著者: SportsPulse 編集部 / 更新日: 2026年8月15日 / 編集部レビュー済み
2026年8月12日、NBAロサンゼルス・レイカーズの支配持分が、ジョシュ・クシュナー氏とボブ・アイガー氏を中心とするグループに売却されることで合意したと、ESPNをはじめとする米主要メディアが一斉に報じました。報じられた評価額は125億ドル。米プロスポーツのフランチャイズ取引としては史上最高額です。1ドル=159円(2026年8月14日時点の対ドル円相場の概算)で換算すると約1兆9,900億円、ざっくり約2兆円という規模になります。
ただし、ここでいちばん大事な前提を先に置きます。この取引はまだ「完了」していません。NBAのフランチャイズ持分の移転は、リーグ理事会(Board of Governors)の承認を経てはじめて効力を持ちます。現時点は「合意・承認待ち」の段階です。本記事では最後までこの区別を崩さずに書きます。(NBAやBリーグの基礎情報はバスケットボールHUBにまとめています。)
結論:この記事で押さえる5つのこと
- 「売却完了」ではなく「売却合意」。NBA憲章の規定により、持分移転は理事会(Board of Governors)の4分の3以上の賛成で承認されて初めて効力を持ちます。30球団体制なら23票が必要です。
- 125億ドルは「報道値」であり、公式に確定した数字ではありません。初報段階では「120億ドル超」という丸めた表記も流通しました。円換算は為替次第で数千億円動きます(本記事は1ドル=159円/2026年8月14日で統一)。
- 価格を押し上げた最大の構造要因は全国放映権の巨大化。NBAは2025-26シーズンから2035-36シーズンまでの11年契約をディズニー/NBCユニバーサル/アマゾンと結んでおり、総額は報道ベースで約760億ドル規模とされます。球団はその配分を受け取る「権利証」に近い性格を強めています。
- 供給が増えない=希少性。NBAは30球団のまま30年以上増えていません。シアトル/ラスベガスへの拡張は「検討中」であり、コミッショナー自身が「実現しない可能性もある」と明言しています。この「増えなさ」が既存球団のプレミアムを支えています。
- 売り手は約14か月前に約100億ドル評価で取得したばかり。この短期での再売却は、球団が「持って楽しむ資産」から「値がつく金融資産」へ移りつつあることを、いやおうなく示しています。
1. 何が起きたのか——時系列で整理する
まず事実関係を、日付とソースの種別(一次/報道)を分けて並べます。レイカーズは2026年に入ってからの1年半で、実は2回オーナーが替わろうとしています。
| 時期 | できごと | 金額(報道値) | 状態 |
|---|---|---|---|
| 1979年 | ジェリー・バス氏がレイカーズを取得(フォーラム、NHLキングスなどを含む一括取得) | — | 完了 |
| 2013年〜 | ジェリー・バス氏の死去後、ジーニー・バス氏がガバナーとして統括 | — | — |
| 2025年6月 | バス family がマーク・ウォルター氏へ支配持分を売却することで合意 | 約100億ドル評価 | 合意 |
| 2025年10月30日 | NBA理事会がウォルター氏への持分移転を承認。バス家は約15%を保持、ジーニー・バス氏はガバナー継続 | 同上 | 承認・完了 |
| 2026年8月12日 | ウォルター氏がクシュナー氏+アイガー氏のグループへ支配持分を売却することで合意と報道。ドジャース、WNBAスパークスは対象外 | 125億ドル | 合意・承認待ち |
| 2026年8月15日(本記事執筆時点) | NBA理事会による採決は未実施 | — | 未確定 |
報道の骨格を担ったのはESPNのラモナ・シェルバーン記者による関係者情報でした。CBSスポーツはその内容を受けて、次のように整理しています。
“The Los Angeles Lakers are being sold again. Barely a year after Los Angeles Dodgers owner Mark Walter purchased the historic franchise for a then-record price of $10 billion, he is selling it to Josh Kushner and Bob Iger for $12.5 billion, according to ESPN. … Reportedly, neither the WNBA’s Los Angeles Sparks nor the Dodgers are part of the sale, which still needs to be approved by the NBA’s board of governors.”
