公開日: 2026年9月2日 / 最終更新: 2026年9月2日 / 情報の確認日: 2026年9月2日
この記事の結論を先に
サッカーの時計は、プレーが止まっても動き続けます。だから主審は「そのハーフで失われたプレー時間」を計っておいて、45分が過ぎたあとにまとめて足します。これがアディショナルタイム(追加時間)です。
そして、第4審判が掲げるボードの数字は「最少限これだけは足します」という下限であって、残り時間の確定ではありません。だから「+5分」と出たのに6分たっても終わらない、ということが普通に起こります。
「前半45分って言ってたのに、なんでまだ終わらないの?」
サッカーを観はじめた方が、いちばん最初につまずくのがここだと思います。お子さんと一緒にテレビを観ていて、「あと何分?」と聞かれて答えに詰まった経験のある方も多いのではないでしょうか。しかも最近は、その追加時間がやたらと長い。7分、8分、ときには10分を超える表示が出て、「試合が終わらない」と感じることさえあります。
この記事では、サッカーのルールブックである「競技規則(Laws of the Game)」の原文にあたりながら、アディショナルタイムの仕組みを、できるだけかみくだいて説明します。競技規則を作っているのはIFAB(国際サッカー評議会)という団体です。FIFA(国際サッカー連盟)とイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの4協会でつくられていて、世界中のサッカーのルールはここが決めています。まずはこの「大もと」を確認するところから始めましょう。
そもそも「アディショナルタイム」とは何か
アディショナルタイムは、競技規則の第7条「試合時間(The Duration of the Match)」で扱われています。この条文はとても短くて、大きく5つの項目しかありません。試合時間そのもの、ハーフタイム、空費された時間の埋め合わせ、ペナルティーキックの扱い、そして試合が中止になったときの扱い。アディショナルタイムの話は3つめの「7.3 Allowance for time lost(空費された時間の埋め合わせ)」に書かれています。
条文の考え方はとてもシンプルです。「そのハーフで失われたプレー時間は、そのハーフの終わりに主審が埋め合わせる」。ただそれだけです。「何分足しなさい」という数字は、競技規則のどこにも書かれていません。
ここが、初心者の方がいちばん誤解しやすいところだと思います。アディショナルタイムは「サービス」でも「延長戦」でもありません。本来プレーできたはずなのに、できなかった時間を返しているだけなのです。
なぜこんな仕組みになっているかというと、サッカーの時計が「止まらない時計」だからです。バスケットボールやアメリカンフットボールのように、プレーが切れるたびに時計を止める競技であれば、この仕組みは要りません。しかしサッカーでは、ボールがラインを割っても、選手が倒れていても、時計は動き続けます。Jリーグ公式サイトも「試合中は時計が止まることはなく、ボールがラインの外に出たり、ファウルなどでプレーが止まった場合でも、時計は動き続けています」と説明しています(Jリーグ公式サイト/2026年9月2日確認)。
止まらない時計のままだと、たとえば相手チームがわざと時間を使ったときに、そのぶんプレーできる時間が減ってしまいます。それでは不公平なので、あとから返す。それがアディショナルタイムです。
用語メモ: 競技規則で使われている英語は「additional time(アディショナルタイム)」です。日本語では「追加時間」と訳されることもあります。どちらも同じものを指しています。
「ロスタイム」という呼び方はどこから来たのか
年配の方や、昔からサッカーを観ている方は「ロスタイム」と言うことが多いと思います。テレビ中継でも、20年ほど前までは「ロスタイム」が普通でした。
では「ロスタイム」は間違いなのでしょうか。ここは丁寧に切り分けたほうがよさそうです。
まず、競技規則に載っている用語は「additional time」であって、「loss time」や「lost time」ではありません。これはIFAB公式サイトの第7条の本文で確認できます。つまり、ルール上の正式な呼び方はアディショナルタイムのほうです。
そのうえで、「ロスタイム」が日本で広まった経緯については、Jリーグ公式サイトが「日本では『ロスタイム』と呼称していた時代もありましたが、これは和製英語であり世界的にはアディショナルタイムと呼ばれるのが一般的である」と説明しています(Jリーグ公式サイト/2026年9月2日確認)。日本語版ウィキペディアも同様に、”loss of time” から取られた和製英語だと記述しています(2026年9月2日確認)。
