著者: SportsPulse 編集部 / 更新日: 2026年8月18日 / 編集部レビュー済み
2026年8月21日から23日、オランダ・ザントフォールト。北海の砂丘に囲まれたこのサーキットで、F1の第12戦オランダGPが開かれます。今年はスプリントを含む3日間で、しかも現行契約下では「最後」の開催として位置づけられた週末です。
この場所を語るとき、多くの人がまず思い浮かべるのは客席を埋め尽くすオレンジ色でしょう。そしてそのオレンジの中心には、地元オランダのマックス・フェルスタッペンがいました。復活初年度の2021年から2023年まで、彼はこのコースで3年続けて勝っています。ただし——ここが記事を書くうえで一番慎重にならなければいけない点なのですが——その連勝は2023年で止まっています。2024年はランド・ノリスが、2025年はオスカー・ピアストリが勝ちました。「4連覇」でも「連覇継続中」でもありません。
本稿は、現地取材ではなく公開情報(F1公式・サーキット主催者公式・百科・報道)と編集部レビューだけを材料に、復活後5回のオランダGPで何が起き、何が記録として残ったのかを整理するものです。数字にはすべて「いつ時点の・どの出典の値か」を添えました。F1のレース記事・観戦情報・データをまとめて見たい方はF1 HUBから辿ってください。
結論:この記事で押さえる6つのこと
- フェルスタッペンのザントフォールト3連覇は2021・2022・2023年の3年間。2024年の優勝はランド・ノリス、2025年の優勝はオスカー・ピアストリで、連勝は2023年で終わっています(F1公式・百科・報道の3経路で確認)。
- ただし彼は復活後の5戦すべてで表彰台に立っています(優勝3回・2位2回)。「勝てなくなった」のではなく「勝ち切れなくなった」というのが記録の示す姿です。
- オランダGPは1985年を最後に20世紀中は開催されず、2021年に36年ぶりに復活しました。復活にあたりサーキットは第3コーナー(フーヘンホルツボヒト)と最終第14コーナー(アリー・ライエンダイクボヒト)にバンク(傾斜)を新設しています。
- 観客動員は2022年から2025年まで4年連続で週末3日間305,000人(F1 Destinations/GPDestinations集計)。2021年のみ195,000人(F1公式の2021年年間発表値)で、ここだけが大きく異なります。
- 2026年大会は第12戦・8月21-23日・スプリント週末。2026年シーズンは全23戦です(「22戦」は誤り)。
- 2026年が現契約下の最終開催であることはF1公式・主催者公式が発表済みの事実です。一方で「二度と開催されない」ことまでは公式に述べられておらず、将来の復帰について確約も否定もされていません。ここは断定を避けるべき部分です。
1. 36年の空白 ― なぜオランダGPは消え、なぜ戻ってきたのか
ザントフォールトの歴史は古く、常設サーキットとして最初のレース「Prijs van Zandvoort」が行われたのは1948年8月7日です。1950年に「Grote Prijs van Nederland(オランダGP)」の名称になり、世界選手権の1戦として初めて組み込まれたのが1952年でした。以後1972年を除いて定着し、1985年を最後に20世紀中の開催は途絶えます(以上、英語版Wikipedia「Circuit Zandvoort」の記述)。
途絶えた理由は単純な「人気の低下」ではありません。同記事によれば、最大の課題はサーキットに隣接する住宅地への騒音でした。1987年1月には北ホラント州議会が、コース南側を住宅地から遠ざけ、残った内側の敷地にコンパクトなコースを再構築する計画を正式承認しています。ところが数か月後、サーキットを商業運営していた会社が破産。所有者である町(ザントフォールト自治体)の手元にコースは残ったものの、モータースポーツの舞台としての存続は再び危うくなりました。
1989年、コースはいったん全長2.526kmのクラブサーキットへ縮小されます。切り離された南側は別荘型のバンガローパークや地元サッカー・ホッケークラブの施設になりました。つまりオランダGPが消えた背景には、騒音規制・運営会社の破綻・土地の転用という、きわめて現実的な問題が重なっていたわけです。1995年に国から「Aステータス」を得て国際GPサーキットの再建に着手し、2001年に全長4.307kmへ戻ります。
F1が具体的に動き出すのは2018年11月、FOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)がザントフォールト側にGP開催の提案を求めたときからです。2019年3月に基本合意(レター・オブ・インテント)、そして2019年5月14日、2020年からの開催が正式に決まりました。主催者公式サイトも、この日を「35年以上の長い不在のあと、F1がザントフォールトに戻る歴史的な発表」と記しています。
