(2019 が直近)
攻撃的ハイライン
現代戦術の起点
基本フォーメーション 4-2-1-3 の構造
横浜 F・マリノスの戦術的アイデンティティは 4-2-1-3。これは 2018 年に就任したアンジェ・ポステコグルー監督(オーストラリア出身、後の Celtic / Tottenham Hotspur 監督)が確立した 「アタッキング・フットボール」哲学の象徴的フォーメーション。前線 3 枚+トップ下 1 枚の 4 トップ的攻撃陣と、ボランチ 2 枚+ DF 4 枚の後方 6 枚という、「攻撃と守備の極端なバランス」を特徴とする。

マルコス(10 番)
喜田 ― ボランチ
永戸 CB CB 小池
GK
特に注目すべきは 「両 SB の偽 SB(インバーテッド SB)化」。マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督が確立した戦術概念で、SB が攻撃時には中盤の位置まで上がってきて、ボランチと連動する。これにより 4-2-1-3 が攻撃時には 3-4-2-1 / 3-4-3 のような実質的な配置に変形する。守備時には素早く SB の元位置に戻る、高度な戦術理解が必要なシステム。
アンジェ・ポステコグルーの「アタッキング・フットボール」
アンジェ・ポステコグルー(1965 年生、ギリシャ系オーストラリア人)は、現代日本サッカー戦術史を変えた人物。2018-2021 の 4 シーズン横浜 F・マリノス監督を務め、2019 年に J1 リーグ制覇(15 年ぶり)を達成。その後 Celtic(スコティッシュ・プレミア)→ Tottenham Hotspur(プレミアリーグ)へとキャリアアップした、「日本から世界へ」の戦術指揮官モデル。
ポステコの哲学は 「ボールを支配し続ける、ハイラインを保ち続ける、攻撃を止めない」。具体的な戦術原則は:
- ボール保持率 65% 以上を目標とする(J1 平均 50% を大幅に上回る)
- ハイラインを最終ライン付近にずっと保つ(オフサイドトラップを多用)
- 両 SB を中盤化(偽 SB)して攻撃幅を確保
- WG(エウベル等)にカットイン+外突破の二刀流を要求
- 失った直後の即時奪取(ゲーゲンプレス)でリスク補償
マスカット → キューウェル → 新体制への進化
ポステコ退任(2021 年シーズン後)→ Celtic 移籍に伴い、後任として ケヴィン・マスカット(豪、メルボルン・ビクトリー監督経験者)が就任。2022 シーズンに J1 リーグ優勝(マリノス通算 5 度目)を達成、ポステコ遺産を継承しながら独自色を加えた。
2024 年には ハリー・キューウェル(豪、元 Liverpool、Leeds United の伝説的 LW)が監督就任、しかし結果が伴わずシーズン途中に解任。2024 シーズンは中位低迷と ACL2 出場でも苦戦。2025 シーズンは 新体制下での再建モードとなり、ポステコ路線の「攻撃的ハイライン」を維持しつつ、現代化への調整が進む。
| 監督 | 期間 | 戦術特徴 | 主要成果 |
|---|---|---|---|
| アンジェ・ポステコグルー | 2018-2021 | 4-2-1-3 ハイライン+偽 SB | 2019 J1 優勝(15 年ぶり) |
| ケヴィン・マスカット | 2022-2023 | ポステコ継承+微調整 | 2022 J1 優勝(5 度目) |
| ハリー・キューウェル | 2024 | 攻撃的維持+守備改善試行 | シーズン途中で解任 |
| 新体制(2025-) | 2025- | 再建モード、戦術現代化 | 進行中 |
比較のポイントを押さえる
記事で整理したポイントを踏まえて、比べやすい候補の一つを確認できます。
エウベル × 宮市亮 × 植中朝日 — 攻撃の核
攻撃の核は、4-2-1-3 の前線 3 枚+トップ下。エウベル(左 WG、ブラジル人、テクニックの核)はカットインからの右足シュートと、外を駆け上がるサイドバックへのスルーパスの二刀流。宮市亮(右 WG、ドイツ・ブンデスリーガ経験者、スピード型)はマリノスのスピードを体現する縦突破の主役。植中朝日(CF、若手 U-23 代表級)がポストプレーと裏抜けの両方をこなす万能型ストライカー。
トップ下には マルコス・ジュニオール時代の系譜を継ぐ攻撃的 MF が配置される。「エウベル+宮市の両 WG」「植中の CF」「トップ下のテクニカル MF」の 4 人が、ボックス内に同時に侵入することで、相手 CB 2 人を 4 対 2 の数的優位に追い込むのがマリノス攻撃の理想形。
ハイラインのリスクと管理 — 喜田拓也の役割
マリノス戦術の最大のリスクは 「ハイラインの背後に広大なスペース」。両 SB が中盤化、CB 2 枚が高い位置を取り続けるため、長身 FW のロングボール一発、または快速 WG のカウンターに弱い構造。これを管理するのが 「中盤底のフィルター」と 「CB の判断速度」。
中盤底の 喜田拓也(DMF、長期キャプテン、日本代表選出経験)は、「中盤の整理屋」として相手のカウンターの起点を断ち切る役割。CB は エドゥアルド(ブラジル)等のスピード型を起用し、ハイライン裏のスペースをカバーできる選手構成にしている。それでも ハイラインリスクは構造的であり、強豪相手には 「攻撃が機能しない時に大量失点」のリスクが常に付きまとう。
ポステコ DNA の世界的拡散と「マリノス・モデル」
アンジェ・ポステコグルーが 2021 年に Celtic 監督に就任、2022 年に Celtic を Scottish Premiership 制覇に導いた後、2023 年に Tottenham Hotspur 監督へ電撃移籍。Tottenham でも 「アタッキング・フットボール」を継続し、2025 年 EFL カップ優勝等の成果を上げている。「日本(横浜)→ スコットランド → イングランド」の世界進出の物語は、現代サッカー戦術界における 「マリノス・モデル」として認知されている。
2018-2021 にマリノスでプレーした ピーター・クラモフスキー(豪、現 FC 東京監督)等、当時のスタッフが世界各地で戦術を伝播している。マリノスの 4 年間は、現代日本サッカー戦術史の最重要時期として、後世に語り継がれる時代となっている。
2025-26 横浜 F・マリノスの戦術キーチェック 5 選
- 4-2-1-3 ベースの攻撃的ハイライン — ポステコ遺産の継承
- 両 SB の偽 SB(インバーテッド)化 — 攻撃幅と中盤数的優位の確保
- エウベル+宮市亮の WG コンビ — テクニック × スピードの二刀流
- 喜田拓也 DMF の中盤フィルター — ハイラインリスクのバランサー
- ポステコ DNA の継承+現代化 — 新体制下での再建が 2025 シーズンの焦点
2025-26 戦術課題と J1 上位復帰
2024 シーズンの低迷を受け、2025 シーズンの戦術課題は 「攻撃的ハイライン哲学の維持と現代化」。マリノス・モデルの DNA を失わず、しかし現代日本サッカーの守備技術向上に対応する必要がある。「世代交代」と 「ハイラインリスク管理」が、新監督の最大の課題。
2026-27 ACL Elite 出場権獲得を目指す上で、「ポステコ哲学の継承力」と「実戦的勝利力」のバランスが問われる年となる。マリノスが再び J1 上位に戻れるかどうかは、現代日本サッカー全体の戦術志向の方向性にも影響を与える、極めて重要なシーズンとなっている。
執筆: SportsPulse 編集部 / 公開: 2026-05-14
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