著者: SportsPulse 編集部 / 更新日: 2026年8月14日 / 編集部レビュー済み
結論:この記事で押さえる5つのこと
2026年8月12日、ラッセル・ウェストブルックが現役引退を発表しました。18シーズン、7球団。NBAというリーグの「1試合の見え方」そのものを変えてしまった選手が、コートを去りました。
訃報でも移籍でもない、ひとりの選手のキャリアの終わり。それでもこのニュースが世界中で大きく扱われたのは、彼が残した数字が「これまでのバスケットボールの常識では説明できない」種類のものだったからです。
先に結論から並べます。ここだけ読んでも、この引退が何を意味するかは伝わるはずです。
- 通算209回のトリプルダブルは、NBA史上最多です。2位のオスカー・ロバートソン(181回)の記録は1974年から47年間破られていませんでしたが、ウェストブルックは2021年5月10日にこれを更新し、そこからさらに27回積み上げて引退しました。
- 2016-17シーズンに「シーズン平均トリプルダブル」を達成し、MVPを受賞しました。平均31.6得点・10.7リバウンド・10.4アシスト。ロバートソンが1961-62に達成して以来、55年ぶり史上2人目でした。ただしこのMVPは満票ではありません(1位票は101票中69票)。ここは誤って流通している情報なので、後述します。
- 通算27,176得点は歴代14位、通算10,351アシストは歴代5位。そしてガードとして史上初めて通算9,000リバウンドを超えた選手でもあります(いずれも2026年8月14日時点/NBA.com公式)。得点・アシスト・リバウンドの3方向すべてで歴代上位に食い込んだガードは、他にほとんど例がありません。
- それでも優勝はありません。NBAファイナル出場は2012年の一度だけ。18年で7球団を渡り歩き、最後の6年はベンチスタートの季節も長く経験しました。記録と栄冠が一致しなかったキャリアです。
- そして209回という記録は、すでに射程に入られています。2位のニコラ・ヨキッチは198回。差はわずか11回で、ヨキッチは直近2シーズンとも平均トリプルダブルを記録しています。ウェストブルックの記録は「永遠」ではなく、むしろ次の時代への引き渡しの途中にあります。
以下、①引退の伝え方 ②2008年ドラフト ③OKCの爆発力 ④2017年のMVPシーズン ⑤209回の中身 ⑥18年の到達点、の順に、表とデータで整理していきます。
1. 引退はどう伝えられたか ―2026年8月12日、本人のSNSから
発表は記者会見でも球団リリースでもなく、本人のSNS投稿でした。
「Russell Westbrook, the NBA’s career leader in triple-doubles and the 2017 Kia MVP, announced Wednesday he’s retiring after 18 seasons during which he was selected to the league’s 75th anniversary team. The two-time scoring champion shared his decision on social media in a post featuring a video narrated by actor Michael B. Jordan where the guard never says a word.」
(NBA通算トリプルダブル記録保持者であり2017年MVPのラッセル・ウェストブルックが水曜、18シーズンでの引退を発表した。彼はリーグの75周年記念チームにも選ばれている。2度の得点王はSNSでその決断を明かした。投稿された動画は俳優マイケル・B・ジョーダンがナレーションを務め、ウェストブルック自身はひとことも話さない)
本人が投稿に添えた文はこれだけでした。
「Sometimes you don’t even know when you’ve already watched the end. You had to be there. And now it’s over.」
(時に、自分がもう終わりを見終えていたことにさえ気づかないものだ。その場にいなければ分からない。そして今、それは終わった)――出典:本人のX投稿(2026年8月12日)。BASKET COUNT「ラッセル・ウェストブルックが現役引退を発表、通算トリプル・ダブル数はNBA史上最多の209回」(2026年8月13日)の和訳を参照
19年目のオファーがなかったわけではありません。AP配信によれば、彼は現役続行の選択肢を持ったうえで身を引いています。最後の1試合は2025-26シーズン、サクラメント・キングスでのものでした。64試合に出場し、うち58試合が先発。平均15.2得点・6.7アシスト・5.4リバウンド。37歳のシーズンとしては、十分に主力の数字です。
