メルセデスAMGペトロナス・フォーミュラワン・チームは、独メルセデスベンツのワークスF1チーム。1930年代「シルバーアロー」時代に圧倒的な強さを誇ったが、1955年ル・マン24時間の大事故(観客84人死亡)を機にワークスレースから50年以上撤退。1995年からマクラーレンへPU供給(ハッキネン2連覇・ハミルトン2008王者を支援)、2009年にブラウンGPを買収し2010年にワークスチームとして復帰。2014年V6ターボハイブリッドPU規定導入とハミルトン加入を機に F1史上最長の8年連続コンストラクターズ王座(2014-2021)を達成。ロズベルグが2016年に王者直後即引退、2021年アブダビ最終戦の「マシ事件」で王座を失うなど、F1史の節目で常に主役だった。2025年からハミルトンがフェラーリへ移籍、 18歳の新人キミ・アントネッリ がラッセルとの新体制で2026年新規定下の王朝復活を狙う。[出典]
メルセデスAMGペトロナス・フォーミュラワン・チーム(Mercedes-AMG Petronas Formula One Team)は、英オックスフォードシャー州 ブラックリー(Brackley) にシャシーファクトリー、英ノーザンプトンシャー州 ブリックスワース(Brixworth) にPUファクトリー(Mercedes-AMG HPP)を持つF1コンストラクター。シャシー名はWシリーズ、チームカラーは伝統の シルバーアロー(銀の矢) ── 2024年はブラックを基調にシルバーアクセント。F1元年とは少し異なるが、半世紀以上F1の歴史と深く絡み合う名門である。
シルバーアロー黎明期(1930年代)
メルセデスのモータースポーツ史は1930年代に遡る。当時のドイツ第三帝国は 「シルバーアロー(Silberpfeile)」プログラム を通じてメルセデス・ベンツとアウトウニオン(現アウディ)を国威発揚の道具として支援、ヨーロッパ・グランプリ戦で圧倒的な強さを発揮した。
メルセデスのマシン W25(1934年)、W125(1937年、最高出力646馬力)、W154(1938年V12スーパーチャージャー)は、当時のヨーロッパグランプリで連戦連勝。ルドルフ・カラチオラ、ヘルマン・ラング、マンフレッド・フォン・ブラウヒッチュらドイツ人ドライバーが活躍した。「シルバーアロー」の伝統は、現代のメルセデスF1のアイデンティティの根である。
第二次世界大戦による中断後、1950年代に短期間F1に参戦し、1954年・1955年にファン・マヌエル・ファンジオがW196でドライバーズタイトルを獲得(フェラーリ記事と重複する歴史)。
1955年ル・マン大事故と50年の沈黙
1955年6月11日、ル・マン24時間レース ── ピエール・ルベー駆るメルセデス300SLRがホームストレートで他車に追突、マシンが宙を舞ってスタンドに突っ込み爆発炎上。観客84名・ドライバー1名が死亡 という、モータースポーツ史上最悪の事故となった。
メルセデスは事故後、即座にル・マンを撤退、続いてF1を含む全モータースポーツから 50年以上ワークス参戦を停止。「絶対安全が保証されるまでレースに戻らない」という社内方針が長く維持された。
その間、メルセデスはエンジンサプライヤーとしてF1に関与する。1995年からマクラーレンへPU供給、ハッキネンの1998年・1999年2連覇、ハミルトンの2008年最年少王者をサポートした。1994年のインディ500優勝(ペンスキー、特別ターボ仕様)も、間接的なメルセデスの戦果である。
ブラウンGP買収とワークス復帰(2009〜2012年)
転機は 2009年。ホンダがリーマンショックで急遽F1撤退すると、技術部隊を率いていた ロス・ブラウン(元フェラーリ)が 「ブラウンGP」 として残留参戦。シーズンを支配し、ジェンソン・バトンが王者・チームもコンスト王者という奇跡のシーズンを達成した。
2009年11月、メルセデスはブラウンGPを買収、 2010年から「メルセデスGPフォーミュラワン・チーム」として55年ぶりのワークス復帰 を実現。ドイツ復帰のシンボルとして ミハエル・シューマッハ(41歳・3年ぶり現役復帰)と ニコ・ロズベルグ(ケケ・ロズベルグの息子)を起用した。
しかし2010〜2012年の3シーズンは、シューマッハの表彰台はわずか1回(2012欧州GP3位、彼の現役最後の表彰台)に留まり、コンスト4位が最高成績。「メルセデスは復帰したが弱い」という時期が続いた。
