsPulse編集部|最終更新 2026年9月4
執筆 SportsPulse編集部|最終更新 2026年9月4日|編集部レビュー済み編集方針 ›

最終更新日:2026年9月3日/裏取り日:2026年9月3日(SportsPulse 編集部)

この記事の結論を先に

(1)そもそも「リザーブドライバー」は、F1の競技規則に書かれている言葉ではありません。編集部がFIAの2026年F1スポーティング・レギュレーション(Section B)の原文を全文検索したところ、reserve という単語は一度も出てきませんでした。チームが自分たちで用意している「控えの人」の呼び名であって、公式の資格区分ではないのです。

(2)規則が定めているのは「ドライバーの交代」のほうです。1チームが1シーズンにレースで使えるドライバーは最大4人まで。交代は予選が始まるまでなら、審査委員(スチュワード)の同意を得て行えます。だから「金曜に人が入れ替わる」ことが実際に起こります。

(3)そして「代役でレースに出ること」と「金曜フリー走行に若手が乗ること」は、まったく別の制度です。前者は交代の規則、後者はルーキー起用義務。角田裕毅選手は前者に、岩佐歩夢選手は今週末その両方の主役になっています。

「あれ、いつもと違う人が乗ってる」

F1を見はじめた方が、いちばん面食らう瞬間のひとつだと思います。先週まで「レースに出るシートがない」と言われていた選手が、次の週末には普通にスターティンググリッドに並んでいる。しかもそれが1戦だけで、また元の人に戻ることもある。いったい何がどうなっているのか、と。

2026年のいまは、まさにその「代役」が続いている最中です。今週末の第13戦イタリアGP(9月4日〜6日・モンツァ)でも、レッドブル陣営は2戦続けて通常とは違う布陣で戦います。

この記事では、F1の代役の仕組みを、規則の原文にあたりながら順番にほどいていきます。むずかしい用語はできるだけ言い換えますので、F1を見はじめたばかりの方も、お子さんと一緒に観戦されている方も、そのまま読み進めていただけます。

まず驚いてほしいこと:規則に「リザーブドライバー」は登場しない

いきなり出鼻をくじくようですが、大事なところなので先に書きます。

F1のルールブックは大きく2つに分かれています。マシンの形や重さを決める「技術規則(テクニカル・レギュレーション)」と、週末の進め方や罰則を決める「競技規則(スポーティング・レギュレーション)」です。ドライバーの資格や交代について書いてあるのは後者、スポーティング・レギュレーションのほうです。

編集部では、FIA(国際自動車連盟)が公開している「2026 Formula 1 Sporting Regulations(Section B)」のIssue 06/2026年4月28日版のPDFを実際にダウンロードし、本文を通しで検索しました。結果は次のとおりです。

【編集部による原文検索】2026年F1スポーティング・レギュレーション Section B 本文中の出現回数

・”reserve”(リザーブ)……0回

・”Changes Of Driver”(ドライバーの交代)……条項の見出しとして存在(B1.7)

・”Super Licence”(スーパーライセンス)……複数箇所で登場

つまりF1の規則は、「リザーブという役職の人がいる」という前提では書かれていません。書いてあるのは「ドライバーを交代させたいときは、こういう条件を満たしてください」という手続きだけ。誰を控えに置くか、その人にどんな肩書きを与えるかは、チームの自由なのです。

実際、チームによって呼び方はバラバラです。「リザーブドライバー」「テストドライバー」「サードドライバー」「開発ドライバー」。同じ人がいくつも肩書きを持っていることもあります。角田裕毅選手の2026年の立場も、レッドブルのテスト兼リザーブドライバーであり、同時にレーシングブルズのリザーブも兼ねる、という二重の役割です(2026年2月18日にレッドブルが岩佐歩夢選手とともに正式発表)。

ここを押さえておくと、この先がずいぶん見通しよくなります。「リザーブ=1戦だけ出られる特別な資格」ではありません。「チームが控えに置いている、いつでも出られる状態の人」です。そして実際に出るときに効いてくるのが、次に見る交代の規則です。

いま実際に起きていること:モンツァのレッドブル陣営

制度の話に入る前に、いま目の前で起きている出来事を整理しておきましょう。これが分かると、あとの規則の話が「なるほど、あれのことか」とつながります。

2026年のレッドブル・レーシングは、マックス・フェルスタッペン選手とアイザック・ハジャー選手の2人体制でシーズンに臨みました。ハジャー選手は前年までレーシングブルズ(レッドブルのもう1つのチーム)で走っていた若手で、2026年から本チームに昇格した、と報じられています。