※和文媒体のなかには2025-26の平均得点を「15.8得点」と記載しているものがありますが、NBA.com掲載のAP記事およびBasketball-Referenceはいずれも15.2得点です。本記事は後者を採用しています。
2. 2008年ドラフト4位 ―「シアトルに指名され、オクラホマシティでデビューした」男
キャリアの始まりからして、少し変わっています。
2008年のNBAドラフト。UCLAのガードだったウェストブルックを全体4位で指名したのは、シアトル・スーパーソニックスでした。しかしドラフトの直後にフランチャイズのオクラホマシティ移転が決まり、彼が最初にNBAの試合に出たときには、チーム名はすでに「オクラホマシティ・サンダー」になっていました。NBAデビューは2008年10月29日です。
つまり彼は、「消滅した球団に指名され、存在しなかった球団でデビューした」という、極めて珍しい経歴を持っています。そしてその新しい街で11シーズン、821試合を戦うことになります。
| 順位 | 選手 | 指名球団 | 出身 |
|---|---|---|---|
| 1位 | デリック・ローズ | シカゴ・ブルズ | メンフィス大 |
| 2位 | マイケル・ビーズリー | マイアミ・ヒート | カンザス州立大 |
| 3位 | O.J.メイヨ | ミネソタ・ティンバーウルブズ | 南カリフォルニア大 |
| 4位 | ラッセル・ウェストブルック | シアトル・スーパーソニックス | UCLA |
| 5位 | ケビン・ラブ | メンフィス・グリズリーズ | UCLA |
表:2008年NBAドラフト上位5指名(出典:各社報道/Basketball-Reference)。4位・5位はUCLAのチームメイト同士の連続指名だった。
ここで注目したいのは、上位4人のうち18シーズンを戦い抜いたのはウェストブルックだけだという事実です。1位のローズは膝の故障に苦しみ、2位・3位の2人はNBAに定着しきれませんでした。「4位指名」は当時、決して最高の評価ではありません。それでも最後まで残ったのは彼でした。
比較のポイントを押さえる
記事で整理したポイントを踏まえて、比べやすい候補の一つを確認できます。
3. OKCの爆発力 ―デュラント、ハーデンとの3年間
2010年代前半のオクラホマシティ・サンダーは、NBA史でもまれな若手集団でした。ケビン・デュラント、ラッセル・ウェストブルック、ジェームズ・ハーデン。のちに3人全員がMVPまたは得点王を経験することになる面々が、20代前半で同じロッカールームにいました。
頂点は2012年のNBAファイナルです。デュラントとウェストブルックは23歳、ハーデンは22歳。マイアミ・ヒートに敗れましたが、この年がウェストブルックにとって唯一のファイナル出場になります。以降10シーズン以上、彼が再びファイナルの舞台に立つことはありませんでした。
2016年の西カンファレンス・ファイナルでは、第7戦の末にゴールデンステイト・ウォリアーズに敗退。この敗戦の後にデュラントがウォリアーズへ移籍し、若き三本柱は完全に解体されます。
ここから先が、ウェストブルックというキャリアの本題です。
4. 2016-17 ―「平均トリプルダブル」とMVP
エースが去ったチームで、彼が翌シーズンに出した答えが、これでした。
平均31.6得点・10.7リバウンド・10.4アシスト。
得点はリーグ1位(2度目の得点王)。そのうえで、リバウンドとアシストも二桁。シーズンを通しての平均トリプルダブルは、オスカー・ロバートソンが1961-62シーズンに記録して以来、55年ぶり史上2人目の到達でした。
42回 ―シーズン最多トリプルダブル記録
同じシーズン、彼は1シーズン42回のトリプルダブルを記録しています。それまでの記録はロバートソンの41回(1961-62)でした。
42回目が決まったのは2017年4月9日、デンバー・ナゲッツ戦。50得点16リバウンド10アシストを記録したうえで、最後は約11メートル(36フィート)のブザービーターを沈めて106-105の勝利。記録更新と決勝弾が同じ1本になった、という劇的な形でした。
この年、2位のハーデンが20回、3位のレブロン・ジェームズが12回。2位の倍以上という、比較が成立しない数字です。
MVPは「満票」ではない ―ここは要注意
この2016-17シーズンについて、英語圏の一部のまとめ記事に「unanimous MVP(満票MVP)」という表現が見られます。これは誤りです。
2017年のMVP投票で、ウェストブルックが獲得した1位票は101票中69票。ジェームズ・ハーデンが22票、カワイ・レナードが9票、レブロン・ジェームズが1票を集めています。総得点では888点対753点で、決して僅差ではありませんが、満票ではありません。