復活に際してコースには手が入りました。設計を担当したヤルノ・ザッフェッリのもとで、第3コーナー「フーヘンホルツボヒト」と最終第14コーナー「アリー・ライエンダイクボヒト」にバンクが新設されています(Wikipedia「Circuit Zandvoort」)。最終コーナーの傾斜については、当時の報道(Autosport/ESPN、2019年)が「約18度=勾配32%」と伝え、インディアナポリスのバンクの2倍以上の急勾配になると報じました。第3コーナーのバンクは8%〜18%で変化するとされます。全体のレイアウト自体は昔のまま残しつつ、傾斜だけで現代F1が走れる速度域を作り出した——これが今のザントフォールトです。なお2020年の開催はCOVID-19の影響で中止となり、実際にF1が走ったのは2021年9月5日でした。
2. 2021年 ― 36年ぶりのレースで、オランダ人が初めて母国で勝った
2021年オランダGPは9月5日決勝、2021年シーズン全22戦の第13戦として行われました。コース全長4.259km、14コーナー、DRSゾーン2か所。72周・総距離306.587kmという設定は、以後2025年まで変わっていません。
予選は9月4日15時(CEST)。フェルスタッペンが1分08秒885でポールポジションを獲得します。決勝も彼が制し、2位ルイス・ハミルトン、3位バルテリ・ボッタスという結果になりました。優勝マージンはおよそ20秒。ハミルトンは最終ラップにファステストラップを記録しています。
この勝利がなぜ「名場面」なのか。英語版Wikipediaの記述が端的です。
“The race was won by Max Verstappen – prior to him, no Dutch driver had won or gone to the podium at their home race.”
(訳:レースはマックス・フェルスタッペンが制した。彼以前に、母国レースで優勝はおろか表彰台に上がったオランダ人ドライバーは一人もいなかった。)
出典(百科):2021 Dutch Grand Prix – Wikipedia
1952年に世界選手権の1戦となってから、1985年までの長い開催期間を含めて、オランダ人が母国GPの表彰台に立ったことは一度もなかった——その空白が、復活初年度にいきなり最上段で埋まったわけです。しかもこの年は選手権がハミルトンとの一騎打ちで、直前のベルギーGPが豪雨でハーフポイントに終わり、ポイント差はわずか3点でした。地元の勝利がそのままタイトル争いの主導権奪回になった、という文脈もあります。
週末は波乱もありました。土曜のフリー走行3回目の前にキミ・ライコネンがCOVID-19陽性となり、2019年アブダビGP以来のレース出場となるロバート・クビサが代役に入っています。
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3. 2022年 ― 0.021秒のポール、そして終盤の入れ替わり
2022年は9月4日決勝、全22戦の第15戦。予選ではフェルスタッペンが1分10秒342を記録し、シャルル・ルクレール(1分10秒363)を0.021秒差で抑えてポールを取りました。3番手はカルロス・サインツ(1分10秒434)。フェルスタッペンのタイム直後にチームメイトのセルジオ・ペレスが13コーナーでスピンして黄旗が出たため、他車のアタックが成立しなかった、という経緯もF1公式が伝えています。
決勝は72周。フェルスタッペンがポールから先行し、ルクレール、サインツ、ハミルトンが続く展開で始まりました。18周目にサインツのピットストップでタイヤが用意できておらず大きなロス、さらに置き場所を誤ったホイールガンをペレスが踏むというトラブルも起きています。47周目に角田裕毅がデフのトラブルでリタイアするとバーチャルセーフティカーが導入され、フェルスタッペンはここでピットに入り、2台のメルセデスの前で復帰しました。55周目にはボッタスがエンジントラブルで止まり、今度はフルコースのセーフティカー。ハミルトンはステイアウト、フェルスタッペンとジョージ・ラッセルはソフトタイヤに交換します。
リスタート直後、フェルスタッペンはほぼ即座にハミルトンをかわしました。ラッセルはもう一度ピットに入って新しいソフトを選ぶ判断をし、これでハミルトンを上回ります。最終的な順位は1位フェルスタッペン、2位ラッセル、3位ルクレール。フェルスタッペンにとってキャリア30勝目、この年4連勝目でした。
この日の観客動員について、専門サイトF1 Destinationsは週末3日間で305,000人と伝え、当時のザントフォールト史上最多と報じています。日曜だけで105,000人という内訳も併せて報じられました(いずれも報道ベースの値)。
4. 2023年 ― 雨、赤旗、45分の中断を越えた「9連勝タイ」
3連覇の最後を飾った2023年は、5戦のなかで最も荒れたレースでした。8月27日決勝、2023年シーズンの第13戦。Wikipediaのインフォボックスは天候を「Cloudy and rainy(曇りのち雨)」と記録しています。
