オラクル・レッドブル・レーシングは2005年にエナジードリンク企業のレッドブルがジャガー・レーシングを買収して誕生したF1コンストラクター。ベッテルと組んだ2010〜2013年の4年連続ドライバーズ&コンストラクターズ二冠、フェルスタッペンと組んだ2021〜2023年の3年連続ドライバーズ王座(うち2022・2023年は二冠)、特に2023年RB19の22戦中21勝はF1史上最高勝率。通算コンスト6回・ドライバーズ8回(ベッテル4+フェルスタッペン4)。2024年はドライバーズ4連覇のみでコンストはマクラーレンに譲り、2025年も連覇途絶。ニューウェイ2024年5月離脱、2025年7月ホーナー代表解任、後任メキーズ就任、ホンダPU離脱と激動の2年間を経て、2026年からは Red Bull Ford Powertrains で初の自社製PU時代に突入。フェルスタッペンと イザック・アジャー(Isack Hadjar) の若手新コンビで、新規定下の戦闘力回復が問われる。[出典]
オラクル・レッドブル・レーシング(Oracle Red Bull Racing)は、英バッキンガムシャー州 ミルトン・キーンズ(Milton Keynes) に本拠を置くF1コンストラクター。シャシー名はRBシリーズ(直近はRB21・RB22)、チームカラーは伝統のネイビーブルーにレッド・ゴールド・ホワイトのアクセント、エンブレムは2頭の闘牛。F1で唯一エナジードリンク企業を母体とするチームでありながら、2010年代と2020年代前半に圧倒的な強さを発揮し、F1史上もっとも成功したコンストラクターのひとつとなっている。
起源 — Stewart Grand Prix → Jaguar Racing → Red Bull(1996〜2005年)
レッドブル・レーシングの組織的起源は 1997年に英国で創設されたStewart Grand Prix にある。創設者はF1元世界王者 ジャッキー・スチュワート(1969・1971・1973年王者)と息子ポール・スチュワート。フォードV10エンジンで参戦し、 1999年欧州GPでヨハニー・ハーバートが優勝(チーム史唯一の勝利)を達成した。
1999年シーズン終了後、フォードがStewart GPを買収して 「ジャガー・レーシング」 に改称(2000-2004年)。フォード傘下の高級車ブランド「ジャガー」をマシン全面でアピールしたが、5年間で1度も表彰台に立てない低迷期となった。
2004年11月、オーストリアのエナジードリンク企業 レッドブル(Red Bull GmbH)がジャガー・レーシングをわずか1ドルで買収(債務込みでは数千万ドル相当)。創業者の ディートリッヒ・マテシッツ はオーナーとして、F1を「世界一のスポーツマーケティング媒体」と位置付け、本気のチーム再建を開始した。
中堅期と2009年初優勝(2005〜2009年)
2005年から 「レッドブル・レーシング」 として参戦開始。デビューシーズンは中団成績で、当初は「お祭りチーム」と揶揄もされた。しかし2006年に クリスチャン・ホーナー(当時32歳)がチーム代表に就任、2006年7月に エイドリアン・ニューウェイ(マクラーレン離脱)を チーフテクニカルオフィサー として獲得した瞬間、すべてが変わり始めた。
ニューウェイ設計の RB5(2009年)はルノーV8エンジンを搭載、空力設計で他チームに数歩リードした傑作マシン。2009年中国GPでセバスチャン・ベッテルが優勝、これがレッドブル・レーシングの チーム初優勝 となった。同シーズンはマーク・ウェバーも独GPで優勝、コンストラクターズ2位の好成績で締めた。
2010〜2013年 — ベッテルと共に4年連続二冠
| 年 | コンスト | ドライバー王者 | 主要マシン | チーム勝利数 |
|---|---|---|---|---|
| 2010 | 1位 | ベッテル | RB6 | 9 |
| 2011 | 1位 | ベッテル | RB7 | 12 |
| 2012 | 1位 | ベッテル | RB8 | 7 |
| 2013 | 1位 | ベッテル | RB9 | 13 |
4年連続ドライバーズ&コンストラクターズ二冠 ── 当時F1史上最年長の連覇ペース(ベッテルは初優勝時23歳、4連覇終了時26歳)。シューマッハ=フェラーリ時代以来の支配的時代を、新興の「エナジードリンク・チーム」が築いた。
特に 2013年は終盤9連勝(ベルギー、イタリア、シンガポール、韓国、日本、印度、UAE、米、ブラジル)で締めくくった伝説的シーズン。「ベッテル+RB9+ニューウェイ+ホーナー」の組み合わせは、当時のF1で最強無敵だった。
V6ハイブリッド暗黒期(2014〜2020年)