NBA史上の満票MVPは限られた例しかなく、この年もそうではなかった。記録を語るときに、ここは正確にしておきたいところです。数字が派手なキャリアほど、「もっと派手な数字」に置き換えられて流通しやすいという典型例でもあります。
5. 209回 ―歴代最多トリプルダブルの中身
そしてキャリア通算です。NBA.comのヒストリー欄は、こう記録しています。
「Russell Westbrook has the most career triple-doubles in NBA history with 209. Westbrook has held the league record since May 10, 2021, when he recorded his 182nd triple-double to surpass Oscar Robertson’s long-standing mark of 181, which had stood since 1974.」
(ラッセル・ウェストブルックは通算209回で、NBA史上最多のトリプルダブル記録を持つ。彼は2021年5月10日、182回目のトリプルダブルを記録して1974年以来破られていなかったオスカー・ロバートソンの181回を上回って以降、この記録を保持している)――出典:NBA.com History「Most triple-doubles in NBA history」(2026年8月12日更新)
| 順位 | 選手 | 通算トリプルダブル | 状況 |
|---|---|---|---|
| 1 | ラッセル・ウェストブルック | 209 | 2026年8月引退 |
| 2 | ニコラ・ヨキッチ | 198 | 現役 |
| 3 | オスカー・ロバートソン | 181 | 殿堂入り |
| 4 | マジック・ジョンソン | 138 | 殿堂入り |
| 5 | レブロン・ジェームズ | 125 | 現役 |
| 6 | ジェイソン・キッド | 107 | 殿堂入り |
| 7 | ルカ・ドンチッチ | 90 | 現役 |
| 8 | ジェームズ・ハーデン | 82 | 現役 |
| 9 | ウィルト・チェンバレン | 78 | 殿堂入り |
| 10 | ドマンタス・サボニス | 68 | 現役 |
| 11 | ラリー・バード | 59 | 殿堂入り |
| 12 | ヤニス・アデトクンボ | 56 | 現役 |
表:NBA通算トリプルダブル歴代上位12人(出典:NBA.com History、2026年8月12日更新。確認日2026年8月14日)。100回を超えているのはウェストブルック、ヨキッチ、ロバートソン、マジック、レブロン、キッドの6人だけ。
この表で見ておきたいのは、100回超えが6人しかいないということです。NBAの歴史は80年近くあり、延べ数千人が出場しています。そのなかで100回に到達したのが6人。ウェストブルックの209回は、その6人のなかでもさらに突出しています。
【編集部算出】トリプルダブル率で見る
ここからは、公開されている数字をもとに編集部で計算したものです。
| 期間 | 出場 | トリプルダブル | 達成率(編集部算出) | 言い換えると |
|---|---|---|---|---|
| キャリア通算(18年) | 1,301試合 | 209回 | 約16.1% | 約6.2試合に1回 |
| 2016-17(MVPシーズン) | 81試合 | 42回 | 約51.9% | 約2試合に1回 |
| 2025-26(最終シーズン・37歳) | 64試合 | 6回 | 約9.4% | 約10.7試合に1回 |
表:編集部算出。出場試合数はBasketball-Reference、通算209回はNBA.com、2016-17の42回はNBA.com、2025-26の6回はNBA.com「climbs to No. 5 on all-time assist list」(2026年3月18日)およびBASKET COUNTの記載による。独自の取材・調査は行っていない。
注目すべきは最終シーズンの数字です。37歳、ベンチと先発を行き来しながらでも、10試合に1回はトリプルダブルを出していた。これはリーグ全体で見れば十分に上位の頻度で、NBA.comによれば2025-26シーズンの彼のトリプルダブル6回は、リーグ全体で5位タイに相当する数字でした。
【編集部算出】「5シーズン連続の平均トリプルダブル」だったという事実
もうひとつ、あまり語られない集計をしておきます。
ウェストブルックが「シーズン平均トリプルダブル」を達成したのは、公式には4シーズン(2016-17/2017-18/2018-19/2020-21)です。しかしこれを「シーズン単位」ではなく「期間の合算」で見ると、景色が変わります。
| 集計対象 | 出場 | 平均得点 | 平均リバウンド | 平均アシスト |
|---|---|---|---|---|