ただし、この「和製英語である」という説明は、IFAB側の一次資料で裏づけられるものではありません(IFABは日本語の事情について何も述べていません)。あくまで日本のサッカー界側がそう説明している、という受け止め方が正確です。本記事でもそのように書き分けています。
呼び方が切り替わったきっかけについては、日本語版ウィキペディアが、日本サッカー協会の審判委員会が2010年7月16日に名称を「アディショナルタイム」とする方針を決めた、と記述しています(2026年9月2日確認)。中継や場内表示が徐々に「アディショナルタイム」に統一されていったのは、このあたりからです。
日常会話で「ロスタイム」と言っても通じますし、間違いだと目くじらを立てる話でもありません。ただ、「ルールブックの言葉はアディショナルタイム」と知っておくと、この先の説明がすっと入ってきます。サッカー観戦の基本はサッカー観戦ファンHUBにもまとめていますので、あわせてどうぞ。
比較のポイントを押さえる
記事で整理したポイントを踏まえて、比べやすい候補の一つを確認できます。
何が「空費された時間」に数えられるのか
では、具体的に何が「失われたプレー時間」として数えられるのでしょうか。ここは競技規則にきちんと列挙されています。IFAB公式サイトの第7条7.3には、次の8つの事由が箇条書きで並んでいます(2026/27版・2026年9月2日確認)。
| 競技規則に並んでいる事由 | 試合中に見える具体例 |
|---|---|
| 選手交代 | 交代ボードが出て、選手が入れ替わるまでの時間 |
| 負傷した選手の状態確認、および場外への搬出 | ドクターがピッチに入る、担架が入る、頭部の検査をする |
| 時間の浪費(遅延行為) | リードしているチームが、わざとゆっくりボールを取りに行く |
| 懲戒の罰則 | イエローカードやレッドカードが出て、試合が止まっている時間 |
| 競技会規定で認められた医療上の停止 | 飲水(ドリンクス)ブレイク、クーリングブレイク |
| VARのチェックおよびレビューに関する遅延 | 主審がモニターを見に行く、映像確認で試合が止まる |
| ゴール後の喜びの表現(ゴールセレブレーション) | 得点後、選手がコーナーフラッグに走って喜ぶ時間 |
| その他の理由(再開の著しい遅れを含む) | 外部から人やモノがピッチに入り、再開が大きく遅れる |
左の列は競技規則に列挙されている事由、右の列はそれが試合でどう見えるかを、編集部で補ったものです。並べてみると、「うわ、これ全部足されるのか」と思いませんか。実際、得点がたくさん入って、負傷者が出て、VARも動いた試合は、それだけで追加時間が二桁分になり得ます。
【編集部集計①】8つの事由を3つのグループに分けてみる
この8つの事由を、性格ごとにグループ分けしてみました。
集計の方法(編集部集計)
対象: IFAB公式サイト掲載の Laws of the Game 第7条7.3「Allowance for time lost」に箇条書きで列挙された事由(2026/27版/2026年9月2日確認)。
数え方: 箇条書き1行を1事由として数える。合計8事由。
除外条件: 同じ7.3にある散文部分(第4審判の掲示に関する記述、前半の計時ミスを後半で埋め合わせてはならない旨の記述)は「事由の列挙」ではないため除外。7.4のペナルティーキックに関する規定も別項目のため除外。
分類: 3グループへの振り分けは編集部の判断によるもので、競技規則側にこのような分類は存在しません。
| グループ | 件数 | 含まれる事由 |
|---|---|---|
| 選手の安全・健康にかかわるもの | 2件 | 負傷者の状態確認・搬出/競技会規定で認められた医療上の停止 |
| 試合運営の手続きにかかわるもの | 3件 | 選手交代/懲戒の罰則/VARのチェックとレビュー |
| 遅延や感情の表出にかかわるもの | 3件 | 時間の浪費/ゴール後の喜びの表現/その他の理由(再開の著しい遅れ) |
こうして眺めると、追加時間は「ズルをしたチームへの罰」ではないことが見えてきます。8つのうち5つは、遅延行為とは関係のない、ふつうに起こることです。ケガの手当ても、交代も、ゴールを喜ぶことも、サッカーに当たり前にあるものですよね。それでもプレー時間は確実に失われるので、返しましょう、という設計になっているわけです。