ところが夏休み(サマーブレイク)の終盤、ハジャー選手が左手首を骨折。チーム公式の発表により、第12戦オランダGP(8月21日〜23日)を欠場することになりました。ここから玉突きが起きます。

玉突きの流れ

(1)レッドブルの1台が空く(ハジャー選手が欠場)

(2)レーシングブルズのリアム・ローソン選手が、レッドブル本チームへ移って穴を埋める

(3)今度はレーシングブルズの1台が空く

(4)そこに、リザーブだった角田裕毅選手が座る

この結果、角田選手はオランダGPでおよそ8か月ぶりの実戦復帰を果たし、決勝を11位でフィニッシュしました。ローソン選手はレッドブルで7位入賞。2人とも代役として結果を残したかたちです。

そして今週末のイタリアGPも、同じ体制が続きます。レッドブルは9月2日(日本時間23時05分)に、ハジャー選手が引き続き欠場し、ローソン選手がレッドブル、角田選手がレーシングブルズから出走することを発表しました。ハジャー選手の回復状況を最終確認したうえで、モンツァでの復帰は見送るという判断だったと報じられています。

よく「角田はシートがない」と言われますが、これは正確ではありません。レッドブルとレーシングブルズ双方の正式なリザーブという契約上の立場があり、実際にその立場から2戦続けてレースに出ています。「レギュラーの座席は持っていないが、チーム内の役職としてのポジションはある」というのが実態です。

Compare

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記事で整理したポイントを踏まえて、比べやすい候補の一つを確認できます。

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「いつまでに決めればいいの?」――締め切りは予選が始まるまで

ここがいちばん誤解の多いところです。「金曜のフリー走行が始まる前に確定しないといけない」と説明されることがありますが、規則の原文はそうなっていません。

FIAの2026年スポーティング・レギュレーション第B1.7.2条には、こう書かれています。「初期車検(インシャル・スクルーティニアリング)の終了後に提案される変更については、スチュワード(審査委員)の同意を得ることを条件として、ドライバーの交代を行うことができる」。そのうえで、期限が2通りに分けられています。

週末の種類 ドライバー交代の期限(規則B1.7.2)
スプリントがない標準の週末
(今週末のイタリアGPはこちら)
予選が始まる前までならいつでも
スプリントがある週末 スプリントに出るドライバーはスプリント予選の開始前まで/決勝に出るドライバーは予選の開始前まで
上記より後になる場合 「不可抗力(フォース・マジュール)による追加の変更は個別に検討する」と規定されている

つまり金曜の走行が終わったあとでも、土曜の予選が始まる前ならまだ交代できるということです。「金曜に走った人が、そのまま決勝を走るとは限らない」。これがF1の代役制度のいちばん独特なところかもしれません。

では実務上はどうか。アストンマーティン公式の規則解説によれば、エントリーリスト(誰が何号車に乗るかの一覧)は初期車検のあと、FP1開始の2時間前に公表されるとされています。ですので「だいたい金曜の朝に固まる」という理解自体は間違っていません。ただし規則上の最終期限はもっと後ろにある、と覚えておくと、直前の体調不良やアクシデントで人が入れ替わったときに驚かずに済みます。

実例もあります。同じアストンマーティンの解説では、同チームのアンバサダーであるペドロ・デ・ラ・ロサ氏が、2011年カナダGPで体調を崩したセルジオ・ペレス選手の代役として出走し、自身99回目のグランプリ出走を果たした、というケースが紹介されています。急な交代は、決してレアケースではないのです。

「年に何人まで使えるの?」――レースは1チーム4人まで

代役を何回でも無制限に立てられるわけではありません。ここには明確な上限があります。

規則B1.7.1(FIA 2026年F1スポーティング・レギュレーション)

「選手権を通じて、各エントラント(チーム)はレースで最大4名のドライバーを使用することが認められる。また、新たに加わったドライバーも選手権でポイントを獲得することができる」

1チームのマシンは2台ですから、レギュラーの2人+代役2人まで、というイメージです。5人目を使いたくなっても、原則としてできません。これがあるので、チームは「誰を控えに置くか」を年初にきちんと決めておく必要があるわけです。