| 2015-16(OKC・80試合) | 80 | 23.5 | 7.8 | 10.4 |
| 2016-17(OKC・81試合) | 81 | 31.6 | 10.7 | 10.4 |
| 2017-18(OKC・80試合) | 80 | 25.4 | 10.1 | 10.3 |
| 2018-19(OKC・73試合) | 73 | 22.9 | 11.1 | 10.7 |
| 2020-21(WAS・65試合) | 65 | 22.2 | 11.5 | 11.7 |
| この5シーズン合算(編集部算出) | 379 | 約25.3 | 約10.2 | 約10.7 |
| 参考:2019-20(HOU・57試合)を含めた6シーズン | 436 | 約25.5 | 約9.9 | 約10.2 |
表:編集部算出。シーズン別の平均値(Basketball-Reference)に出場試合数を掛けて合算し、総出場試合数で割ったもの。元データが小数第1位で丸められているため、合算値には±0.1程度の誤差が生じ得る。2019-20はヒューストン移籍1年目で、チーム戦術上リバウンド関与とアシスト数が変化した年。
つまり、2015-16から2020-21までの5シーズン・379試合を1つのかたまりとして見ると、彼は「平均トリプルダブル」を続けていたことになります。約4年半、ほぼ毎晩、得点も二桁・リバウンドも二桁・アシストも二桁。これは「1シーズンだけ突出した」タイプの記録ではありません。
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この期間に彼が所属したのはオクラホマシティとワシントンで、チーム成績は決して安定していませんでした。記録が突出している時期と、チームが勝っている時期が一致しなかった――ウェストブルックのキャリアを語るときに避けて通れない構造が、この表には表れています。
6. 18年の到達点 ―通算成績と歴代順位
キャリア全体の数字を、シーズン別に並べます。
| シーズン | 所属 | 出場 | 得点 | リバウンド | アシスト | 主な受賞 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2008-09 | OKC | 82 | 15.3 | 4.9 | 5.3 | オールルーキー1st |
| 2009-10 | OKC | 82 | 16.1 | 4.9 | 8.0 | ― |
| 2010-11 | OKC | 82 | 21.9 | 4.6 | 8.2 | 初のオールスター/オールNBA 2nd |
| 2011-12 | OKC | 66 | 23.6 | 4.6 | 5.5 | オールNBA 2nd(ロックアウト短縮シーズン) |
| 2012-13 | OKC | 82 | 23.2 | 5.2 | 7.4 | オールNBA 2nd |
| 2013-14 | OKC | 46 | 21.8 | 5.7 | 6.9 | ―(膝の負傷で欠場が続いた年) |
| 2014-15 | OKC | 67 | 28.1 | 7.3 | 8.6 | 得点王/オールスターMVP/オールNBA 2nd |
| 2015-16 | OKC | 80 | 23.5 | 7.8 | 10.4 | オールスターMVP/オールNBA 1st |
| 2016-17 | OKC | 81 | 31.6 | 10.7 | 10.4 | MVP・得点王・オールNBA 1st |
| 2017-18 | OKC | 80 | 25.4 | 10.1 | 10.3 | アシスト王/オールNBA 2nd |
| 2018-19 | OKC | 73 | 22.9 | 11.1 | 10.7 | アシスト王/オールNBA 3rd |
| 2019-20 | HOU | 57 | 27.2 | 7.9 | 7.0 | オールNBA 3rd |
| 2020-21 | WAS | 65 | 22.2 | 11.5 | 11.7 | アシスト王 |
| 2021-22 | LAL | 78 | 18.5 | 7.4 | 7.1 | ― |
| 2022-23 | LAL→LAC | 73 | 15.9 | 5.8 | 7.5 | ―(シーズン途中でロサンゼルス内移籍) |
| 2023-24 | LAC | 68 | 11.1 | 5.0 | 4.5 | ― |
| 2024-25 | DEN | 75 | 13.3 | 4.9 | 6.1 | ― |
| 2025-26 | SAC | 64 | 15.2 | 5.4 | 6.7 | ―(最終シーズン) |
| 通算(18年) | 7球団 | 1,301 | 20.9 | 6.9 | 8.0 | MVP1回/オールスター9回/オールNBA9回 |