なお、IFAB公式サイトはこの点についてQ&Aでも念を押しています。「ゴール後の喜びの表現のために失われた時間も足すべきか」という問いに対し、答えは「イエス。ゴールセレブレーションはしばしば相当な時間の損失につながるため、正しく時間を計上すべき」という趣旨の説明になっています(IFAB公式サイト/2026年9月2日確認)。
数えられるもの・数えられないものの線引き
ここで一つ、初心者の方が引っかかりやすいポイントがあります。「スローインやフリーキックで試合が止まっている時間は足されるの?」という疑問です。
Jリーグ公式サイトは「スローインやフリーキックなどによる中断時間は、アディショナルタイムに反映されません」と説明しています(Jリーグ公式サイト/2026年9月2日確認)。日本語版ウィキペディアにも同様の記述があります。
一方でIFABの第7条7.3には「時間の浪費(wasting time)」がはっきり列挙されており、さらに「その他の理由。再開の著しい遅れを含む」という受け皿の項目もあります。つまり、ふつうの速さで行われるスローインやフリーキックは数えないが、明らかに引き延ばしているスローインは数え得る、という整理になります。この2つは矛盾しているのではなく、見ている場面が違うのです。
| 場面 | 追加時間に数えられるか | 根拠 |
|---|---|---|
| ふつうの速さのスローイン・フリーキック・ゴールキック | 数えない | Jリーグ公式サイトの解説 |
| 明らかに引き延ばしているスローイン・ゴールキック | 数え得る | IFAB第7条7.3「時間の浪費」 |
| 選手交代・負傷の手当て・カード提示 | 数える | IFAB第7条7.3の列挙事由 |
| ゴール後の喜びの表現 | 数える | IFAB第7条7.3の列挙事由およびQ&A |
| ハーフタイムの15分 | 数えない | IFAB第7条7.2(別枠の規定) |
つまり判断のカギは「時間の長さ」ではなく、「本来のプレーの一部か、それとも引き延ばしか」にあります。そしてその判断をするのは、ピッチにいる主審です。
誰が、どうやって決めているのか
追加時間を決めるのは、主審ただ一人です。第4審判でも、VAR担当の審判でもありません。
主審は試合中、時計を見ながら「いま何秒失われたか」を頭のなか、あるいは腕の時計で積み上げていきます。ピッチの上で走りながら、ファウルを見て、選手と話しながら、同時に時間も計っている。ちょっと想像しただけでも大変な仕事です。
そして前半・後半それぞれの最後の1分が終わるところで、主審が決めた数字を第4審判がボードに表示します。ピッチの脇に立っている審判が、電光のボードを頭上に掲げるあの場面です。
ボードの数字は「最少限」であって、確定した残り時間ではない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
競技規則の英語をそのまま見ると、第4審判が示すのは「the minimum additional time」、つまり「最少限の追加時間」と書かれています。そして続く一文がこうです。
The additional time may be increased by the referee but not reduced.
(日本語訳: 追加時間は主審によって増やされることはあるが、減らされることはない。)
出典: IFAB「Laws of the Game」第7条7.3/2026年9月2日確認
増やすことはできるが、減らすことはできない。だから「+5分」と表示されたあと、その5分のあいだに交代があったり、選手が倒れたり、ゴールが決まって喜びが長引いたりすれば、5分を超えてもまだ試合は続きます。
「掲示された分数を過ぎたのに笛が鳴らない!」と感じるのは、審判のミスでも不公平でもありません。規則どおりの動きです。ボードの数字は、ゴールまでのカウントダウンではなく、「ここからは少なくともこれだけやります」という約束だと思ってください。
ボードの表示は「切り捨ての分単位」
もうひとつ。ボードに出るのは分単位で、秒は切り捨てだとされています。日本語版ウィキペディアは、1998年から1分単位(秒単位は切り捨て)で場内に表示される方式が採用された、と記述しています(2026年9月2日確認)。「2分」と出た場合、実際に前半が終わるのは2分00秒から2分59秒のあいだのどこか、ということになります。
それに加えて、規則には主審側の縛りもあります。前半の計時にミスがあったとしても、後半の長さを変えて埋め合わせてはならない、と第7条7.3に明記されています。前半で足りなかったぶんを後半でこっそり足す、ということはできません。