予選はフェルスタッペンが1分10秒567でポール。2番手ノリス(1分11秒104)、3番手ラッセル(1分11秒294)、4番手にウィリアムズのアレクサンダー・アルボン(1分11秒419)という顔ぶれでした。週末を通じてコンディションは不安定で、金曜のFP2ではダニエル・リカルドがターン3で他車のクラッシュを避けようとして左手の中手骨を骨折。代役としてリアム・ローソンがF1デビューしています。
決勝は72周を2時間24分04秒411で走破。優勝フェルスタッペン、2位フェルナンド・アロンソ(+3.744秒)、3位ピエール・ガスリー(+7.058秒)。ガスリーの表彰台は2021年アゼルバイジャンGP以来、アルピーヌ移籍後は初でした。もともと3位でチェッカーを受けたのはペレスでしたが、ピットレーン速度超過で5秒加算され4位に降着しています。
レース終盤、残り8周というところで周冠宇がクラッシュ。激しい雨も重なり、レースは約45分間中断されました。アロンソはこの日、2017年ハンガリーGP以来となるファステストラップ(56周目、1分13秒837)をマークしています。そしてフェルスタッペンにとってこの勝利は9連勝——セバスチャン・ベッテルの持つ記録に並ぶ数字でした。
雨のなかで地元の観客が最後まで残り、中断明けの再開を待った——という光景は、この大会を象徴する場面としてしばしば語られます。ただし編集部は現地におらず、当日の客席の様子について観測に基づく記述はできません。ここでは記録として、この年の週末3日間の観客数が305,000人(Wikipediaインフォボックスの記載値、出典はf1destinations)であったことだけを記します。
5. 2024年 ― 3連覇が止まった日
2024年8月25日、全24戦の第15戦。この日、ザントフォールトの流れが変わります。
予選でポールを取ったのはマクラーレンのランド・ノリスでした。フェルスタッペンは2番グリッド。決勝ではスタート直後の第1コーナーまでにフェルスタッペンが前に出て、一度はDRS圏外まで引き離します。しかしレッドブルRB20のハンドリングに苦しむうちに差は縮まり、16周目までにノリスが0.5秒以上を取り戻し、18周目に首位を奪還。以後はノリスが大半の周回をリードし、ファステストラップも記録して優勝しました。2位フェルスタッペン、3位ルクレール。
英語版Wikipediaはこの一戦の意味をこう書いています。
“Norris’s victory broke Verstappen’s streak of pole positions and race wins at Circuit Zandvoort since its return to the Formula One calendar in 2021.”
(訳:ノリスの勝利は、2021年のF1カレンダー復帰以降ザントフォールトで続いていたフェルスタッペンのポールポジションと優勝の連続記録を止めた。)
出典(百科):2024 Dutch Grand Prix – Wikipedia
つまりポール3連続・優勝3連続がここで同時に途切れたということです。この年の観客数も4年連続の305,000人(GPDestinations集計)でした。
2025年はさらにマクラーレンが強く、8月31日決勝(全24戦の第15戦)でオスカー・ピアストリがポールから優勝。自身初のグランドスラム(ポール・優勝・全周回リード・ファステストラップ)を達成しています。2位はフェルスタッペン、3位はレーシングブルズのアイザック・ハジャーで、ハジャーにとってキャリア初表彰台でした。首位を走っていたノリスは終盤にオイル漏れでストップしています。
ここで重要なのは、フェルスタッペンは2024年も2025年も2位で表彰台に上がっているという点です。英語版Wikipediaの2025年記事は「継続した100%の母国レース表彰台記録(continued his 100% podium record at his home race)」と表現しています。「連覇が止まった」ことと「弱くなった」ことは別の話だ、というのが記録の読み方です。
2021〜2025年 オランダGP 年次比較表
| 年 | 決勝日 | ラウンド | ポールポジション | 優勝 | 2位 | 3位 | 週末3日間の観客数 | 観客数の出典 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 9月5日 | 全22戦の第13戦 | M.フェルスタッペン(1:08.885) | M.フェルスタッペン | L.ハミルトン | V.ボッタス | 195,000 | F1公式「2021年のTV・観客・デジタル動員発表」(2022年2月17日) |