表:シーズン別平均成績(出典:Basketball-Reference、確認日2026年8月14日)。オールNBA9回の内訳は1stチーム2回・2ndチーム5回・3rdチーム2回。
通算の到達点をまとめると、次のようになります。
| 項目 | 数字 | NBA歴代での位置(2026年8月14日時点) |
|---|---|---|
| 通算トリプルダブル | 209回 | 歴代1位 |
| 通算得点 | 27,176点 | 歴代14位 |
| 通算アシスト | 10,351 | 歴代5位 |
| 通算リバウンド | 9,000超 | ガードとして史上初の9,000超 |
| 出場試合 | 1,301試合 | ― |
| 1シーズン最多トリプルダブル | 42回(2016-17) | 歴代1位 |
| 連続試合トリプルダブル | 11試合(2019年1月22日〜2月14日) | 歴代1位 |
| 主なタイトル | MVP1回(2017)/得点王2回/アシスト王3回/オールスター9回/オールスターMVP2回/NBA75周年記念チーム/2012年ロンドン五輪 金メダル・2010年世界選手権 金メダル | |
表:出典はNBA.com公式(通算順位・トリプルダブル関連・受賞歴)およびBasketball-Reference(出場試合・受賞回数)。歴代順位は現役選手の積み上げにより変動するため、確認日を明記している。
アシストについて、NBA.comは2026年3月の時点で次のように書いています。
「Westbrook is one of just two players in league history with at least 25,000 points and 10,000 assists. The other? LeBron James.」
(ウェストブルックは、リーグ史上で25,000得点・10,000アシストの両方に到達した2人のうちの1人だ。もう1人は誰か。レブロン・ジェームズである)――出典:NBA.com「Russell Westbrook climbs to No. 5 on all-time assist list」(2026年3月18日)
この「25,000得点+10,000アシスト」の2人という数字が、彼のキャリアの性質をいちばん端的に表しているかもしれません。得点者としても、パサーとしても、歴代の最上位グループにいた。どちらか一方に振り切ったのではなく、両方を同時にやり続けた18年でした。
7. 記録は残り、記録は抜かれる ―ヨキッチとの11回差
最後に、この記録の「これから」に触れておきます。
通算トリプルダブル2位のニコラ・ヨキッチは198回。差は11回です。そしてヨキッチは直近2シーズンとも、シーズン平均トリプルダブルを記録しています。健康であれば、2026-27シーズン中にこの記録が入れ替わる可能性は十分にあります。
皮肉なことに、ウェストブルックとヨキッチは2024-25シーズン、デンバー・ナゲッツでチームメイトでした。NBA.comによれば、この2人は「1シーズンのうちに、同じ試合で両者がトリプルダブルを記録する」ことを複数回やってのけた史上初のチームメイトです。記録を追い抜く側と追い抜かれる側が、同じコートで同じ夜にトリプルダブルを重ねていた。
209という数字が「NBA史上最多」でいられる時間は、そう長くないかもしれません。それでも、この記録には別の意味があります。ロバートソンの181回は1974年から47年間動かなかった。ウェストブルックが2021年にそれを破ってから、リーグには「トリプルダブルは狙って積み上げられるもの」という認識が広がった――そういう順番で、バスケットボールの常識は書き換わりました。
ヨキッチが198回まで来ているのも、ドンチッチが90回に達しているのも、その延長線上の出来事です。記録の保持者が交代しても、「1試合で3部門を二桁にする」というプレースタイルが標準的な選択肢になったこと自体は、もう戻りません。
よくある質問(FAQ)
Q1. そもそもトリプルダブルとは何ですか?
A. 1試合で、得点・リバウンド・アシスト・スティール・ブロックの5部門のうち3部門で二桁を記録することです。実際にはほとんどが「得点・リバウンド・アシスト」の3部門で、10点10リバウンド10アシスト以上が典型です。バスケットボールは通常、大きい選手がリバウンド、小さい選手がアシストを担当するため、ひとりで3部門を二桁にするのは構造的に難しい。だからこそ記録として扱われます。
Q2. 209回という記録は破られますか?
A. 破られる可能性は高いと見られています。2位のニコラ・ヨキッチが198回で、差は11回(2026年8月14日時点)。ヨキッチは直近2シーズンともシーズン平均トリプルダブルを記録しているため、故障がなければ2026-27シーズン中に更新される計算になります。ただしこれはあくまで現時点の数字からの見通しであり、確定した予定ではありません。
Q3. ウェストブルックは優勝経験がありますか?
