可変で 4-2-3-1
(2023 / 2024)
長期戦術構築
基本フォーメーション 4-3-3 の構造
ヴィッセル神戸の現代戦術の起点は 4-3-3 ベースの可変システム。攻撃時には両 SB が高い位置を取り、3 トップが幅を確保する古典的な 4-3-3、守備時にはサイド MF(佐々木大樹・武藤嘉紀)が SB の前まで戻って 4-4-2 ブロックを形成する伸縮型。中盤の 山口蛍(DMF)+扇原貴宏/井手口陽介(IH)のトライアングルが、攻守の起点を担う。

井手口 山口 扇原
永戸 山川 M-トゥ 酒井
前川
2018-2023 年のイニエスタ時代に確立した「後方からのショートパス・ビルドアップ」は現在も基本だが、吉田体制下では ロングボールと縦速攻のオプションが大幅に強化された。バルサ流の遅攻のみに固執せず、相手の守備構造に応じて 「ショート vs ロング」「ポゼッション vs カウンター」を使い分ける現代的な可変性が現在の神戸の特徴。
大迫勇也+武藤嘉紀の連動 — 攻撃の核
攻撃の絶対的核は 大迫勇也(CF、35 歳)と武藤嘉紀(LW/CF、32 歳)の 2 人。大迫は 「ポストプレーと裏抜け、両方できる稀有な FW」として、4-3-3 の最前線で味方の攻撃を全方向に展開する起点となる。武藤は左 WG として 1 対 1 の縦突破と中央のセカンドストライカーの二刀流で、大迫の動きと完璧に連動する。
特に注目すべきは、両者が 「縦の入れ替わり」と「中央への流れ込み」を多用することで、相手 CB の対応判断を狂わせる動き。大迫が中盤に降りてきてポストプレー → 武藤が裏に走り込む、または武藤が中央に流れ込み大迫が左サイドに開く、といったローテーションが、神戸の最大の武器。2023-24 連覇の決定打は、この 2 人の「連動した動き」と「ボックス内での精度」にあった。
山口蛍を核とする中盤の組織
中盤の構造は 山口蛍(DMF)を底に、扇原貴宏/井手口陽介の IH 2 枚のトライアングル。山口は 「中盤の濾過装置」として、相手の縦パスを断ち、味方のビルドアップに常に手を差し伸べる役割。35 歳でもなお J1 屈指の運動量と読みの深さを誇り、「神戸戦術の心臓部」として機能している。
2 列目の井手口陽介(2025 年加入)は 「リーズ経験のテクニックと運動量」を持ち込み、扇原貴宏の 「テクニカルなビルドアップ参加」と組み合わさって、神戸の中盤厚みを増した。山口の 1 枚下に、井手口・扇原という質と量を兼ね備えた IH 2 枚が配置されることで、攻撃時には 4-3-3 の中盤底を厚くしながらも、相手のカウンターには確実に 1 枚が下がって対応する 2 重構造が成立する。
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セットプレーの精度 — 連覇の隠れた決定打
2023-24 連覇のもう 1 つの決定打が セットプレーの精度。CB のマテウス・トゥーレル(187cm)と山川哲史(185cm)、CF の大迫勇也(182cm)の 3 枚の長身ターゲットと、扇原貴宏のキック精度の組み合わせは、J1 でもトップクラス。2024 シーズンのセットプレーからの得点率は J1 屈指で、勝ち点を伸ばす重要な収益源となった。
| 戦術要素 | 神戸の特徴 | J1 平均との比較 |
|---|---|---|
| ボール保持率 | 50-55% | やや上回る(中位上) |
| セットプレー得点 | シーズン 12-15 点級 | J1 トップクラス |
| カウンター得点 | シーズン 8-10 点級 | J1 上位 |
| 失点パターン | サイド裏抜け+ポストアタック | SB 帰陣に課題 |
| クロス頻度 | シーズン平均 18-20 本 | J1 平均レベル |
守備構造とプレッシング戦術
神戸の守備構造は 「中盤の高い圧力 + センターラインのコンパクト維持」が基本。相手 CB がボールを持った時には 大迫+武藤の 2 トップが 2-3 人で囲い込むハイプレスを仕掛けるが、無理は追わず、奪えなければ素早く 4-4-2 ブロックへ移行する。「奪取地点を高く保つ志向」と「リスク管理」のバランスが吉田流の特徴。
弱点は SB の上下動による帰陣負荷。攻撃時に永戸勝也(左)と酒井高徳(右)が高い位置を取った後、相手のカウンターで素早く下がる必要があるが、酒井(34 歳)の身体的負担と永戸の判断ミスがもたらすサイド裏のスペースが、相手の決定機を生む構造になりがち。2025 シーズンの課題は、この SB 帰陣の精度向上。
イニエスタ時代の遺産と吉田流への進化
2018-2023 年のアンドレス・イニエスタ在籍時代に確立した 「ポジショナルプレー、ポゼッション、ビルドアップの哲学」は、現在の神戸の DNA として残る。しかし、純粋なバルサ流の遅攻だけでは J リーグでは勝ち切れないという認識から、吉田孝行監督は 2022 年から「縦速攻+セットプレー精度」を加える進化を進めた。
この戦術的進化が結実したのが 2023 年の J1 初優勝、2024 年の連覇。「世界水準の哲学」を「日本のリーグの実戦に最適化」するという、現代日本サッカー界の独特なモデルケースとして注目される。三木谷オーナーの長期投資(28 年目)と、戦術的柔軟性が結びついた成功例として、Jリーグ全体に影響を与えている。
2025-26 ヴィッセル神戸の戦術キーチェック 5 選
- 4-3-3 ベースの可変システム — 攻撃時 4-3-3/守備時 4-4-2、相手に応じた切替
- 大迫勇也+武藤嘉紀のローテーション — 縦の入れ替わり+中央への流れ込みで CB を撹乱
- 山口蛍 35 歳の中盤濾過 — DMF として運動量と読みで攻守の起点を維持
- セットプレー精度の高さ — 長身 3 枚+扇原貴宏キックで J1 トップクラスの得点源
- イニエスタ遺産+吉田速攻型の融合 — バルサ哲学を J リーグ実戦に最適化した現代モデル
ACL Elite と 3 連覇への戦術課題
2025-26 シーズンは ACL Elite 出場と J1 3 連覇の二正面作戦。アジアの強豪相手には、速攻型の縦パス精度と セットプレーの決定力が試される。最大の課題は 主力世代の高齢化(大迫 35 / 武藤 32 / 山口 35 / 酒井 34)と 佐々木大樹(25)など若手の台頭のバランス。
吉田孝行監督の 「世代交代を進めながら戦術的核を維持する」難しいバランス感覚が、2025 シーズンの最大の見どころ。バルサ流の哲学を継承しつつ、現代日本サッカーで勝ち続けるための独自モデルとして、神戸戦術は引き続き J リーグ全体の指標となる。
執筆: SportsPulse 編集部 / 公開: 2026-05-14
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