(和訳)「ロサンゼルス・レイカーズが再び売却される。ドジャースのオーナーであるマーク・ウォルター氏が当時の最高額100億ドルでこの歴史あるフランチャイズを買収してからわずか1年あまりで、彼はジョシュ・クシュナー氏とボブ・アイガー氏へ125億ドルで売却する——ESPNの報道による。……報道によれば、WNBAのロサンゼルス・スパークスもドジャースも今回の売却対象には含まれておらず、本件は依然としてNBA理事会の承認を必要とする。」
出典(報道/CBSスポーツ、ESPNの関係者情報を引用したもの): CBS Sports「Lakers sold for record-breaking $12.5 billion」
買い手側からは声明が出ています。こちらは当事者の発言なので、報道よりは一次性の高い情報として扱えます。ただし声明のなかにも「承認を得れば」という含みがある点は読み落とさないでください。
“As lifelong NBA fans, we are deeply honored for the opportunity to become stewards of the Los Angeles Lakers, one of the most iconic sports franchises in the world. We have immense respect for the leadership and vision of Jerry and Jeanie Buss. Our long-term commitment is to build on that foundation, compete at the highest level, and serve this extraordinary team, its fans, and the city of Los Angeles.”
(和訳)「生涯のNBAファンとして、世界で最も象徴的なスポーツフランチャイズのひとつであるロサンゼルス・レイカーズの受託者(stewards)となる機会を得たことを深く光栄に思う。ジェリー・バス氏とジーニー・バス氏のリーダーシップとビジョンに多大な敬意を抱いている。我々の長期的なコミットメントは、その土台の上に積み上げ、最高レベルで戦い、この特別なチームとファン、そしてロサンゼルスの街に尽くすことだ。」
出典(当事者声明/CBSスポーツ掲載): CBS Sports/同趣旨の報道: CNN Business
なお、買い手グループの人物関係については各社が報じていますが、本記事は制度とビジネスの分析に限定し、政治的な評価や人物評価には踏み込みません。
2. 「125億ドル」という数字の読み方
2-1. 媒体間で表記が割れている
この案件でまず注意すべきは、報じられた金額が媒体・時点によって揺れていることです。ESPNの初報にあたるポストは「a record breaking price over $12 billion(120億ドルを超える記録的価格)」という表現でした。その後に出た本記事では「$12.5B」と具体化され、CNN、CNBC、Forbes、ワシントン・ポスト、Variety、ボストン・グローブなどが125億ドルで揃いました。一方でNBCニュースの見出しなど、初報の丸め表記のまま「$12 billion」を採る媒体も残りました。
つまり「120億ドル」と「125億ドル」は矛盾ではなく、速報時点の丸めと確報の差と読むのが妥当です。ただし、いずれにせよこれは関係者情報ベースの報道値であり、NBAもレイカーズも公式に金額を発表していません。理事会承認の際に条件が調整される可能性も、原理的には残ります。
2-2. 円換算は「レートと日付」なしには意味がない
日本語メディアで「1兆8,000億円」「2兆円」と表記が割れるのは、単に為替をいつの時点で当てているかが違うからです。125億ドルという同じ数字でも、換算レートが変われば数千億円動きます。
| 換算レート(1ドル) | 125億ドルの円換算 | 備考 |
|---|---|---|
| 144円 | 約1兆8,000億円 | 「1.8兆円」表記が成立するレート水準 |
| 150円 | 約1兆8,750億円 | — |
| 159円 | 約1兆9,875億円(≒約2兆円) | 本記事の統一レート(2026年8月14日時点) |
| 165円 | 約2兆625億円 | — |
本記事では以降、1ドル=159円(2026年8月14日時点)で統一し、すべて「概算」と明示します。これは各取引が実際に決済されたときのレートではなく、比較のために同じ物差しを当てているだけである点にご注意ください。
2-3. 【編集部集計①】14か月で+25%、年率換算で約+21%
ここから先は編集部が公開情報を四則演算しただけの集計です。取材や独自調査に基づくものではありません。
■ 編集部集計①:売り手側の単純リターン