| 2022 | 9月4日 | 全22戦の第15戦 | M.フェルスタッペン(1:10.342) | M.フェルスタッペン | G.ラッセル | C.ルクレール | 305,000 | F1 Destinations(2022年、当時のコース史上最多と報道) |
| 2023 | 8月27日 | 2023年 第13戦 | M.フェルスタッペン(1:10.567) | M.フェルスタッペン | F.アロンソ | P.ガスリー | 305,000 | Wikipediaインフォボックス記載値(原典 f1destinations) |
| 2024 | 8月25日 | 全24戦の第15戦 | L.ノリス | L.ノリス | M.フェルスタッペン | C.ルクレール | 305,000 | GPDestinations「2024年 観客動員ランキング」(2024年9月12日) |
| 2025 | 8月31日 | 全24戦の第15戦 | O.ピアストリ | O.ピアストリ | M.フェルスタッペン | I.ハジャー | 305,000 | GPDestinations「305,000 Attend 2025 Dutch Grand Prix Weekend」(2025年9月1日) |
表の注記:全5戦とも72周・306.587kmで実施。2021年の195,000という値だけが他年と大きく異なりますが、その理由(当時の入場制限の有無など)については確認できる出典を得られなかったため、本稿では断定しません。観客数はいずれも主催者発表を各媒体が報じたもので、F1公式の一次資料で全年を統一的に確認できたわけではない点にご留意ください。2023年の「第13戦」は当該年のラウンド番号であり、シーズン総戦数は本稿では確認していません。
編集部集計:復活後5大会の数字を割り算してみる
ここからは編集部集計です。上の表の公開情報に四則演算をかけただけのもので、新しい取材や調査は一切していません。前提は「2021〜2025年の5大会を母数とする」ことです。
集計1:復活後のフェルスタッペンの成績
- 優勝率:3勝 ÷ 5戦 = 60.0%(2021・2022・2023年に優勝)
- ポール獲得率:3回 ÷ 5戦 = 60.0%(2021・2022・2023年に獲得)
- 表彰台率:5回 ÷ 5戦 = 100.0%(優勝3・2位2)
- 2024年以降の優勝率:0勝 ÷ 2戦 = 0.0%/同期間の表彰台率:2回 ÷ 2戦 = 100.0%
この4行が本稿で最も伝えたい数字です。「地元で3連覇した」と「地元で5戦連続表彰台」は両立します。逆に「3連覇したから今も勝ち続けている」という読み替えは、2024年・2025年の結果と矛盾します。
集計2:観客動員の推移
- 2021年→2022年:195,000 → 305,000。増加 110,000人/増加率 +56.4%(110,000 ÷ 195,000 = 0.5641…)
- 2022年→2023年/2023年→2024年/2024年→2025年:いずれも305,000で横ばい、増減率 0.0%
- 2021〜2025年の合計:195,000 +(305,000 × 4年)= 1,415,000人
- 同5大会の平均:1,415,000 ÷ 5 = 283,000人/大会
前提と限界:観客数は各年とも「週末3日間の合計」として報じられた値であり、日別の入場者や重複カウントの扱いは媒体側の定義に依存します。したがってこの集計は報道された数字どうしの比較であって、実来場者数の厳密な比較ではありません。2022年以降が4年連続で同一の305,000という値である点も、実質的な「上限=満員」を意味している可能性が高いものの、本稿では推測を断定として書きません。
集計3:空白期間と復活からの年数
- 最後の20世紀開催(1985年)から復活(2021年)まで:2021 − 1985 = 36年
- 世界選手権の1戦になった1952年から2026年まで:2026 − 1952 = 74年
- 復活(2021年)から現契約下の最終開催(2026年)まで:2026 − 2021 + 1 = 6シーズン(うち実開催は2021〜2025年の5回+2026年で計6回)
「オレンジの海」とは何なのか
ザントフォールトの映像でまず目に入るのは、スタンドを覆うオレンジ色です。オレンジはオランダ代表チームのカラーとして広く知られ、王家オラニエ=ナッサウ家の名に由来するとされます。F1公式は2024年12月のリリースで、この大会のファン体験をこう総括しました。
“The event has become known for its fan experience, with Dutch fans and international visitors alike gathering to watch the excitement of Formula 1, Formula 2, Formula 3, F1 ACADEMY and more, battling around the iconic banked corners of the circuit.”