A. NBAチャンピオンにはなっていません。NBAファイナル出場は2012年の1回のみで、オクラホマシティ・サンダーの一員としてマイアミ・ヒートに敗れました。その後18年目まで、ファイナルに戻ることはありませんでした。一方で代表チームでは、2012年ロンドン五輪と2010年世界選手権でいずれも金メダルを獲得しています。
Q4. 「2017年のMVPは満票だった」と読んだのですが?
A. 満票ではありません。2017年のMVP投票でウェストブルックが得た1位票は101票中69票で、ジェームズ・ハーデンが22票、カワイ・レナードが9票、レブロン・ジェームズが1票を集めています。総得点では888点対753点と差はありましたが、「満票」という記述は誤りです。英語圏のまとめ記事の一部にこの誤記が見られるため、注意してください。
Q5. 通算成績の「歴代◯位」は、なぜ記事によって違うのですか?
A. 現役選手が試合をするたびに順位が動くからです。たとえば通算アシストについて、ウェストブルックは2026年3月18日の試合で7位から一気に5位へ上がりました(マーク・ジャクソン、スティーブ・ナッシュを同じ試合で抜いた)。古い記事をそのまま参照すると「8位」「13位」といった過去の順位が出てきます。本記事の順位はすべて2026年8月14日時点のNBA.com公式表記に統一しています。
Q6. 日本でNBAの試合を観るには?
A. 2026-27シーズンの視聴経路は、配信サービスごとに条件が異なります。契約前に必ず各社の公式ページで対象試合・料金をご確認ください。当サイトの入口ページからも整理しています。
まとめ ―数字が先に立った18年
ラッセル・ウェストブルックのキャリアは、評価が割れ続けたキャリアでもありました。記録は歴代最上位、しかし優勝はない。派手な数字と、チームの勝敗が噛み合わない年が何度もあった。移籍のたびに役割が変わり、最後の数年はベンチから出る夜も多かった。
ただ、18年という時間と1,301試合という出場数は、それ自体が答えのようなものです。4位指名で入ってきた選手が、同期の誰よりも長くコートに立ち続け、リーグの記録簿の一番上に自分の名前を書いて去った。
そして、その名前はいずれ書き換えられます。ヨキッチが11回差に迫っている以上、そう遠くない未来に。それでも「1試合で3つの数字を同時に二桁にする」というプレーが、いつしかNBAの標準的な選択肢になったこと――その変化のきっかけが彼だったことは、記録が入れ替わっても残ります。
本人が最後の動画で問われた「最も誇りに思うことは何か」という質問に、彼は答えませんでした。18年分の答えは、すでに記録簿に書いてあるということなのだと思います。
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- すぽぱる入門「トリプルダブルって何がすごいの?」(近日公開)
出典(確認日:2026年8月14日)
- NBA.com(AP配信)「Russell Westbrook, former NBA MVP and 9-time All-Star, announces retirement after 18 seasons」(2026年8月13日更新)― 引退発表の日付・方法(本人SNS/マイケル・B・ジョーダンのナレーション動画)、2008年ドラフト4位シアトル指名、OKC11シーズン、最終所属サクラメント、209回・最後のトリプルダブルは3月15日、ヨキッチ198回、2度の得点王・3度のアシスト王・2度のオールスターMVP・2012年ロンドン五輪金メダル・NBA75周年記念チーム、2025-26は64試合で平均15.2得点6.7アシスト
https://www.nba.com/news/russell-westbrook-retires-nba-after-18-seasons - NBA.com History「Most triple-doubles in NBA history」(2026年8月12日更新)― 通算209回=歴代1位、2021年5月10日に182回目でロバートソン(181回・1974年から保持)を更新、歴代上位12人の一覧、1シーズン最多42回(2016-17)、連続試合最多11試合(2019年1月22日〜2月14日)
https://www.nba.com/news/most-triple-doubles-in-nba-history - NBA.com「Russell Westbrook climbs to No. 5 on all-time assist list」(2026年3月18日)― 通算アシスト歴代5位到達(ジャクソン・ナッシュを同一試合で抜いた)、上位5人の数字、25,000得点+10,000アシストはレブロンと2人のみ、ガード史上初の通算9,000リバウンド超、2025-26のトリプルダブル6回はリーグ5位
https://www.nba.com/news/russell-westbrook-5th-assist-list - NBA.com「Russell Westbrook breaks Oscar Robertson’s triple-double record」― 2021年5月10日の記録更新の詳細