そしてもうひとつ、初心者の方がよく気にされる点。代役で出た人も、ちゃんと自分のポイントとしてもらえます。規則B1.7.1の後段が、はっきりそう書いています。角田選手がオランダGPで11位だったためポイント獲得には届きませんでしたが、もし入賞していれば、それは角田選手自身のドライバーズポイントになりました。「代走だからポイントはチームのもの」ということはありません。

なお、コンストラクターズ(チーム)ポイントのほうは、誰が乗っていてもそのチームに入ります。ここは代役でもレギュラーでも変わりません。

混同しやすい3つ:リザーブ/レース代役/ルーキーFP1枠

ここまで読んで、「じゃあ金曜のフリー走行に若い人が乗っているのは何なの?」と思われた方も多いはずです。これがまた別の制度で、いちばん混ざりやすいポイントです。整理しておきましょう。

  リザーブドライバー レースの代役出走 ルーキーFP1枠
正体 チームが自主的に置く「肩書き」。規則用語ではない 規則B1.7「ドライバーの交代」に基づく手続き 規則B1.7.3(c)によるチームの義務
出るセッション 原則なし(待機・シミュレーター中心) 予選・決勝を含む週末まるごと 主にFP1(金曜1回目のフリー走行)だけ
誰がなれる チームが選んだ人(ベテランでも若手でも可) スーパーライセンス保持者。1チーム年4人まで キャリアで決勝出走2回以下の人に限られる
回数の上限 規定なし レースで使えるドライバーが1チーム4人まで(B1.7.1) 2026年は1台につき2大会=1チーム年4回が義務(B1.7.3c)
ポイント 本人のドライバーズポイントになる FP1にポイントはない
2026年の例 角田裕毅(レッドブル/レーシングブルズ) 角田裕毅(第12戦・第13戦)、リアム・ローソン(同) 岩佐歩夢、ポール・アーロン、平川亮ほか

表の最下段を見比べると、面白いことに気づきます。角田選手は、リザーブでありレース代役でもありますが、ルーキーFP1枠には乗れません。すでに5シーズンをレギュラーとして戦っており、「キャリアで決勝出走2回以下」という条件を満たさないからです。一方で岩佐選手は、まだ決勝出走がないためルーキー枠の資格があり、同時にリザーブでもあります。「リザーブ=若手」ではないことが、ここからも分かります。

ルーキーFP1枠は2026年から「1台につき2回」に増えている

この義務については、いま出回っている解説記事のあいだで数字が割れています。編集部が確認した限り、複数の英語メディアが「チームは年に2回、若手にフリー走行を提供しなければならない」と書いています。しかしこれは以前の規則です。

FIAの2026年スポーティング・レギュレーション第B1.7.3条(c)の原文は、こうです。

「選手権の2つの大会において、選手権にエントリーされた各F1カーごとに、各エントラントは、キャリアを通じて2回を超える選手権レースに参加していないドライバーを使用しなければならない」

さらに同条は、該当大会の7日前までに、(1)そのドライバーの詳細、(2)どのマシンに乗せるか、をFIAへ書面で通知することを求めています。

「1台につき2大会」ですから、2台エントリーしているチームは年に合計4回、レギュラードライバーに車を明け渡す義務があることになります。以前の「1台につき1回=年2回」から倍増しているわけです。この点は、一次情報である規則原文を正としてください。

同じB1.7.3条には、運用上の細かい決まりも並んでいます。初心者の方が「へえ」と思いそうなところを拾うと、次のとおりです。

条項 内容
B1.7.3(a) どのマシンに誰を乗せるかを、FP1開始の24時間前までにFIAへ通知。開始2時間前を切ってからの変更はスチュワードの同意が必要
B1.7.3(b) 1つのセッションで使える追加ドライバーは2名まで
B1.7.3(d)(e) 割り当てられたカーナンバーを付け、本来のドライバーに割り当てられたパワーユニットとタイヤを使う
B1.7.3(f) スーパーライセンス、またはフリー走行専用スーパーライセンスを保有していること

(e)がなかなか渋いところで、若手がFP1で走る分もレギュラードライバーの持ち分から使われます。パワーユニットもタイヤも1年で使える数が決まっているので、チームからすると「若手に乗せる=レギュラーの資源を削る」ことになる。だからこそチームは、走らせるサーキットとタイミングを慎重に選びます。「なぜモンツァで?」という問いの答えの一部が、ここにあります。