さらに、追加時間の終わりにペナルティーキックを蹴ることになった場合は、そのキックが完了するまでハーフが延長されます(第7条7.4)。「時間が来たのにPKを蹴っている」という場面は、これで説明がつきます。
なぜ2022年ごろから長くなったのか
では本題です。追加時間が長くなったのは、いつ、なぜでしょうか。
多くの方が「長くなった」と実感したのは、2022年FIFAワールドカップ カタール大会だと思います。あの大会では7分、8分、10分超という表示が当たり前のように出て、世界中で話題になりました。
ここで大事なのは、「IFABが2022年に新しいルールを作ったから長くなった」わけではないということです。第7条の骨格――「失われたプレー時間を主審が埋め合わせる」という原則――は以前から同じです。変わったのは、計り方の厳密さ、つまり運用のほうでした。
FIFA公式サイトに掲載されたFIFA審判委員会委員長ピエルルイジ・コリーナ氏の説明が、この点をはっきり示しています。同氏は大会中の記事のなかで、実際のプレー時間が50分に満たない試合が続いていることが長年の問題だったと述べ、審判団には「どの事象をどう計上するか」を具体的に示したと説明しています。とくに負傷の手当てについては、1分を超えるケースが多いのに従来はそれが十分に反映されていなかった、という趣旨の指摘をしています(FIFA公式サイト/2022年11月30日付/2026年9月2日確認)。
つまり、順序としてはこうです。
① 規則の文言は前から「失われた時間はすべて埋め合わせる」だった
② しかし実務では、けっこう甘めに計られていた
③ 2018年ロシア大会あたりから、より正確に計るよう審判に求めはじめた
④ 2022年カタール大会で、その徹底ぶりが目に見える形になった
コリーナ氏自身、ロシア大会でもすでに同じ方向で審判に求めていたと述べており、カタール大会が突然の方針転換だったわけではないことがうかがえます。数字の面でも、同氏はロシア大会の追加時間の平均が約6分30秒だったのに対し、カタール大会では約10分になったと説明しています。同時に、交代枠が6人から10人に増えたぶんを考慮すれば「劇的な変化ではない」とも述べています(FIFA公式サイト/2026年9月2日確認)。
そして狙いは達成されました。同記事によれば、カタール大会の実際のプレー時間は平均で1時間近く(59分前後)に伸びたとされています。追加時間を長くしたのは「試合を長くしたい」からではなく、「実際にボールが動いている時間を確保したい」からだったわけです。
ここは慎重に: 「2022年に競技規則が改定されて追加時間が長くなった」という説明を見かけることがありますが、本記事で確認できた範囲では、第7条の本文そのものが2022年に書き換えられたという事実は確認できませんでした。確認できたのは、FIFAが審判団に対して「より正確に計上するよう」求めたという運用面の指示です。規則本文の改定履歴の詳細は本記事では未確認とし、断定を避けています。
【編集部集計②】カタール大会の一戦を分解してみる
仕組みの話ばかりだとイメージしづらいので、実在する試合を1つだけ取り上げます。2022年FIFAワールドカップ カタール大会のグループB、イングランド対イラン(2022年11月21日)です。イングランドが6対2で勝った試合ですが、追加時間の長さで大きな話題になりました。
CNNは統計サイトOptaのデータとして、この試合が合計117分16秒に及び、前半終了時に14分08秒、後半終了時に13分08秒が追加された、と報じています(CNN/2022年11月23日付/2026年9月2日確認)。同じ数字は複数の媒体でも報じられています。
集計の方法(編集部集計)
対象: 2022年FIFAワールドカップ カタール大会 グループB イングランド対イラン(2022年11月21日)の1試合のみ。
計算元: FIFA公式サイト掲載のコリーナ氏の説明。同氏はこの試合について、両ハーフ合計で23分の追加時間が適用され、うちイランのゴールキーパーの手当てに約11分、イングランドの選手の負傷に3分、合わせて14分が2件の負傷に費やされたと述べている。
算出: 14分 ÷ 23分 = 約60.9%。小数第2位を四捨五入。
除外・注記: 秒単位の内訳は公式に示されていないため、分単位で計算。報道された実測値(14分08秒+13分08秒=27分16秒)とはそもそも別の数字であり、両者を足したり比べたりはしていません。
| 項目 | 値 | 出どころ |
|---|---|---|
| FIFA公式説明での追加時間(両ハーフ合計) | 23分 | FIFA公式サイト |