- 取得(2025年6月合意・2025年10月30日承認完了): 約100億ドル評価
- 売却合意(2026年8月12日): 125億ドル(報道値)
- 差額 = +25億ドル(約3,975億円/1ドル=159円換算)
- 上昇率 = 12.5 ÷ 10.0 − 1 = +25.0%
- 合意から合意まで約14か月とすると、年率換算 = 1.25(12/14) − 1 ≒ +21.1%/年
- 承認完了(2025年10月30日)から数えると保有期間は約9.5か月。年率換算 = 1.25(12/9.5) − 1 ≒ +32.6%/年
算出根拠: 報道された評価額のみを用いた単純計算です。取得・売却にかかる手数料、税、負債(レバレッジ)、球団運営で発生した損益、バス家の残存持分(約15%)の扱いなどは一切考慮していません。したがって「オーナーの実際の投資収益率」ではありません。あくまで市場が付ける値札の変化率を見るための指標です。
この数字が示すのは、レイカーズという特定球団の話というより、「NBA球団の値札が、1年でこれだけ動きうるフェーズに入った」という事実です。S&P500の長期平均リターンが年率10%前後であることを思えば、21%は相当に大きい。しかも球団は年に一度しか売買が起きない、極端に流動性の低い資産です。
比較のポイントを押さえる
記事で整理したポイントを踏まえて、比べやすい候補の一つを確認できます。
3. なぜ上がるのか①——全国放映権の巨大化
球団価値を押し上げている最大の構造要因は、間違いなく全国放映権(national media rights)です。NBAは2024年7月、2025-26シーズンからの新契約を公式に発表しています。以下はリーグ公式リリースの原文で、一次情報にあたります。
“The National Basketball Association (NBA) today announced the renewal of its partnership with The Walt Disney Company and new agreements with NBCUniversal (NBCU) and Amazon under which ABC/ESPN, NBC/Peacock and Prime Video will telecast NBA games beginning with the 2025-26 season and running through the 2035-36 season. … Approximately 75 regular-season games will be on broadcast TV each season, up from the minimum of 15 games under the current agreement.”
(和訳)「NBAは本日、ウォルト・ディズニー・カンパニーとのパートナーシップ更新、およびNBCユニバーサル、アマゾンとの新契約を発表した。これによりABC/ESPN、NBC/Peacock、Prime Videoが2025-26シーズンから2035-36シーズンまでNBAの試合を放送する。……レギュラーシーズンのうち約75試合が地上波で放送される。現行契約における最低15試合から増加する。」
出典(一次情報/NBA公式リリース): NBA.com「NBA signs new 11-year media agreements…」(2024年7月24日)
ここで重要なのは、この公式リリースには総額が書かれていないことです。「11年・約760億ドル」「年平均約69億ドル」「前契約比で年額約160%増」という数字は、すべて報道値です。パッケージの内訳(ディズニー年約26億ドル、NBCU年約25億ドル、アマゾン年約18億ドル規模)も同様に報道ベースの推計です。
とはいえ、公式に確定している「条件面」だけでも、金額の桁が変わったことは十分に読み取れます。地上波での放送が最低15試合から約75試合へ、5倍に増える。NBCがオールスターの本拠地になる。カンファレンス・ファイナルがNBCとアマゾンでローテーションする。露出量そのものが構造的に膨らむ設計になっているわけです。
3-1. 【編集部集計②】買収額は「全国放映権配分の何年分」か
■ 編集部集計②:放映権収入から見た「元の取り方」
- 全国放映権の年平均額(報道値): 約69億ドル
- 30球団で均等配分すると仮定 → 1球団あたり年間約2億3,000万ドル(約366億円/1ドル=159円換算)
- 買収額125億ドル ÷ 2.3億ドル ≒ 約54年分
- 参考: セルティックス61億ドルなら約26.5年分、シーホークス96.1億ドル(NFL・放映権規模が異なるため単純比較不可)