ハミルトン加入(2013年)— 黄金期前夜
2012年9月、ルイス・ハミルトン(27歳、当時マクラーレン在籍)がメルセデス移籍を発表。多くの専門家が「中団チームへの降格」「キャリアの自殺」と批判した移籍だったが、ハミルトン自身は 「2014年新PU規定でメルセデスが支配する」 という直感を信じた。
2013年は移行期、ハミルトンは1勝(ハンガリーGP)に留まったが、ロズベルグも2勝、コンスト2位と着実な改善を見せた。 2013年こそが「黄金期前夜」 であり、翌年の爆発を予感させたシーズンだった。
2014〜2021年 — V6ターボハイブリッドの絶対王朝
2014年からF1はV6ターボハイブリッドPU規定を導入。メルセデスはブリックスワース工場で開発した独自PU 「PU106A Hybrid」 で、ライバルを「数年分」リードした。
| 年 | コンスト | ドライバーズ王者 | チーム勝利数 |
|---|---|---|---|
| 2014 | 1位 | ハミルトン | 16 |
| 2015 | 1位 | ハミルトン | 16 |
| 2016 | 1位 | ロズベルグ | 19 |
| 2017 | 1位 | ハミルトン | 12 |
| 2018 | 1位 | ハミルトン | 11 |
| 2019 | 1位 | ハミルトン | 15 |
| 2020 | 1位 | ハミルトン | 13 |
| 2021 | 1位 | (フェルスタッペン) | 9 |
8年連続コンストラクターズ王座 ── F1史上最長記録(フェラーリ1999-2004の6年連続を更新)。ハミルトンはこの期間に6回のドライバーズタイトルを獲得(通算7回はシューマッハと並ぶ最多タイ)。
組織の中核は3人:
- トト・ヴォルフ(チーム代表+株主30%)— オーストリア人元レーサー、F1で最も強力な経営者
- ジェームズ・アリソン(テクニカルディレクター、2017-)— 元フェラーリ、シャシー設計の頂点
- アンディ・コーウェル(HPP代表、2014-2020)— 後にアストンマーティンへ移籍
2016年 — ロズベルグ王座奪取と即引退
2016年シーズン はメルセデスにとって最も劇的な年だった。チームメイトのハミルトンとロズベルグが シーズン全戦タイトル争い、最終戦アブダビでロズベルグが2位フィニッシュ → 5pt差で キャリア初のドライバーズタイトル獲得。
ところがレースから わずか5日後、ロズベルグが現役引退を発表。「人生で最大の目標を達成した。これ以上F1にエネルギーを注ぐ動機がなくなった」と31歳の若さで電撃引退、F1界に衝撃を与えた。父子王者(ケケ・ロズベルグ1982年王者)として歴史に名を刻んだ瞬間でもある。
ロズベルグの後任には バルテリ・ボッタス(フィン)が2017年から加入、2017〜2021年の5年間ハミルトンのチームメイトを務めた。
2021年最終戦アブダビGP — 「マシ事件」
2021年最終戦アブダビGP ── ハミルトンとマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が同点でドライバーズタイトルを争った。ハミルトンが終盤までトップ走行、王者目前。
しかしレース終盤に セーフティカー導入後の再開手続きで、レースディレクター マイケル・マシ が規定にない判断を下し、フェルスタッペンに新品ソフトタイヤ+ハミルトン直後の再開ポジションを与える状況を作り出した。最終ラップでフェルスタッペンがハミルトンを抜き、 F1史上最も議論された王座決定 となった。
メルセデスは規定違反として正式抗議、FIAは後にマシをレースディレクターから解任したが、判定は覆らずフェルスタッペンが王者となった。「マシ事件(Masi-gate)」として F1史に深く刻まれた瞬間である。この敗北以降、メルセデスは2025年5月時点でドライバーズタイトルを獲得していない。
2022〜2024年 — 王朝の終焉とポーパシング問題
2022年からF1は「グラウンドエフェクト復活」の新シャシー規定を導入。メルセデスW13は深刻な 「ポーパシング(Porpoising = 上下振動)」 に悩まされ、シーズンを通じてレッドブルに圧倒された。コンスト3位(515pt)、 8年連続王座が途切れた。