2014年からF1は V6ターボハイブリッドPU規定へ移行。レッドブルが頼っていたルノーPUは、メルセデス・フェラーリに大きく出力で劣り、ニューウェイ設計の優れたシャシーを生かしきれない時期が続いた。
- 2014: コンスト2位だが、ベッテルは未勝利でフェラーリ移籍
- 2015: コンスト4位、ルノーPUへの公然たる批判
- 2016: マックス・フェルスタッペン(17歳)がトロロッソからレッドブルへシーズン途中昇格、開幕戦スペインGPで初優勝(F1史上最年少優勝記録)
- 2017〜2018: フェルスタッペン×リカルドの体制で複数勝利
- 2019: ホンダPUへスイッチ、フェルスタッペンが3勝
- 2020: フェルスタッペン2勝でコンスト2位
ルノーPU時代の不満を解消するため、2019年に ホンダとパートナーシップ 締結。これが2021年以降の絶対王朝につながる戦略的判断となった。
2021年 — フェルスタッペン初タイトルと「アブダビ事件」
2021年シーズン、フェルスタッペン vs ハミルトン がF1史に残るタイトル争いを展開。両者が同点で迎えた 最終戦アブダビGP で、レッドブルはピット戦略の妙とセーフティカー導入後の混乱を活かし、最終ラップでハミルトンを抜いてフェルスタッペンが キャリア初のドライバーズタイトル を獲得した。
この瞬間は 「マシ事件(Masi-gate)」 としてメルセデス側から正式抗議を受けたが、判定は覆らずフェルスタッペンが王者となった(メルセデス記事参照)。レッドブルにとっては 8年ぶりのドライバーズタイトル であり、フェルスタッペン時代の幕開けとなった。
2022〜2023年 — 絶対王朝の復活とRB19の22戦21勝
| 年 | コンスト | ドライバーズ王者 | 主要マシン | チーム勝利数 |
|---|---|---|---|---|
| 2022 | 1位 | フェルスタッペン | RB18 | 17 |
| 2023 | 1位 | フェルスタッペン | RB19 | 21(全22戦中) |
| 2024 | 3位 | フェルスタッペン | RB20 | 9 |
2022年RB18 はグラウンドエフェクト復活初年で、開幕5戦のうち3勝、シーズン17勝でコンスト圧勝。
そして 2023年RB19 は F1史上最高の支配力 を発揮。全22戦中21勝(93.6%)、唯一勝利を逃したのは第13戦シンガポールGPでサインツ(フェラーリ)が勝利したのみ。フェルスタッペン1人で シーズン19勝、F1史上最多単独勝利数を更新した。コンストラクターズも860pt獲得(2位メルセデスの倍以上)の圧勝。
2024年 — マクラーレンへの王座明け渡し
2024年RB20 はシーズン序盤こそ強かったが、シーズン中盤からマクラーレンとフェラーリにマシン性能で逆転され、 コンストラクターズはマクラーレンが奪取(フェラーリに14pt差)。レッドブルはコンスト3位(589pt)に後退した。フェルスタッペン個人は強さを維持し、9勝+安定性で 4年連続ドライバーズタイトル を守ったが、2010-13ベッテル4連覇以来となる成果に祝勝の空気は薄かった。
ニューウェイ離脱とホーナー解任(2024〜2025年)
2024年5月1日、F1史上最強の空力デザイナー エイドリアン・ニューウェイ がレッドブル離脱を発表(後にアストンマーティンへ移籍)。組織にとって 「最大の頭脳の流出」 であり、シャシー設計の質的低下が懸念された。
並行してチーム内紛が表面化。2024年初頭にホーナー代表に対する女性スタッフからの不適切行為告発 が発生(後に独立調査で却下)。ニューウェイ離脱、新人事のごたごた、フェルスタッペンの父ヨスとホーナーの対立など、組織の亀裂が深まった。
2025年7月9日、20年間チームを率いたクリスチャン・ホーナー代表が解任。後任にはレーシング・ブルズ(旧アルファタウリ)でチーム代表を務めていた ローラン・メキーズ がCEO兼チーム代表として就任。「ホーナー時代」が終わり、フェラーリ系のメキーズが新時代を切り開く体制となった。
2025年動乱 — ローソン降格と角田起用
2025年シーズン開幕、フェルスタッペン+リアム・ローソン体制 で挑むも、ローソンは開幕戦オーストラリアGPで予選18位、続く中国GPで予選20位(レッドブル20年史で初めてドライバーが最下位グリッドを記録)と深刻な不振に陥り、わずか2戦で レーシング・ブルズへ降格。
代わって 日本GP(鈴鹿)から角田裕毅がレーシング・ブルズから昇格、フェルスタッペンのチームメイトを務めた。日本人ドライバーがレッドブル本体で走るのは初めてのケースで、地元・鈴鹿でのデビューとなった。
戦績面では、マクラーレンが2024年に続き 2025年もコンストラクターズタイトルを獲得(シンガポールGPで650pt確定、2位メルセデスの2倍)。レッドブルの連覇は2023年を最後に途絶えた。