算出根拠: 報道された年平均額を球団数で単純に割ったものです。実際の配分方式(リーグ収入プールからの分配、収益分配制度、地元放映権、スポンサー、チケット、アリーナ、不動産などの他収入)は一切織り込んでいません。「全国放映権だけで元を取る」という前提自体が非現実的であり、この数字は「放映権が球団価値のどのくらいの厚みを支えているか」を体感するための目安に過ぎません。
54年分。これを「高すぎる」と読むこともできますが、買い手はそうは見ていないはずです。なぜなら、彼らが買っているのは「現在の放映権」ではなく「次の契約、その次の契約」だからです。11年契約は2035-36シーズンで切れます。そのとき、映像配信市場がどうなっているか。ライブスポーツは、録画で観られない・広告がスキップされない・世界中で同時に消費される、数少ないコンテンツです。ストリーミング各社が争奪戦を続ける限り、次の更新でも単価が上がるだろう——という期待が、価格に織り込まれています。
4. なぜ上がるのか②——増えない供給(希少性)
2つ目の要因は、身も蓋もない話ですが「数が増えないから」です。NBAは1995年のトロント/バンクーバー参入以降、30球団のまま30年以上動いていません。世界で最も注目されるバスケットボールリーグの席が30しかなく、そのうち「ロサンゼルスのレイカーズ」は1つしかない。ここに価格がつかないほうが不自然です。
では拡張(エクスパンション)はどうか。ここが最も誤報の出やすいポイントです。NBAは拡張を決定していません。2026年3月25日の理事会で「検討する」ことを決議した段階です。アダム・シルバー コミッショナーの発言をNBA公式サイトが記録しています。
“There is absolutely a chance expansion may not happen. … It’s also possible we could expand to one market. Maybe two, or no markets.”
(和訳)「拡張が実現しない可能性は絶対にある。……1市場だけ拡張するという可能性もある。2市場かもしれないし、ゼロ市場かもしれない。」
出典(一次情報に準じる/NBA公式サイトによる会見記録): NBA.com「NBA commissioner Adam Silver on league’s plan to explore expansion in Seattle and Las Vegas」(2026年3月25日)
同じ記事は、NBAが投資銀行PJTパートナーズを戦略アドバイザーとして起用したこと、2026年末までに前に進める用意を整えたい意向であること、そして参入金7〜10億ドル…ではなく「70〜100億ドル($7-10 billion)」という観測はあくまで推測(conjecture)にとどまることを明記しています。2028-29シーズン開幕という時期も「speculated(推測された)」と書かれています。
ここに、今回の案件の面白い交差点があります。クシュナー氏とアイガー氏は、もともとラスベガス拡張球団の獲得プロセスに参加していたとCBSスポーツやCNNが報じています。つまり「新しい席を70〜100億ドルで買う」ルートを検討していた買い手が、「既にある最上位の席を125億ドルで買う」ルートに乗り換えた、という構図です。アイガー氏自身が米メディアの取材に「話は3日でまとまった」と語ったとCBSスポーツは伝えています。
これは価格形成の観点で示唆的です。新規参入枠の想定価格(70〜100億ドル)が、既存トップ球団の価格の「床」を押し上げている可能性がある。もし新設球団に80億ドル払う人がいるなら、歴史・スター・LA市場・グローバルなブランドを備えたレイカーズが125億ドルであることに、少なくとも内的整合性はあります。
5. なぜ上がるのか③——買い手の裾野が広がった
3つ目は制度面の変化です。かつてNBAは、機関投資家によるオーナーシップ参加を厳しく制限していました。しかし近年、プライベート・エクイティ(PE)ファンドなどの受動的少数持分を段階的に解禁しています。報道ベースでの主な条件は次の通りです。
| 項目 | 内容(報道ベース) | 意味するところ |
|---|---|---|
| 1ファンドの1球団への上限 | 持分20%まで | 支配権は渡さない設計 |
| 1ファンドが保有できる球団数 | 従来5球団 → 2025年12月3日発効で最大8球団に拡大 | 資本の入口がさらに広がった |
| 球団側の売却上限 | 機関投資家への売却は球団エクイティの30%まで | 「半分は個人オーナー」の原則維持 |
| ファンド側の資格 | 運用資産7.5億ドル以上/当該球団投資はファンド資産の25%以下(例外あり) | 体力のある投資家に限定 |
| ガバナンス権 | なし(純粋な財務投資) | 経営には口を出せない |