そもそもF1に乗るには免許がいる:スーパーライセンス

「じゃあ誰でも控えに置けるの?」というと、そうはいきません。F1のマシンを走らせるにはスーパーライセンスというFIA発行の資格が必要です。

アストンマーティン公式の規則解説によれば、この資格は下位カテゴリーの成績に応じて与えられるポイントを、過去3年で積み上げて取得するもので、しきい値は40ポイント。あわせて、18歳以上であること、国際Aライセンスを持っていること、一般の運転免許を持っていること、理論試験に合格していること、シングルシーターで2シーズンを戦っていること、が求められる――と説明されています。カートの世界選手権で優勝しても3ポイント、F2で3位以内に入れば40ポイント、といった具合に、上のカテゴリーほど配点が高くなる仕組みです。

そして先ほどのフリー走行専用スーパーライセンス。同じ解説によれば、こちらは条件が緩められていて、初回申請までに25ポイント、またはF2を6レース走っていること、とされています。「レースには出られないが、金曜のフリー走行なら乗れる」区分をわざわざ用意することで、若手に実車の機会をつくっているわけです。

なお、このポイント配分は年によって見直されることがあります。上の数値はチーム公式の解説記事(2023年11月公開)に基づくもので、編集部では2026年時点の最新配分をFIAの一次資料で確認できませんでした。金額や点数のような数値は、必ず時点とセットで受け取ってください。

リザーブは普段なにをしている?――シミュレーターと「旧型車テスト」

レースに出ないあいだ、リザーブは何をしているのか。これは初心者の方から本当によく出る疑問です。

大きく3つあります。(1)サーキットに帯同して待機する、(2)ファクトリーでシミュレーターを走らせる、(3)旧型マシンでのテスト走行を担当する。

(2)のシミュレーターは、想像以上に実戦的です。F1公式が9月1日に伝えたところによると、アルピーヌのリザーブであるポール・アーロン選手は、モンツァのFP1を走ったあとその日の夜にイギリスのエンストン(チーム本拠地)へ戻り、シミュレーターでセットアップの詰めを手伝う予定だといいます。金曜に実車で確かめたことを、その晩のうちにシミュレーターへ持ち帰り、土曜に間に合わせる。リザーブはこういう働き方をしています。

(3)が、規則上とても面白い部分です。F1では現行マシンでの私的テストが厳しく制限されているため、チームはTPC(Testing of Previous Car=旧型車テスト)という枠組みで、数年前のマシンを使って走行します。ここでハンドルを握るのが、多くの場合リザーブやジュニアの選手です。規則B11.3が定める主な上限は以下のとおりです。

条項 TPC(旧型車テスト)の主な制限
B11.3.6 1チームが1暦年に実施できるのは最大20日
B11.3.7 「選手権にエントリーしている(またはエントリー予定の)ドライバー」を使う場合、1暦年最大1,000kmまで。しかもその距離は最大4日のなかで消化する
B11.3.4 TPC用に用意できる車は1台まで。1日に2台を使うこともできない
B11.3.1 1日の走行は連続9時間が上限
B11.1.1 実施の7日前までにFIAと他のすべてのチームへ、車の仕様・ドライバー名・日程・目的・サーキットを通知する

最後の行に注目してください。テストの予定をライバル全チームに事前通知しなければならないのがF1です。「こっそり大量に走って差をつける」ということができないよう、設計されています。

もうひとつ、B11.3.7には代役に関する気の利いた一文があります。「選手権の途中でドライバーが交代した場合、その代役はTPC走行距離の計算上、元のドライバーとみなされる」。つまりシーズン中に人が入れ替わっても、走行距離の枠がリセットされて増えたりはしない、ということです。

【編集部集計】2026年、日本人ドライバーはどこで走っているか

ここまでの制度を頭に入れたうえで、日本人ドライバーの立ち位置を見てみましょう。以下は、各チームおよび報道の公開情報を編集部が数えなおしたものです(2026年9月3日時点/イタリアGPは発表済みの予定を含む)。取材や独自調査によるものではありません。