2026年 — Red Bull Ford Powertrains始動
2026年シーズンは新時代の幕開け。長年のパートナーだったホンダは2025年限りでレッドブル陣営を離れ(2026年からアストンマーティンへワークス供給)、レッドブルはF1参戦以来 初の自社製パワーユニット を投入する年となった。
PUは英ミルトン・キーンズに新設された Red Bull Powertrains(RBPT) が開発、米フォードが技術&ブランドパートナーとして参加する 「Red Bull Ford Powertrains」 名義での供給。新規定(50%電動化、e-fuel義務化)下での自社PUは大きな挑戦となる。
ドライバーラインナップは フェルスタッペン(4度王者、契約2028年まで)と、 イザック・アジャー(Isack Hadjar)(21歳、フランス、2025年RBデビュー時に蘭GPで表彰台獲得して昇格を勝ち取った若手)の組み合わせ。角田裕毅はテスト&リザーブドライバーに転じている。
開幕3戦を終えた時点で、レッドブルは コンストラクターズ選手権6位。メルセデスから119pt差をつけられ、チーム自身が「RB22には重大な欠点がある」と認めるなど、かつてのグリッド先頭を走り続けた時代とは様変わりした状況だ。フェルスタッペンもオーストラリアGPでは予選クラッシュで20番グリッドからスタート、6位フィニッシュ。マイアミGPに向けた大型アップグレード が、シーズン挽回の分水嶺となる見通し。
ミルトン・キーンズ本拠地 — F1独立系最大級の開発拠点
ミルトン・キーンズ・キャンパス は英ロンドン北約80kmの新興都市にある。元はジャガー・レーシング時代からの本拠地で、レッドブル買収後に大規模拡張が進められた。60%スケール風洞、ドライバー・イン・ザ・ループ型シミュレーター、CFD解析クラスタ、組立ライン、Red Bull Powertrains(RBPT)の新PU工場 が一体運営される。
2026年からのRBPT本格稼働に向けて2024〜2025年に大規模投資が続き、F1メーカー系チームと並ぶ規模の独立系開発拠点として機能している。
ドライバー布陣(2026年)
2026年シーズンは マックス・フェルスタッペン(28歳・蘭国籍・2016年加入、4度の世界王者)と イザック・アジャー(21歳・仏国籍・2026年昇格)の体制で挑む。リザーブには 角田裕毅(25歳・日本国籍)が控え、有事の際に即時昇格できる体制となっている。
日本からF1観戦
2026年シーズンの日本でのF1中継は3チャネル体制:① フジテレビNEXT が全戦の予選・決勝・FP1〜FP3を専門チャンネル+オンデマンド(FOD)で完全配信。② FOD F1プラン(チャンピオンコース)は2026年から国内正式配信、月額¥5,900で全24戦ライブ+4K HDR・マルチビュー・オンボードカメラ・チームラジオなど F1 TV Premium 同等のフルデータ視点でレースを楽しめる。③ Amazon Prime Video では Netflix シリーズ「Drive to Survive」最新シーズンが配信され、レッドブル(ホーナー解任・ニューウェイ離脱・メキーズ就任の動乱期)の舞台裏ドキュメンタリーが視聴できる。
📚 レッドブル黄金期を作ったニューウェイの自伝:『HOW TO BUILD A CAR』エイドリアン・ニューウェイ自伝(KADOKAWA) / Yahoo! はRB6〜RB19までの設計思想を本人が語る一次資料。離脱までの経緯を理解する上で必読。
📖 ホーナー解任以降の動乱整理:『F速 2025 総集編』(三栄/Kindle) / Yahoo!。
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まとめ — 「2回目の黄金期」の終わりと再起動
レッドブルの21年は、2回の黄金期と2回の低迷期を交互に経験した稀有な歴史を持つ。Stewart→Jaguar→Red Bullの系譜、2010-2013ベッテル4連覇、ハイブリッド時代の苦闘、2021アブダビでのフェルスタッペン初タイトル、2023年RB19の22戦21勝という伝説、そして2024年からの王朝終焉。
ニューウェイ・ホーナー・ホンダという「3本柱」を相次いで失った2025-2026年は、間違いなくチーム史上最大の転換点。新CEOメキーズの下、自社PU・若手アジャー・新規定対応という複数の課題を同時並行で乗り越えられるかが、次の数年で問われる。3度目の黄金期に向けた長い再建が始まっている。
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