なぜこれが価格に効くのか。「出口(イグジット)」が用意されたからです。かつては球団の少数持分を買っても、売りたいときに買い手が見つからない、極端に流動性の低い資産でした。PEマネーが常時待機していれば、少数持分は売れる。売れるなら、買うときの心理的ハードルも下がる。流動性が上がれば、資産価格は上がる——金融の基本則がそのまま働いています。
加えて、NBA憲章はクロスオーナーシップ(他球団への持分保有)を原則禁止しています。以下は憲章の該当条文です。
“No Owner, or director, officer, manager, coach, employee, agent or representative of an Owner, shall (i) hold a position with, or directly or indirectly exercise control or any management authority over any other Member or Membership, or (ii) hold any direct or indirect financial interest in any other Member or Membership, unless … such interest is expressly approved … or … such interest represents less than one percent (1%) of any outstanding class of securities that are publicly traded …”
(和訳)「いかなるオーナー(またはその役員・支配人・コーチ・従業員・代理人・代表者)も、(i) 他のメンバー(球団)において地位を有し、または直接・間接に支配ないし経営権を行使してはならず、(ii) 他のメンバーに直接・間接の財務的持分を保有してはならない。ただし……当該持分が明示的に承認された場合、または……公開市場で取引される証券の1%未満である場合を除く。」
出典(一次情報/NBA憲章・付則の公開テキスト(2019年版)): NBA Constitution and By-Laws, Article 3(c)(※憲章は随時改正され、最新版全文は一般公開されていません。条文番号・文言は公開されている版に基づきます)
この規定があるため、クシュナー氏はマイアミ・ヒートに保有していた少数持分を手放す必要がある、とESPNなどが報じています。つまり承認プロセスは「お金を払えば終わり」ではなく、既存の資本関係を整理する作業を伴います。
6. 前例で読む——近年の売却額ランキング
「125億ドルは異常値なのか、トレンド上の点なのか」を判断するには、前例を並べるのが早い。北米プロスポーツにおける近年の主な球団売却額(いずれも報道値)を、同一レート(1ドル=159円/2026年8月14日)で円換算して並べます。
| 順位 | 球団 | リーグ | 金額(報道値) | 円換算(概算) | 時期・状態 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ロサンゼルス・レイカーズ | NBA | 125億ドル | 約1兆9,875億円 | 2026年8月/合意・承認待ち |
| 2 | ロサンゼルス・レイカーズ(前回) | NBA | 約100億ドル | 約1兆5,900億円 | 2025年6月合意/2025年10月30日承認 |
| 3 | シアトル・シーホークス | NFL | 約96.1億ドル | 約1兆5,280億円 | 2026年/合意・リーグ承認手続き中と報道 |
| 4 | ボストン・セルティックス | NBA | 61億ドル (2028年までの完全支配移行で総額最大73億ドルとの報道) |
約9,699億円 | 2025年/NBA承認・クローズ済み |
| 5 | ワシントン・コマンダーズ | NFL | 60.5億ドル | 約9,620億円 | 2023年/完了 |
| 6 | フェニックス・サンズ/マーキュリー | NBA | 40億ドル | 約6,360億円 | 2023年/完了 |
※円換算はすべて1ドル=159円(2026年8月14日時点)で統一した概算です。各取引が実際に成立・決済された時点の為替レートではありません。比較用の物差しとしてお読みください。※金額はいずれも報道値であり、リーグや当事者が公式に発表した確定額ではないものを含みます。
6-1. 【編集部集計③】記録更新のペースは年率+27%
■ 編集部集計③:北米プロスポーツ「史上最高額」の更新速度
- 2023年: コマンダーズ 60.5億ドル(当時の北米記録)
- 2025年: セルティックス 61億ドル(NBA記録かつ北米記録を更新)
- 2025年: レイカーズ 約100億ドル(大幅更新)
- 2026年: シーホークス 約96.1億ドル(NFL記録)