| うち2件の負傷対応 | 14分(約60.9%) | FIFA公式サイト+編集部集計 |
| 報道された実測の追加時間(前半) | 14分08秒 | CNN(Optaのデータとして)ほか |
| 報道された実測の追加時間(後半) | 13分08秒 | CNN(Optaのデータとして)ほか |
| 試合の総所要時間 | 117分16秒 | CNN(Optaのデータとして) |
この表から読み取れることは2つあります。
※この先のリンクには広告(PR)・アフィリエイトを含みます。購入・お申込によりSportsPulseが収益を得る場合があります(掲載順・評価は編集部の判断です)。
1つめ。追加時間の約6割が、2件の負傷対応でした。イランのゴールキーパーが味方と激しく接触して長い時間の検査を受け、後半にはイングランドの選手も頭部を痛めています。つまりこの試合の長い追加時間は、遅延行為への制裁ではなく、選手の安全を確保するために必要だった時間だったということです。
2つめ。FIFA公式の説明(23分)と、報道された実測(合計27分16秒)には差があります。この差がどこから来るのか、公式な内訳の説明は本記事では確認できませんでした。ただ、「掲示された最少限」と「実際にプレーされた時間」は別物だという、先ほどの話をそのまま裏づける材料ではあります。数字の食い違いをどちらかに寄せて書くことはせず、両方をそのまま並べておきます。
なお本記事では、この1試合以外の「+◯分」という数字は扱いません。印象に残る数字ほど出どころがあやふやなまま出回りやすいので、複数の情報源で確認できたものだけを載せています。2026年大会の見どころはFIFAワールドカップ2026 特集HUBにまとめています。
2026/27の競技規則は「そもそも空費させない」方向へ
失われた時間を後から足す、というのがこれまでのやり方でした。ところが最近のIFABは、もう一歩進んで「そもそも時間を失わせない」方向に舵を切っています。
IFABは2026年2月28日、ウェールズで開かれた第140回年次総会(AGM)で、試合のテンポを高め、時間の浪費を減らすための一連の措置を承認したと発表しました。IFAB公式サイトによれば、これらは2026年のFIFAワールドカップおよびその他の競技会で実施されるとされています(IFAB公式サイト/2026年2月28日付/2026年9月2日確認)。
初心者の方に関係が深そうなものを挙げると、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| スローイン・ゴールキックの5秒カウントダウン | 主審が「引き延ばしている」と判断したら、手を挙げて5秒を目に見える形で数える。5秒を過ぎてもボールがインプレーにならなければ、スローインは相手ボールに、ゴールキックは相手のコーナーキックになる |
| 交代選手の退出に10秒の制限 | 交代ボードが示されてから10秒以内にピッチを出る。間に合わないと、交代で入る選手はその後1分(時計は止めない)が経過した最初の停止まで入れない |
| 負傷の場外での処置 | ピッチ上で処置を受けた、あるいはその負傷でプレーが止まった選手は、再開後1分(時計は止めない)はピッチの外にいなければならない |
出典はいずれもIFAB公式サイト(第140回AGMの発表および「Throw-in and goal-kick countdown protocol」)です。あわせて、2026/27版の競技規則は2026年7月1日から発効し、それより前に始まる競技会は前倒しで導入できる、とされています。
この流れをひとことで言うと、「あとで足す」から「最初から使わせない」へです。引き延ばしを試みても得をしない仕組みにしておけば、そもそも追加時間が長くなる理由が減る。うまく機能すれば、10分超の追加時間を見る機会は少しずつ減っていくのかもしれません。
ストップクロック(時計を止める方式)はどうなっているのか
「いっそバスケットボールみたいに時計を止めればいいのに」と思った方もいるかもしれません。実際、そうした案が議論されていると報じられることもあります。
ただし、はっきりさせておきたいのは、2026年9月2日の時点で、サッカー全体にストップクロックが導入された事実はないということです。IFAB公式サイトが「TRIALS(試験)」として掲載しているのは、ゴールキーパーの負傷、VARに関する項目、クーリングオフ期間、意図的なヘディングの4件で、時計を止める方式はそこに含まれていません(2026年9月2日確認)。