(訳:この大会はファン体験で知られるようになった。オランダのファンも海外からの来場者も同じように集まり、F1、F2、F3、F1アカデミーなどが、このサーキットの象徴であるバンクの付いたコーナーで競い合う姿を見守ってきた。)
同じリリースの中で、F1のステファノ・ドメニカリCEOは主催者の仕事を次のように評価しています。
“They raised the bar for European Grands Prix in terms of event spectacle and entertainment, supported the development of young talent by hosting F2, F3 and our F1 ACADEMY series, and have also pioneered sustainable solutions that have inspired our events around the world as we drive towards being Net Zero by 2030.”
F1 おすすめリンク※この先のリンクには広告(PR)・アフィリエイトを含みます。購入・お申込によりSportsPulseが収益を得る場合があります(掲載順・評価は編集部の判断です)。
※ アフィリエイトリンクを含みます(訳:彼らはイベントとしての見せ方や娯楽性の面でヨーロッパのグランプリの基準を引き上げ、F2・F3・F1アカデミーを開催することで若い才能の育成を支え、さらに2030年ネットゼロに向けて世界中の我々のイベントに影響を与えた持続可能性の取り組みを先駆けて実践してきた。)
出典(一次/F1公式):同上
ここで確認しておきたいのは、この大会が評価されてきた理由が「地元ヒーローがいたから」だけではない、という点です。F2・F3・F1アカデミーの併催、サステナビリティ、そして交通アクセスの設計まで含めた「イベント全体の作り込み」が公式の言葉で評価されています。実際、サーキットへの交通インフラ改善のために自治体が400万ユーロを投じたという記録も残っています(Wikipedia「Circuit Zandvoort」)。オレンジの熱狂は自然発生しただけのものではなく、運営設計とセットで成立していた——記録から読み取れるのはそこまでです。
2026年8月21-23日:第12戦、そしてスプリント週末
今年の大会について、F1公式が2026年8月17日付で公開したスケジュール記事の内容を確認しました。
- 第12戦(2026年シーズンは全23戦。当初24戦の予定だったところ、シーズン開始後にバーレーンGPとサウジアラビアGPが中止となり、うちバーレーンGPが10月にマレーシア・セパンで「Formula 1 Gulf Air Bahrain Grand Prix in Malaysia」として開催されることになった経緯があります)
- 8月21日(金):フリー走行1回目 11:30(現地時間)/スプリント予選 15:30
- 8月22日(土):F1スプリント 11:00/予選 15:00
- 8月23日(日):決勝 15:00
- オランダGPでスプリントが行われるのは今回が初めて(主催者公式が2024年12月時点で告知済み)
注:スプリントの周回数について、報道(RacingNews365)は24周としています。編集部集計としてコース全長4.259kmを掛けると 24 × 4.259 = 約102.2km となりますが、周回数はF1公式の一次資料で本稿執筆時点では確認できていないため、参考値として扱ってください。決勝は例年どおり72周の見込みです。
選手権の状況も併せて記録しておきます。同じF1公式記事によれば、2026年のドライバーズランキングはキミ・アントネッリが首位で、2位ルイス・ハミルトンに50点差、3位ジョージ・ラッセルはハミルトンから9点差。直前のハンガリーGPはランド・ノリスが勝っており、公式は「上位4チームの争いが一段と接近している」と評しています(いずれも2026年8月17日時点)。
そして最も重い一文が、この記事の中にあります。
“This year’s Dutch Grand Prix will be the last, marking a final home race for local hero Max Verstappen. … Zandvoort is known for its undulating layout, making it a challenging track – but that challenge has been mastered by several names on the grid in recent years, with Verstappen claiming three consecutive victories at the circuit before Norris and Oscar Piastri won in 2024 and 2025 respectively.”