- 2026年: レイカーズ 125億ドル(合意ベースで北米記録)
- 2023年→2026年で 12.5 ÷ 6.05 ≒ 2.07倍
- 3年間の年率換算 = 2.07(1/3) − 1 ≒ +27.4%/年
算出根拠: 各年の「その時点での北米プロスポーツ最高額」を報道値で拾い、単純な複利換算をしたものです。リーグをまたいだ比較であり、収益構造・放映権規模・スタジアム所有形態・不動産の有無はまったく異なります。異なる商品の値札を並べているに過ぎない点にご留意ください。「記録更新のテンポが速まっている」という定性的な傾向を数値化した目安です。
参考までに、球団評価額の推計を出しているスポーティコの2025年版では、NBA30球団の首位はゴールデンステート・ウォリアーズの113.3億ドル、レイカーズは100億ドル、ニックスが98.5億ドルでした。今回の取引価格125億ドルは、外部評価機関の推計値さえ上回っています。ここに「実取引はモデル値を超える」という、希少資産に典型的な現象が出ています。
7. 承認プロセス——ここからが本番
では、この合意は何を経て「完了」になるのか。NBA憲章の該当条文が明快です。
“Upon receipt of an application requesting approval of a transfer, the Commissioner shall conduct such investigation as the Commissioner deems appropriate. Upon the completion of the investigation, the Commissioner shall submit the proposed transfer to the Members for approval … A transfer shall only become effective if approved by the affirmative vote of not less than three-fourths (3/4) of all Governors at a meeting duly called for such purpose.“
(和訳)「持分移転の承認申請を受領した後、コミッショナーは適切と判断する調査を行う。調査完了後、コミッショナーは当該移転案をメンバー(各球団)に承認のため付議する。……移転は、そのために正式に招集された会議において全ガバナーの4分の3以上の賛成投票により承認された場合にのみ、効力を生じる。」
出典(一次情報/NBA憲章・付則の公開テキスト): NBA Constitution and By-Laws, Article 5(f)
同じArticle 5は、実務上のステップも定めています。整理すると次の通りです。
| ステップ | 根拠条文 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 申請 | Art. 5(a) | 合意成立後速やかに、球団がコミッショナー宛に書面で承認申請 |
| ② 情報提出 | Art. 5(b) | 譲渡側・譲受側とも、コミッショナーが求める情報(機密含む)を提出する義務 |
| ③ 遵守誓約 | Art. 5(c) | 承認された場合に憲章・付則・規則・決議に拘束される旨の拘束的合意を申請書に含める |
| ④ 費用預託 | Art. 5(d) | 10%以上または支配権が動く移転は、5万ドルの認証小切手を添付(調査費用に充当) |
| ⑤ 調査 | Art. 5(f) | コミッショナーが適切と判断する調査を実施。委員会(Art. 5(g))が補佐 |
| ⑥ 採決 | Art. 5(f) | 正式招集された会議で全ガバナーの3/4以上の賛成。30球団なら23票 |
| ⑦ 効力発生 | Art. 5(f) | 承認をもって移転が効力を生じる |
前例を見ると、この工程は数週間から数か月を要します。ウォルター氏のケースでは、2025年6月の合意から承認完了(2025年10月30日)まで約4か月半かかりました。セルティックスも2025年3月の合意から承認まで数か月を要しています。次回の理事会は9月にニューヨークで開催される見込みと報じられていますが、そこで採決されるかどうかは現時点で確定していません。(実際、2025年には「セルティックスとレイカーズの売却案件は理事会の議題に入っていない」と報じられた回もありました。)
また、売り手であるウォルター氏の関連事業をめぐっては、米当局による調査が進行中であるとブルームバーグやウォール・ストリート・ジャーナルが報じています。調査は継続中で、当局による認定や結論は示されていません。本記事はこの点について評価を行いませんが、承認プロセスの所要時間に影響しうる外部要因として、事実関係のみ記録しておきます。