ドライバー 2026年の立場 2026年のFP1出走 2026年の決勝出走
角田 裕毅 レッドブルのテスト兼リザーブ/レーシングブルズのリザーブ兼任 0回(キャリア出走数の条件によりルーキー枠の対象外) 2回(第12戦=11位/第13戦=出走予定)
岩佐 歩夢 レッドブル/レーシングブルズのリザーブ 3回(バルセロナ・カタルーニャ=レッドブル、オーストリア=レーシングブルズ、イタリア=レッドブル) 0回
平川 亮 ハースのリザーブ 2回(オーストリア、ハンガリー/いずれもハース。報道ベース) 0回

この表が示しているのは、「日本人3人が、それぞれ別の入口に立っている」という事実です。角田選手は代役としてレースの週末を担当し、岩佐選手と平川選手はルーキーFP1枠を使って実車のデータを積んでいる。同じ「リザーブ」でも、規則上の使われ方がまったく違います。

岩佐選手について補足しておくと、今週末モンツァのFP1ではマックス・フェルスタッペン選手のRB22をドライブすることが、9月3日朝(日本時間7時17分)に発表されました。今季3度目のFP1であり、レッドブル本体からの出走としては2回目です。世界王者の車をそのまま託されるというのは、若手にとってかなり重い機会と言っていいでしょう。

比較として、アルピーヌのポール・アーロン選手のケースも挙げておきます。F1公式によれば、アーロン選手は2026年にすでに3回のフリー走行を経験しており(バルセロナ・カタルーニャとオーストリアはアウディとの取り決めによりアウディから、ハンガリーはアルピーヌから)、モンツァが今季4回目。今回はピエール・ガスリー選手のA526に乗ります。他チームに「貸し出す」形でFP1の機会をつくることもある――ここも、初心者の方には意外に映る運用かもしれません。

今週末のイタリアGPをこう見る

第13戦イタリアGPは、スプリントのない標準形の週末です。フリー走行3回、予選、決勝という並びで、決勝は53周。日本時間のスケジュールは次のとおりです。

セッション 日本時間 この記事の視点での見どころ
FP1 9月4日(金)19:30 ルーキー枠の消化。岩佐歩夢がフェルスタッペンのRB22で走る
FP2 9月4日(金)23:00 レギュラーが戻る。FP1を「休んだ」側は、ここから遅れを取り戻す
FP3 9月5日(土)19:30 予選前の最終調整
予選 9月5日(土)23:00 ドライバー交代の締め切り。ここを過ぎると原則として入れ替えはできない
決勝 9月6日(日)22:00 53周。代役2人(ローソン=レッドブル、角田=レーシングブルズ)がどこまでやれるか

とくに面白いのがFP1とFP2のつながりです。金曜の1回目を若手に明け渡したレギュラードライバーは、その分だけ準備時間を失います。モンツァは高速コースで、セッティングの方向性がはっきりしている(かつ周回時間が短くデータが貯まりやすい)ため、比較的「若手を乗せやすい」とされる会場です。今回、複数チームがモンツァを選んでいる背景には、そうした事情もあると考えられます。

なお、予選で上位に入っても、マシンの部品交換によるペナルティでグリッドが下がることがあります。その仕組みは「F1グリッドペナルティ入門」(2026年8月24日公開)(URL確定後にリンク化)で、スプリントのある週末との違いは「F1スプリント入門」(2026年8月19日公開)(URL確定後にリンク化)で、それぞれ詳しく説明しています。

「1戦だけ」が人生を変えることがある

最後に、代役という制度がなぜドラマになるのかを書いておきます。

2022年のモンツァ――そう、今週末と同じサーキットです――で、ウィリアムズの代役として出走したニック・デ・フリース選手が印象的な走りを見せ、翌2023年のシート獲得につながったと報じられています。2023年には、ダニエル・リカルド選手が手を負傷した際にリアム・ローソン選手が代役を務め、その評価が後の起用につながったとされます。2024年サウジアラビアGPでは、カルロス・サインツ選手が虫垂炎で欠場したフェラーリの代役として当時18歳のオリバー・ベアマン選手が出走し、7位入賞。ほどなくハースが2025年のレギュラーシートを用意した、と報じられています。

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シーズンを通しても数えるほどしかない決勝レースの、そのうちのたった1回。準備期間はほぼゼロ。それでも結果を出せば、翌年の景色が変わる。「なぜあんなに必死なんだろう」と思ったら、そこには次があるとは限らない1戦が置かれている、と考えてみてください。今週末の角田選手も、まさにその位置にいます。

そして、レッドブルが2つのチームを持っていること自体が、この玉突きを可能にしています。1台空いたときに、もう1つのチームから人を動かせる。この構造については「レッドブル2チーム体制 Lab」(URL確定後にリンク化)で掘り下げています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 代役で出たドライバーのポイントは、誰のものになりますか?