2023年も復活ならず、コンスト2位(409pt)に留まる。2024年シーズンはジョージ・ラッセルがオーストリアGPで勝利(フェルスタッペン×ノリス接触の混乱から漁夫の利)、ハミルトンが英GPでホームレース勝利、ベルギーGPでは ラッセルがチェッカーをトップで受けた後、車重不足で失格→ハミルトン繰り上がり優勝 という史的瞬間も発生したが、コンストラクターズは4位に終わった。
ハミルトン離脱とアントネッリ抜擢(2025年〜)
2024年2月1日、ハミルトンの2025年フェラーリ移籍が発表。F1界に衝撃が走り、メルセデスはハミルトン後継として アンドレア・キミ・アントネッリ(18歳・伊国籍)を抜擢した。
アントネッリは2024年F2チャンピオン候補だったがF2を1年早く卒業し、F1への直接昇格となった異例の人事。F1史でも極めて若い昇格であり、 「ハミルトンの後継者」として大きな期待 を背負っての参戦となった。
2025年シーズン、ラッセル+アントネッリの新体制でメルセデスは中団上位を維持、複数の表彰台を獲得しつつ復活を進めた。
ブラックリー × ブリックスワース — 二拠点体制
メルセデスF1は ブラックリー(Brackley、シャシー) と ブリックスワース(Brixworth、PU) の英国二拠点で運営される。
- ブラックリー本拠地 — 旧ホンダレーシングF1チーム(旧BAR、旧ティレル)の本拠地。約1,000名のスタッフが在籍
- ブリックスワース PU工場(Mercedes-AMG HPP) — 旧イルモアエンジニアリング、約700名がPU開発・製造を担当
両拠点はトラック40分の距離にあり、シャシーとPUの統合開発が可能な世界的にも稀有な体制。「二拠点が一体運営される強み」 がメルセデスの強さの源泉である。
ドライバー布陣(2026年)
2026年シーズンは ジョージ・ラッセル(28歳・英国籍・2022年加入)と アンドレア・キミ・アントネッリ(19歳・伊国籍・2025年加入)の体制で挑む。リザーブには フレデリック・ヴェスティ(2024年F2 3位)をはじめとするメルセデス・ジュニアチーム出身の若手が控える。
2026年新規定への展望
2026年新PUレギュレーション(50%電動化、e-fuel義務化)下では、メルセデスは 自社製PU継続開発。ブリックスワースの開発力は2014年規定で証明済みで、ヴォルフ代表は 「2014年と同じ波が来る」 と新規定に賭けている。チーム名もこの大きなカテゴリ転換に備え、2025年から 「Mercedes-AMG Petronas F1 Team」 に統一改称された。
日本からF1観戦
2026年シーズンの日本でのF1中継は3チャネル体制:① フジテレビNEXT が全戦の予選・決勝・FP1〜FP3を専門チャンネル+オンデマンド(FOD)で完全配信。② FOD F1プラン(チャンピオンコース)は2026年から国内正式配信、月額¥5,900で全24戦ライブ+4K HDR・マルチビュー・オンボードカメラ・チームラジオなど F1 TV Premium 同等のフルデータ視点でレースを楽しめる。③ Amazon Prime Video では Netflix シリーズ「Drive to Survive」最新シーズンが配信され、メルセデス(ハミルトン離脱・アントネッリ18歳抜擢・ヴォルフ戦略)の舞台裏ドキュメンタリーが視聴できる。
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📚 シルバーアロー時代のフェラーリ:『エンツォ・フェラーリ 跳ね馬の肖像』(集英社文庫) / Yahoo!。
📖 開幕前定番:『F速 2025 総集編』(三栄/Kindle) / Yahoo!。
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まとめ — 「シルバーアロー」が再起動する2026年
メルセデスのF1史は、1930年代シルバーアロー時代、1955年ル・マン大事故、50年の沈黙、ハッキネン王者を支えたPU供給時代、2009年ブラウンGP買収、2014-2021年の8年連続王座、2021年アブダビの「マシ事件」、ハミルトン離脱まで、ほぼ20世紀後半から21世紀前半のF1の主要転換点を網羅する。
ハミルトン後、ラッセル+アントネッリの新体制で2026年新規定に挑むメルセデスは、 「8連覇王朝の再来」を期待される唯一無二の存在 だ。シルバーアローが再びF1の頂点に戻れるかどうかは、2026年最初の数戦で答えが出るだろう。
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