8. この構造は「対岸の火事」なのか
ここまでの3つの押し上げ要因——①巨大な全国放映権、②増えない供給、③広がった買い手の裾野——を並べると、あることに気づきます。これは「アメリカだから」の話ではなく、リーグ設計の一般解だということです。
- 放映権を「リーグが一括で売り、球団に分配する」設計にすると、球団の価値は個別の人気ではなくリーグ全体の価値に連動する。だから弱いチームでも値がつく。
- 参入を絞る(昇降格がない/拡張が稀)と、席そのものが資産になる。オーナーは「降格して価値が消える」リスクを負わない。
- 持分の流通ルールを整えると、資本が入ってくる。出口があるから入口が広がる。
日本の文脈で言えば、Bリーグが2026-27シーズンから移行した「B.革新」の3層制も、この論理の一部を輸入した制度設計です。成績由来の入替を残しつつ、参入要件を売上・観客数・アリーナで規定する。これは「席の価値を守りながら、席を増やす条件を透明化する」という発想にほかなりません。NBAの125億ドルは、その延長線上にある未来像のひとつの極として読むことができます。なお、Bリーグ・NBA・日本代表それぞれの読みどころはバスケットボールHUBに集約しています。
もちろん、リスクもあります。
| リスク | 内容 | 効いてくる時期 |
|---|---|---|
| 放映権の再更新リスク | 2035-36シーズン後の次期契約が現行水準を下回れば、前提が崩れる | 2030年代前半に交渉開始 |
| 拡張の希薄化 | 32球団化すれば1球団あたりの分配比率は下がる(参入金の分配で相殺される設計だが) | 2026年末に方向性判断の見込み |
| 金利・資金調達環境 | 高額買収はレバレッジ依存度が高まりやすく、金利上昇は買い手の体力を削る | 常時 |
| 視聴行動の変化 | 若年層のライブ視聴離れ、ハイライト消費への移行 | 中長期 |
| 承認プロセスの不確実性 | 本件も含め、理事会承認は形式ではなく実質審査。条件変更や遅延はありうる | 本件について現在進行中 |
FAQ
Q1. 結局、レイカーズは売れたのですか?
A. 「売却で合意した」段階であり、完了していません。NBA憲章Article 5(f)により、持分移転は理事会(Board of Governors)の全ガバナー4分の3以上(30球団なら23票)の賛成で承認されて初めて効力を生じます。2026年8月15日時点で採決は行われていません。日本語メディアの「売却」「買収」という見出しは、この承認待ちの段階を含んだ表現なので、注意して読んでください。
Q2. 「120億ドル」と「125億ドル」、どちらが正しいのですか?
A. 確認できた範囲では、ESPN・CBSスポーツ・CNN・CNBC・Forbes・ワシントン・ポストなど多くが125億ドルで揃っています。「120億ドル(over $12 billion)」は速報段階の丸め表記で、NBCニュースの見出しなど一部に残りました。ただしどちらも関係者情報に基づく報道値で、NBAや当事者が公式に金額を発表したものではありません。
Q3. 円で言うといくらですか?
A. 換算レートと換算日を指定しないと答えが定まりません。本記事は1ドル=159円(2026年8月14日時点)で統一し、125億ドル ≒ 約1兆9,875億円(約2兆円)としています。1ドル=144円なら約1.8兆円、165円なら約2.06兆円です。日本語記事で「1.8兆円」「2兆円」と表記が割れるのは、多くの場合この換算レートの違いによるものです。
Q4. なぜ1年で買い直せるほど値上がりしたのですか?
A. 単一の理由ではありません。本記事で整理したのは、①2025-26シーズンから始まった11年の全国放映権契約(総額は報道ベースで約760億ドル規模)、②30球団のまま増えない供給の希少性、③機関投資家の参入解禁による買い手層の拡大の3点です。加えて、ラスベガス拡張枠の想定価格(70〜100億ドルという観測)が既存球団価格の「床」を押し上げた可能性も指摘できます。ただし、売り手側の事情(保有資産の再編など)が価格や時期にどう影響したかは、公開情報からは確定できません。
Q5. NBAは本当にシアトルとラスベガスに拡張するのですか?
A. 決まっていません。2026年3月の理事会で決議されたのは「検討する(exploring)」ことです。シルバー コミッショナーは公式会見で「拡張が実現しない可能性は絶対にある。1市場かもしれないし、2市場かもしれないし、ゼロ市場かもしれない」と述べています。NBAは投資銀行PJTパートナーズを起用し、2026年末までに前進する用意を整えたい意向とされますが、参入金(70〜100億ドル)も開幕時期(2028-29シーズン)も、現時点ではすべて観測・推測の域を出ません。
Q6. 買い手はNBAの他球団の持分を持っていても大丈夫なのですか?