https://www.nba.com/news/russell-westbrook-breaks-oscar-robertsons-triple-double-record - Basketball-Reference「Russell Westbrook Stats」― シーズン別平均成績(18シーズン)、通算1,301試合・20.9得点・6.9リバウンド・8.0アシスト、球団別内訳(OKC 821試合/HOU 57/WAS 65/LAL 130/LAC 89/DEN 75/SAC 64)、受賞歴(オールスター9回・得点王2回・アシスト王3回・オールNBA9回・オールスターMVP2回・2016-17 MVP・NBA75周年記念チーム)、2008年ドラフト全体4位シアトル・スーパーソニックス指名、NBAデビュー2008年10月29日
https://www.basketball-reference.com/players/w/westbru01.html - ESPN「Russell Westbrook caps historic season with 42nd triple-double」(2017年4月9日)― 42回目のトリプルダブル(50得点16リバウンド10アシスト)と36フィートのブザービーター、106-105でナゲッツに勝利、2位ハーデン20回・3位レブロン12回
https://www.espn.com/nba/story/_/id/19120414/oklahoma-city-thunder-russell-westbrook-sets-nba-record-42nd-triple-double-season - Bleacher Report「NBA MVP Voting Results: Russell Westbrook Wins by 135 Points over James Harden」(2017年)― 2017年MVP投票の内訳(1位票101票中69票、ハーデン22票、レナード9票、レブロン1票/総得点888対753)=「満票ではない」ことの根拠
https://bleacherreport.com/articles/2718180-nba-mvp-voting-results-russell-westbrook-wins-by-135-votes-over-james-harden - BASKET COUNT「【NBA】ラッセル・ウェストブルックが現役引退を発表、通算トリプル・ダブル数はNBA史上最多の209回」(2026年8月13日)― 引退声明の和訳、7球団の変遷、デュラント・ハーデンとの若き三本柱、2012年ファイナル・2016年西カンファレンス決勝第7戦での敗退、最終シーズンのトリプルダブル6回(※2025-26の平均得点は「15.8」と記載され、NBA.com/Basketball-Referenceの「15.2」と差がある。本記事は後者を採用)
https://basket-count.com/article/detail/270727 - NBA.com「Nikola Jokić, Russell Westbrook make triple-double history in Nuggets’ victory」― デンバーでの2人が「同一試合で両者トリプルダブル」を1シーズンに複数回記録した史上初のチームメイトである件
https://www.nba.com/news/jokic-westbrook-triple-double-history - Forbes「Russell Westbrook’s NBA Triple-Double Record May Not Last Long」(2026年8月13日)― ヨキッチによる記録更新の見通し(※見通しは報道・分析であり確定事項ではない)
https://www.forbes.com/sites/timcasey/2026/08/13/russell-westbrooks-nba-triple-double-record-may-not-last-long/ - Tankathon「2008 NBA Draft Results」/Basketball-Reference「2008 NBA Draft」― 2008年ドラフト上位5指名の球団・選手
https://www.basketball-reference.com/draft/NBA_2008.html
※本記事の「編集部算出」と明記した表は、上記の公開データ(Basketball-Reference のシーズン別平均、NBA.com のトリプルダブル回数)を編集部が再集計したものです。元データが小数第1位で丸められているため、合算値には±0.1程度の誤差が生じ得ます。独自の取材、調査、アンケートは実施していません。
※歴代順位は現役選手の記録の積み上げにより変動します。本記事の順位はすべて2026年8月14日時点のものです。最新の数字は必ずNBA公式のスタッツページでご確認ください。
執筆: SportsPulse 編集部 / 公開: 2026-08-14
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最終更新日: 2026年8月15日 | 編集方針
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| 日付 | 変更内容 |
|---|---|
| 2026年8月15日 | 初回公開 |
✅ ファクト再検証
最終検証日:2026年8月15日
SportsPulse 編集部が公開情報をもとに内容を確認しています。情報は確認時点のものです。最新情報は各公式サイトをご確認ください。
なぜNBAは“拡張”に動くのか ―ラスベガス/シアトル新球団と、参入料70〜100億ドルの経済学