A. 走った本人のドライバーズポイントになります。規則B1.7.1に「新たに加わったドライバーも選手権でポイントを獲得することができる」と明記されています。チームに入るコンストラクターズポイントも、通常どおり加算されます。

Q2. リザーブドライバーは、どのチームにも必ずいるのですか?

A. 規則で義務づけられてはいません。編集部が確認した限り、FIAの競技規則に「リザーブを置け」という条文はなく、実際に2026年シーズン前の時点で、リザーブが未定と報じられていたチームもあります。また、エンジンの供給を受けている側のチームが、供給元のチームからリザーブを借りられる場合もある、と報じられています。「必ず1チーム1人」ではなく、体制はチームごとにかなり違います。

Q3. 角田選手はリザーブなのに、なぜFP1の若手枠では走らないのですか?

A. 規則B1.7.3(c)の対象が「キャリアを通じて2回を超える選手権レースに参加していないドライバー」に限られているためです。すでに長くレギュラーを務めた選手は、リザーブであっても、この義務枠を埋める役には立ちません。逆に言えば、この枠は本当に経験の浅い選手のためだけに確保されています。

Q4. 金曜に走ったドライバーが、そのまま決勝に出るとは限らないのですか?

A. 限りません。スプリントのない週末の場合、規則B1.7.2により、スチュワードの同意があれば予選開始前まで交代が可能です。さらに不可抗力による変更は個別に検討されるとも書かれています。「フリー走行のメンバー=決勝のメンバー」ではない、と覚えておくと安心です。

Q5. 1シーズンに何人まで交代できますか?

A. レースで使えるのは1チーム最大4人です(規則B1.7.1)。2台体制ですから、レギュラー2人に加えて代役は年間2人まで、という計算になります。なおFP1・FP2で使う追加ドライバーはこの4人枠とは別で、1セッションにつき2名までと定められています(B1.7.3b)。

Q6. ハジャー選手はいつ戻ってくるのですか?

A. 本稿の執筆時点(2026年9月3日)で、復帰時期はチームから明らかにされていません。左手首を骨折して欠場が続いている、という事実関係にとどめます。SportsPulseでは、選手の健康状態や私生活に踏み込んだ推測は行いません。

まとめ

・「リザーブドライバー」はF1の競技規則には出てこない言葉。チームが自主的に置く肩書きです。

・規則が定めているのは「ドライバーの交代」。レースで使えるのは1チーム年4人まで(B1.7.1)。

・交代の締め切りは予選開始前。スチュワードの同意が要ります(B1.7.2)。金曜に確定、ではありません。

・金曜FP1に若手が乗るのは別制度。2026年は1台につき2大会=1チーム年4回が義務です(B1.7.3c)。

・だから角田選手は「代役」に、岩佐選手は「ルーキー枠」に、それぞれ別の入口から今週末のモンツァに立っています。

「なぜ急に別の人が乗れるの?」という最初の疑問には、こう答えられます。「F1には交代のルールがちゃんとあって、予選が始まるまでなら人を入れ替えていいから」。そして「リザーブって普段なにしてるの?」には、「シミュレーターと旧型車テストで、チームの開発をずっと支えている」と。

F1の見かたをもう少し広げたい方は、F1観戦ファンHUBに入門記事をまとめています。今週末の中継を、少しだけ違う目で見ていただけたら嬉しいです。

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F1観戦ファンHUB(fan-f1)/入門記事のまとめページ

・「F1グリッドペナルティ入門」(2026年8月24日公開)(URL確定後にリンク化)

・「F1スプリント入門」(2026年8月19日公開)(URL確定後にリンク化)

・「レッドブル2チーム体制 Lab」(URL確定後にリンク化)