A. 原則として認められません。NBA憲章Article 3(c)はクロスオーナーシップを禁じています(公開株式の1%未満などの例外を除く)。このためクシュナー氏は保有するマイアミ・ヒートの少数持分を手放す必要があると報じられています。承認プロセスは金額の話だけでなく、こうした資本関係の整理を含みます。
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出典(確認日:2026年8月15日)
- NBA.com「NBA signs new 11-year media agreements with the Walt Disney Company, NBCUniversal and Amazon Prime Video through 2035-36 season」(一次/2024年7月24日) — 放映権契約の期間(2025-26〜2035-36の11年)、放送各社、地上波約75試合などの条件面を裏づけ。総額の記載はない。
- NBA.com「NBA commissioner Adam Silver on league’s plan to explore expansion in Seattle and Las Vegas」(一次に準じる/2026年3月25日) — 拡張が「検討」段階であること、シルバー発言の原文、PJTパートナーズ起用、2026年末目標、参入金70〜100億ドルが推測にとどまる旨を裏づけ。
- NBA Constitution and By-Laws(憲章・付則の公開テキスト/2019年版) — Article 5(f) の「全ガバナーの3/4以上の賛成で承認された場合にのみ移転が効力を生じる」、Article 5(a)〜(d) の申請手続き、Article 3(c) のクロスオーナーシップ禁止を裏づけ。
- CBS Sports「Lakers sold for record-breaking $12.5 billion」(報道/2026年8月12日) — 125億ドルという報道値、理事会承認が必要である旨、ドジャース/スパークスが対象外、ウォルター氏の取得価格100億ドルと2025年10月30日の承認日、バス家15%保持とジーニー・バス氏のガバナー継続、買い手声明、球団売却額ランキング(セルティックス61億ドル、シーホークス96億ドル等)を裏づけ。
- CNN Business「LA Lakers sell for a record $12.5 billion to ex-Disney CEO Iger and Jared Kushner’s brother Josh」(報道/2026年8月12日) — 125億ドル、理事会承認が必要である旨、交渉が数日でまとまった経緯、買い手2名の経歴を裏づけ。
- ESPN「Sources: Josh Kushner, Bob Iger to buy Lakers for $12.5B」(報道/2026年8月12日) — 本件の初報。関係者情報ベースであること、ラスベガス拡張プロセスからの方向転換、クシュナー氏がヒート持分を手放す必要がある旨を裏づけ。
- ESPN「NBA approves Celtics sale to Chisholm group in $6.1B deal」(報道/2025年) — セルティックスの評価額61億ドル、NBA理事会による承認、2028年までの完全支配移行で総額最大73億ドルとなりうる旨を裏づけ。
- ESPN「Khosla-led group agrees to buy Seahawks; sources say $9.6 billion」(報道/2026年) — シーホークスの売却額96.12億ドル、コマンダーズ60.5億ドルという従来のNFL記録を裏づけ。
- Sportico「NBA Team Values 2025」(推計/2025年) — ウォリアーズ113.3億ドル、レイカーズ100億ドル、ニックス98.5億ドルという球団評価額の推計を裏づけ。
- Sportico「NBA Private Equity Ownership Rules」(報道)/RealGM(報道) — PEファンドの1球団20%上限、保有球団数の5→8への拡大(2025年12月3日発効)、球団側30%上限、運用資産7.5億ドル要件、ガバナンス権なしという条件を裏づけ。
- Trading Economics「Japanese Yen」 — 本記事の換算に用いた2026年8月14日時点のドル円相場(約159円)を裏づけ。円換算はすべて同レートによる概算。
※本記事の「編集部集計」はすべて、上記の公開情報に対して編集部が四則演算を行ったものです。独自取材・独自調査・アンケートは実施していません。算出根拠と前提は各集計ブロック内に明記しています。
※本記事は2026年8月15日時点の公開情報に基づきます。本件は理事会承認前の案件であり、金額・条件・時期は今後変更されうるものとして扱ってください。
執筆: SportsPulse 編集部 / 公開: 2026-08-15
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最終更新日: 2026年8月16日 | 編集方針
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📅 更新履歴
| 日付 | 変更内容 |
|---|---|
| 2026年8月16日 | 初回公開 |
✅ ファクト再検証
最終検証日:2026年8月16日
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