(訳:今年のオランダGPが最後となり、地元のヒーローであるマックス・フェルスタッペンにとって最後のホームレースとなる。……ザントフォールトは起伏の大きいレイアウトで知られる難コースだが、近年は何人ものドライバーがこの難しさを攻略してきた。フェルスタッペンがこのサーキットで3連勝を挙げ、その後2024年にノリス、2025年にピアストリが勝っている。)
出典(一次/F1公式):What time is the Formula 1 2026 Dutch Grand Prix and how can I watch it?(2026年8月17日)
この一文は、本稿が最も注意した「3連覇=2021〜2023年、2024年はノリス、2025年はピアストリ」という事実を、F1公式自身の言葉で裏づけています。日本語圏の記事では「4連覇」「連覇継続」といった表記が混入しやすい部分なので、引用のかたちで明示しておきます。
「最後」の意味を正確に切り分ける
2026年が最終開催であることは、推測ではなく発表済みの事実です。2024年12月4日、F1公式と主催者Dutch Grand Prix双方が同日にリリースを出しています。契約は1年延長されて2026年までとなり、その先はプロモーター(主催者)側の判断でカレンダーに残らないことが決まりました。主催者のディレクター、ロベルト・ファン・オーフェルダイク氏の説明を引用します。
“We are a privately owned and operated business, and we must balance the opportunities presented by continuing to host the event, against other risks and responsibilities. We have decided to go out on a high with two more incredible Dutch Grands Prix in 2025 and 2026.”
(訳:我々は民間が所有し運営する事業であり、大会を続けることで得られる機会と、それ以外のリスクや責任とのバランスを取らなければならない。2025年と2026年にあと2回すばらしいオランダGPを開催し、頂点で終えることを決断した。)
出典(一次/主催者公式):Final race in 2026 – Dutch Grand Prix(2024年12月4日)
ドメニカリCEOも同じリリースで「隔年開催や毎年開催を含む多くの選択肢を検討したうえで、2026年で終えるというプロモーターの決定を尊重する(we respect the decision from the promoter to finish its amazing run in 2026)」と述べています。つまりF1側が切ったのではなく、主催者側が「高いところで終える」ことを選んだという構図です。
一方で、「今後永久に開催されない」とは、F1公式も主催者公式も述べていません。将来の復帰について確約も否定もされていない、というのが2026年8月18日時点で確認できる範囲です。ここは断定せず、「現契約下では2026年が最後」「その先は未定」と書くのが正確です。
なお主催者公式サイトは2026年大会について「土日のウィークエンドチケットは完売」と告知しており、2025年10月2日付のニュースでは最終大会への需要が非常に大きかったことも記録されています。
FAQ
Q1. なぜオランダGPは36年も開催されなかったの?
単一の理由ではありません。英語版Wikipedia「Circuit Zandvoort」の記述によれば、まず近隣住宅への騒音問題がコースの改修・発展を妨げていました。1987年1月に北ホラント州議会がコース南側を住宅地から遠ざける再構築計画を承認しますが、その数か月後に運営会社が破産。1989年にはコースが全長2.526kmのクラブサーキットまで縮小され、切り離された南側はバンガローパークや地元スポーツクラブの用地に転用されました。1995年に国から「Aステータス」を得て国際GPサーキットの再建が始まり、2001年に全長4.307kmへ復元。F1復帰が正式決定したのは2019年5月14日です。騒音規制・運営破綻・土地転用・再建の資金と時間——これらが積み重なった結果の36年でした。
Q2. なぜ観客席がオレンジ一色になるの?
オレンジはオランダのナショナルカラーとして広く知られ、王家オラニエ=ナッサウ家の名に由来するとされます。サッカーのオランダ代表が「オランイェ」と呼ばれるのと同じ文脈です。F1では2021年の復活が地元出身のフェルスタッペンの全盛期と重なったため、この色がそのままサーキットを覆う形になりました。F1公式は2024年12月のリリースで「オランダのファンも海外からの来場者も同じように集まる」ファン体験がこの大会の代名詞になったと記しています。ただし編集部は現地に行っておらず、観客の服装比率などを実測したデータは持っていません。ここに書けるのは公開情報の範囲までです。
Q3. 2026年で本当に最後なの?
「現在の契約のもとでは2026年が最終開催」というところまでは、F1公式・主催者公式が発表した確定事実です。2024年12月4日のリリースで契約が2026年まで1年延長され、その後はカレンダーに残らないという主催者の決定が公表されました。F1公式は2026年8月17日付の記事でも「今年のオランダGPが最後になる」と明記しています。ただし「将来にわたって二度と開催されない」とまでは、どの公式発表も述べていません。復帰の可能性について確約も否定もされていない、というのが2026年8月18日時点で確認できる状態です。したがって本記事では「永久に消える」という書き方はしていません。
Q4. フェルスタッペンはザントフォールトで何連覇したの?「4連覇」と書いてある記事を見たけど?