なお、日本語版ウィキペディアは、アメリカのメジャーリーグサッカー(MLS)が創設時の一時期にプレーが止まるたびに時計を止める「カウントダウン方式」を採用したことがある、と記述しています(2026年9月2日確認)。ただしこれは過去の一例であり、現在の運用については本記事では未確認です。特定の大会やカテゴリーでの試験と、世界全体への導入は別物だと覚えておいてください。
他競技とくらべてみる──時計が止まる競技、止まらない競技
「サッカーだけなんで変なの?」と感じる方のために、時計の考え方をざっくり並べてみます。ただし競技が違えば設計思想も違いますので、優劣の話ではありません。
| 競技 | 時計の扱い | 失われた時間の埋め合わせ方 |
|---|---|---|
| サッカー | 止まらない | ハーフの最後にまとめて追加時間として足す |
| バスケットボール | 止まる | 止めているので、あとから足す必要がない |
| アメリカンフットボール | 止まる | 止めているので、あとから足す必要がない |
サッカーの時計が止まらないことはIFAB第7条およびJリーグ公式サイトで確認しました。バスケットボールとアメリカンフットボールが「規定の競技時間を正確に守るために時計を止める方式」であることは、日本語版ウィキペディアの記述にもとづいています(2026年9月2日確認)。各競技の細かな運用(どの場面で止まるか、リーグごとの違いなど)は本記事の裏取り対象外としており、大枠の比較にとどめています。
ちなみに、バスケットボールでよく聞く「24秒」は攻撃側に与えられた持ち時間であって、追加時間とはまったく別の仕組みです。競技をまたいで用語を持ち込むと混乱のもとなので、切り分けておきましょう。
観戦するときの5つのコツ
仕組みがわかったところで、実際の観戦にどう活かすか。5つだけ挙げておきます。
① ボードが出る前に、自分で予想してみる
交代が何回あったか、ゴールが何点入ったか、ドクターがピッチに入った回数は何回か。ざっくり数えておくと、ボードの数字がだいたい読めるようになります。お子さんと「何分だと思う?」とクイズにすると、45分がぐっと楽しくなります。
② 「表示=終わり」と思わない
何度も書きますが、あれは最少限です。表示された時間が過ぎてから決勝点が入ることは、珍しくありません。最後の最後まで、席を立たないでください。
③ 長い追加時間を「悪いこと」と決めつけない
追加時間が長い試合は、たいてい「何かがたくさん起きた試合」です。ゴールが多かったか、誰かがケガをしたか、VARが動いたか。イングランド対イランの例のように、長さの大半が選手の安全のための時間だったということもあります。
④ 交代・給水・ゴールに「時計」を重ねて見る
終盤にリードしているチームが交代枠を使いきる、キーパーがゆっくりボールをセットする。そうした動きは、そのまま追加時間に跳ね返ります。「時間を削りにいったな」と読めると、駆け引きが見えてきて面白くなります。
⑤ 帰りの時間は120分で見積もる
現地観戦の実務的な話です。Jリーグ公式サイトは、キックオフから試合終了の笛までを、90分+ハーフタイム15分+追加時間5分前後で、おおむね120分程度と説明しています(2026年9月2日確認)。お子さん連れでの帰りの電車を考えるときは、この目安が役に立ちます。観戦の準備はサッカー観戦ファンHUBもご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「+5分」と出たのに、6分たっても終わりません。審判のミスですか?
ミスではありません。第4審判が示すのは「最少限の追加時間」で、競技規則には追加時間は増やされることはあっても減らされることはない、と明記されています。表示された5分のあいだにゴールや交代、負傷があれば、そのぶんさらに延びます。
Q2. 「ロスタイム」と言ったら間違いですか?
日常会話では通じますし、間違いだと責める話ではありません。ただし競技規則に載っている用語は「additional time(アディショナルタイム)」です。「ロスタイム」については、Jリーグ公式サイトが和製英語だと説明しています。
Q3. スローインやフリーキックで止まっている時間も足されますか?
ふつうの速さで行われるものは足されない、とJリーグ公式サイトが説明しています。一方、明らかに引き延ばしていると主審が判断した場合は、競技規則が挙げる「時間の浪費」に当たり得ます。さらに2026/27の規則では、引き延ばされたスローインやゴールキックには5秒のカウントダウンが行われ、時間内に再開されなければ相手ボールになります。
Q4. 前半のアディショナルタイムが短すぎた気がします。後半で調整してもらえますか?