出典

いずれも2026年9月3日に確認しました。

1. FIA(国際自動車連盟)「2026 Formula 1 Sporting Regulations – Section B」Issue 06/2026年4月28日版(一次)※B1.7 Changes Of Driver、B1.7.3 追加ドライバーとルーキー起用義務、B11.1/B11.3 TPCの各条を参照
https://www.fia.com/system/files/documents/fia_2026_f1_regulations_-_section_b_sporting_-_iss_06_-_2026-04-28.pdf

2. Formula 1公式「Aron set for next FP1 run with Alpine at Monza」2026年9月1日付(一次)
https://www.formula1.com/en/latest/article/aron-set-for-next-fp1-run-with-alpine-at-monza.3X5Psl55Co2cFyrpqwzrGt

3. Formula 1公式「F1 EXPLAINS: Race starts, reserve drivers, rule changes and more – your questions answered」(一次・リザーブドライバーの共有等をF1公式が扱った回)
https://www.formula1.com/en/latest/article/f1-explains-race-starts-reserve-drivers-rule-changes-and-more-your-questions.fDS6gIZctLLiacf6OwrTx

4. アストンマーティンF1チーム公式「AvaTrade explains the F1 rulebook: Reserve drivers」2023年11月1日付(チーム公式・一次)※スーパーライセンス、フリー走行専用スーパーライセンス、エントリーリストの公表タイミング、デ・ラ・ロサの事例
https://www.astonmartinf1.com/en-GB/news/feature/avatrade-explains-the-f1-rulebook-reserve-drivers

5. autosport web「レッドブル、2026年のラインアップを発表。フェルスタッペンのチームメイトにハジャーを起用へ。角田はテスト&リザーブ就任」(二次)
https://www.as-web.jp/f1/1274618

6. autosport web「角田裕毅のF1イタリアGP参戦が正式発表!」(二次)
https://www.as-web.jp/f1/1347379

7. autosport web「岩佐歩夢、F1イタリアGPのFP1でレッドブルのフェルスタッペン車をドライブへ」(二次)
https://www.as-web.jp/f1/1347512

8. motorsport.com日本版「角田裕毅、モンツァで2戦連続のF1代役出走へ」(二次)
https://jp.motorsport.com/f1/news/f1-2026-rd13-italian-tsunoda-preview-comments/10851621/

9. Motor Sport Magazine「2026 F1 reserve drivers: the hopefuls on standby for each GP team」2026年1月7日公開/2026年2月3日最終更新(二次)※各チームのリザーブ体制、ベアマン/デ・フリース/ローソンの事例
https://www.motorsportmagazine.com/articles/single-seaters/f1/2026-f1-reserve-drivers-the-hopefuls-on-standby-for-each-gp-team/

本稿で意図的に空欄にした項目

スーパーライセンスのポイント配分の2026年時点の最新版……FIAの一次資料で確認できなかったため、チーム公式解説(2023年11月公開)の数値を出典明記のうえ紹介するにとどめました。

ハジャー選手の復帰時期……チームから明らかにされていないため書いていません。

2026年シーズンの総レース数・残りレース数・第13戦より後の日程……媒体間で表記が割れているため、確定事実としては一切扱っていません。今週末のイタリアGPまでのスケジュールのみ記載しています。

モンツァFP1で若手を起用する全チームの内訳……一次情報で確認できたのはアルピーヌとレッドブルの2件のみのため、その2件だけを記載しています。

本記事は、FIAが公開する2026年F1競技規則の原文PDF、F1公式サイト、チーム公式サイトなどの公開情報にあたり、SportsPulse 編集部で内容を相互に確認したうえで作成しています。「編集部集計」と記載した箇所は、公開情報を編集部が数えなおしたものです。競技規則は年の途中でも改定されることがあります。最新の内容は必ずFIA公式サイトでご確認ください。

執筆: SportsPulse 編集部

本記事は、F1公式およびチーム公式の一次情報を突合したうえで、SportsPulse 編集部が内容をレビューして公開しています。取材・独自調査に基づく記述は含みません。事実関係の誤りにお気づきの場合は、お問い合わせよりご連絡ください。

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最終更新日: 2026年9月4日 | 編集方針

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F1 2026 公式チームキャップ

読み終えたあとに、比較しやすい候補の一つを静かに確認できます。

  • 最新シーズンの公式ライセンスグッズ。全チーム対応。
  • 推しチームを身につけてレースを楽しめる公式ライセンスグッズ。
  • 最初のF1グッズとして説明しやすい定番です。
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