3連覇です(2021年・2022年・2023年)。2024年の優勝はランド・ノリス、2025年の優勝はオスカー・ピアストリで、連勝は2023年で止まっています。F1公式の2026年8月17日付記事が「Verstappen claiming three consecutive victories at the circuit before Norris and Oscar Piastri won in 2024 and 2025 respectively」と明記しており、英語版Wikipediaの2024年・2025年の各記事、および当時の複数の報道とも一致します。「4連覇」「連覇継続中」という表記は誤りです。なお表彰台という意味では2021年から2025年まで5戦連続で上がっています。
Q5. 2026年大会はいつ、どんな形式で行われるの?
2026年シーズン全23戦の第12戦として、8月21日(金)〜23日(日)に行われます。今回はオランダGP史上初のスプリント週末で、金曜にフリー走行1回目(11:30 現地時間)とスプリント予選(15:30)、土曜にスプリント(11:00)と予選(15:00)、日曜に決勝(15:00)というスケジュールです(F1公式、2026年8月17日)。決勝は例年どおり72周・306.587kmの見込みです。
Q6. ザントフォールトの「バンク」って何がすごいの?
2021年の復活にあたり、設計者ヤルノ・ザッフェッリのもとで第3コーナー「フーヘンホルツボヒト」と最終第14コーナー「アリー・ライエンダイクボヒト」に傾斜(バンク)が付けられました。全体のレイアウトはほぼ従来のまま残っています。当時の報道(Autosport/ESPN、2019年)は最終コーナーの傾斜を「約18度=勾配32%」とし、インディアナポリスのバンクの2倍以上の急勾配になると伝えました。第3コーナーの傾斜は8%〜18%で変化するとされます。最終コーナーがバンクになったことで、コース幅を使った複数ラインの走行と、そのままメインストレートのDRSゾーンへつながる加速が成立するようになりました。ただし傾斜の具体的数値は報道ベースの値であり、サーキット公式の一次資料で本稿執筆時点では確認していません。
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出典(確認日:2026年8月18日)
- 【一次/F1公式】What time is the Formula 1 2026 Dutch Grand Prix and how can I watch it?(2026年8月17日) ― 2026年オランダGPが第12戦であること、8月21-23日のセッション時刻、スプリント週末であること、「今年が最後」という記述、「フェルスタッペンの3連勝、その後2024年ノリス・2025年ピアストリ」、2026年8月17日時点の選手権状況(アントネッリ首位)を裏づけ。
- 【一次/F1公式】Formula 1 to celebrate final Dutch Grand Prix in 2026 after one-year extension confirmed for Zandvoort(2024年12月4日) ― 契約1年延長と2026年で終了する決定、ドメニカリCEOおよびファン・オーフェルダイク氏の発言、2026年にスプリントを初導入すること、2021年復帰以降フェルスタッペンが3勝していることを裏づけ。
- 【一次/主催者(サーキット)公式】Final race in 2026 – Dutch Grand Prix(2024年12月4日) ― 2019年5月14日の復活決定、当初3年契約+2年延長という経緯、2026年最終開催の決定理由、ファン・オーフェルダイク氏とヤン・ラマース氏のコメント、2026年チケット販売の方針を裏づけ。
- 【一次/主催者公式】Formula 1 Heineken Dutch Grand Prix 公式サイト ― 2026年大会の土日ウィークエンドチケット完売、Super Fridayの案内など、大会運営側の告知を裏づけ。
- 【百科】2021 Dutch Grand Prix – Wikipedia ― 2021年9月5日開催・全22戦の第13戦・72周306.587km・ポール1:08.885・優勝フェルスタッペン・「オランダ人として母国初の優勝/表彰台」・ライコネン欠場とクビサ代役を裏づけ。
- 【百科】2022 Dutch Grand Prix – Wikipedia ― 2022年9月4日開催・全22戦の第15戦・レース展開(角田のリタイアとVSC、ボッタスのリタイアとSC、終盤のラッセルの2度目のピット)・最終順位1位フェルスタッペン/2位ラッセル/3位ルクレールを裏づけ。
- 【百科】2023 Dutch Grand Prix – Wikipedia ― 2023年8月27日開催・第13戦・天候「Cloudy and rainy」・観客数305,000・ポール1:10.567・優勝タイム2:24:04.411・アロンソ2位/ガスリー3位・ペレスの5秒加算・周冠宇のクラッシュによる約45分の中断・ベッテルに並ぶ9連勝・リカルド負傷とローソンのデビューを裏づけ。
- 【百科】2024 Dutch Grand Prix – Wikipedia ― 2024年の優勝がランド・ノリスであること、ノリスのポール、18周目の首位交代、フェルスタッペン2位・ルクレール3位、「フェルスタッペンのポールと優勝の連続記録を止めた」という記述を裏づけ。