できません。競技規則の第7条7.3には、前半の計時のミスを後半の長さを変えることで埋め合わせてはならない、と明記されています。前半は前半、後半は後半で完結します。
Q5. 追加時間ぎりぎりでPKになったら、時間切れで蹴れずに終わりますか?
いいえ。競技規則の第7条7.4には、ペナルティーキックが行われる、あるいはやり直される場合、そのキックが完了するまでハーフは延長されると定められています。ですので、時計の上では時間が来ていても、キックは行われます。
Q6. 追加時間と「延長戦」は同じものですか?
別物です。追加時間は前半・後半それぞれの終わりに、失われた時間を埋め合わせるもの。延長戦は、トーナメントなどで90分を終えても勝敗が決まらないときに行うもので、Jリーグ公式サイトによればプロの場合は15分ハーフの計30分です。呼び方が似ているので混同しやすいところです。
まとめ
・サッカーの時計は止まらない。だから失われたプレー時間を、ハーフの終わりにまとめて返す。それがアディショナルタイム。
・数えられるのは、交代・負傷対応・時間の浪費・懲戒・医療上の停止・VAR・ゴール後の喜び・その他の遅延の8つ(IFAB第7条7.3)。
・決めるのは主審ひとり。第4審判が掲げるのは「最少限」で、そこからさらに延びることがある。
・2022年以降に長くなったのは、規則の原則が変わったからではなく、計り方をより正確にするようFIFAが審判に求めたため。
・2026/27の競技規則は、5秒カウントダウンなどで「そもそも時間を空費させない」方向に進んでいる。
「なんでまだ終わらないの?」と聞かれたら、こう答えてみてください。「時計が止まらないスポーツだから、止まっていたぶんを最後に返してるんだよ。しかもあの数字は、少なくともこれだけっていう約束なんだ」。それだけで、残り数分の見え方がずいぶん変わるはずです。
2026年のワールドカップでは、今回紹介した新しい5秒カウントダウンが実際に使われます。第4審判が手を挙げて数える場面を見かけたら、「あ、これか」と思い出してみてください。大会の基礎情報はFIFAワールドカップ2026 特集HUBに、観戦の入門記事はサッカー観戦ファンHUBにまとめています。
出典
いずれも2026年9月2日に確認しました。
1. IFAB(国際サッカー評議会)「Laws of the Game」第7条 The Duration of the Match(一次)
https://www.theifab.com/laws/latest/the-duration-of-the-match/
2. IFAB「Throw-in and goal-kick countdown protocol」(一次)
https://www.theifab.com/laws/latest/throw-in-and-goal-kick-countdown-protocol/
3. IFAB「The IFAB introduces further measures to improve match flow and player behaviour」2026年2月28日付(一次)
https://www.theifab.com/news/the-ifab-introduces-further-measures-to-improve-match-flow-and-player-behaviour/
4. FIFA「Collina: We’ve asked referees to calculate stoppage time more accurately」2022年11月30日付(一次)
https://inside.fifa.com/refereeing/news/collina-weve-asked-referees-to-calculate-stoppage-time-more-accurately
5. Jリーグ公式サイト「サッカーの試合時間・タイムルール」(公式・二次)
https://www.jleague.jp/a-to-z/game_time/
6. CNN「Why there is so much stoppage time at the 2022 World Cup」2022年11月23日付(二次・統計はOpta)
https://www.cnn.com/2022/11/23/football/extra-time-qatar-world-cup-explainer-spt-intl/index.html
7. ウィキペディア日本語版「アディショナルタイム」(二次)
https://ja.wikipedia.org/wiki/アディショナルタイム
本記事は、IFABが公開する競技規則の原文、FIFA公式サイト、Jリーグ公式サイトなどの公開情報にあたり、SportsPulse編集部で内容を相互に確認したうえで作成しています。取材や独自調査にもとづく記述は含みません。「編集部集計」と記載した箇所は、公開情報を編集部が数えなおし、計算したものです。競技規則は改定されることがあります。最新の内容は必ずIFAB公式サイトでご確認ください。
執筆: SportsPulse 編集部
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最終更新日: 2026年9月3日 | 編集方針
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📅 更新履歴
| 日付 | 変更内容 |
|---|---|
| 2026年9月3日 | 初回公開 |
✅ ファクト再検証
最終検証日:2026年9月3日
SportsPulse 編集部が公開情報をもとに内容を確認しています。情報は確認時点のものです。最新情報は各公式サイトをご確認ください。
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