- 【百科】2025 Dutch Grand Prix – Wikipedia ― 2025年の優勝がオスカー・ピアストリであること、自身初のグランドスラム、フェルスタッペン2位・ハジャー初表彰台、ノリスのオイル漏れによるリタイア、「母国レース100%表彰台記録の継続」という記述を裏づけ。
- 【百科】Circuit Zandvoort – Wikipedia ― 1948年の初レース、1952年に世界選手権入り、1985年を最後に20世紀の開催が途絶えたこと、騒音問題と1987年の州議会承認、運営会社の破産、1989年の2.526kmへの縮小と南側の転用、1995年のAステータス取得と2001年の4.307km復元、2019年5月14日の開催決定、ザッフェッリによる第3・第14コーナーのバンク新設、自治体による400万ユーロのインフラ投資、2020年大会の中止を裏づけ。
- 【報道】Zandvoort F1 banking will be twice as steep as Indianapolis in 2020 – Autosport/Zandvoort banking to be twice as steep as Indianapolis – ESPN ― 最終コーナーの傾斜「約18度=勾配32%」および第3コーナーの傾斜「8%〜18%」という数値を裏づけ(報道ベースの値)。
- 【報道】305,000 Attend the 2022 Dutch Grand Prix – F1Destinations.com ― 2022年の週末3日間305,000人(当時のコース史上最多)、日曜105,000人を裏づけ。
- 【報道】RANKED: The Top Attended Formula 1 Races in 2024 – GPDestinations.com/305,000 Attend 2025 Dutch Grand Prix Weekend – GPDestinations.com ― 2024年・2025年の週末3日間305,000人を裏づけ。
- 【報道】2022 Dutch Grand Prix report and highlights: Verstappen beats Leclerc to Zandvoort pole by 0.021s – Formula 1 ― 2022年予選のポールタイム1:10.342、ルクレールとの0.021秒差、ペレスのスピンによる黄旗を裏づけ(F1公式サイト掲載のレポート記事)。
- 【報道】2026 F1 Dutch Grand Prix – Zandvoort Time Schedule – RacingNews365 ― 2026年スプリントの周回数(24周)を裏づけ(報道ベース・一次未確認)。
- 【報道】Malaysia added to 2026 F1 calendar in October to host postponed Bahrain GP – Sky Sports/The ‘Formula 1 Gulf Air Bahrain Grand Prix in Malaysia’ – ESPN ― 2026年シーズンが全23戦となった経緯(当初24戦、バーレーン/サウジの中止、10月2-4日にセパンでバーレーンGPを開催)を裏づけ。
- 【報道】F1: McLaren’s Lando Norris defeats Max Verstappen to win Dutch Grand Prix – Al Jazeera(2024年8月25日) ― 2024年の優勝者がノリスであることの独立した裏づけ(3経路確認のうち報道分)。
編集部集計についての注記:本文中の「編集部集計」は、上記の公開情報に対して四則演算(割り算・引き算・合計・平均)のみを行ったものです。独自の取材・調査・アンケートは一切実施していません。母数はいずれも「2021〜2025年の5大会」で、観客数は各媒体が報じた週末3日間合計値を用いています。媒体ごとに集計定義が異なる可能性があるため、増減率は「報道された数字どうしの比較」としてお読みください。
時点注記:本記事の内容はすべて2026年8月18日時点で確認できた公開情報に基づきます。2026年オランダGP(8月21-23日)の結果、セッション時刻の変更、天候、選手権順位の変動は本記事に反映されていません。また観客数・バンク角度・スプリント周回数は出典によって数値が異なる可能性があるため、本文中で「一次/報道」の別を明記しています。円換算は、確認できるレートと換算日が得られなかったため一切行っていません。
執筆: SportsPulse 編集部 / 公開: 2026-08-18
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最終更新日: 2026年8月19日 | 編集方針
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📅 更新履歴
| 日付 | 変更内容 |
|---|---|
| 2026年8月19日 | 初回公開 |
✅ ファクト再検証
最終検証日:2026年8月19日
SportsPulse 編集部が公開情報をもとに内容を確認しています。情報は確認時点のものです。最新情報は各公式サイトをご確認ください。
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